第16話 過日の授業風景1

「精霊種は体を失ったとき5つに分かれます。これは七女神の御代から変わっていません。感情、性質、精神、心、体の五つですね」


 春の冷たい雨が生成りのテントに弾かれる音がする。

 室内の丸いランプが、目に優しい明度で黒板を照らす。黒板の前では生成りの貫頭衣を着た男性教師が授業をしている。

 彼の前に二人座った生徒は、よく似た容姿をしていた。


 兄は腰まで届くさざなみ色の髪を外からの風になびかせ、瞳を好奇心に輝かせている。腰と太ももに黒い帯を結んで留めただけの貫頭衣からは、細いが程よく筋肉のついた脇腹と太腿が覗いている。

 弟は大きな瞳を勝気に輝かせている。服は兄よりも大人しい。首元では飾り刺繍のついた黒い襟が斜めに交差し、裾は脛を隠して余りある。袖の膨らまない浴衣のような、草色の衣に細い体を包んでいる。

 黒板の前に立つ教師は兄弟の顔を見比べてから「ハイシア」と名前を呼ぶ。


「はい。なぁに、クラッカ先生」

「足が遊んでいますよ。セルーナの邪魔になります」

「それは失礼」


 ブランコのように揺らしていた足を止めて、ハイシアは「不思議だよね」と頬杖をつく。さざなみ色の髪がさらさらと揺れる。

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