第14話 衝突

 後悔が映像を伴ってハイシアの思考を揺さぶる。

 ハイシアは朗らかな雰囲気を一瞬だけ消した。そこじゃないだろうと叫びだしたい気持ちを押えて、表情を整える。


「そうか?」


 自転車のハンドルに両肘をついて、ハイシアは首を傾げる。


「一度死んだときのことは覚えているけれど、そこまでハッキリとじゃない」

「うそだ」

「セルーナ」

「忘れたの? 僕らは2つで1つだったんだ。……2つで1つだったんだよ」

「ならなおさらだ。俺が謝ってほしいのはそこじゃないし、俺が話し合いたいのもそこじゃない。俺が一回死んだことは、どうでもいいことだ」

「どうでもよくないだろう!?」

「俺にとってはどうでもいいんだよ。俺はあれで満足なんだから」


 まだ何か言いたげなセルーナに背を向けて、ハイシアは自転車をこぎはじめる。

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