第15話 不満

 三本線が唸りをあげるようなゲジゲジした音が喫茶店内に響く。棚のカップは沈黙を守っている。


「僕と兄さんがどうして指定されたのか、兄さんは考えたほうがいいと思う」

「考えてるさ」

「僕との話が早く終わってほしいとしか考えてないように見える」

「それは心外だな」

「否定はしないんだね」


 ハイシアは、何も答えなかった。ただ自転車をこぐ。電動コーヒーミルのボタンがほの赤く点灯する。


「兄さん、変わったね」

「何億年経ったと思ってるんだよ、精霊種でも変わりはするさ」


 ハイシアは、過日の授業範囲を思い出して、踏むペダルに力を入れた。

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