第7話 忘れていること

「……シェルのこと。忘れたの? イヌダシオンに来る前の名前だ」


「ああ……そうだった。そうだ、シェルはキャメルって名前だった……」


 セルーナは目を見開いてから、とても痛ましいものを見る目でハイシアを見た。

 俺も思わず、膝を丸める。だって、あんまりじゃないか。


「兄さんは、世界を守ったもんね。そっか、忘れちゃうくらい、か」


「いっそ責めてくれたほうがありがたいんだけれども」


「責められないよ。それだけ独りぼっちだったってことだから」


 セル―ナはボタンを押して、動かないことに首を傾げてからもう一度ボタンを押した。


「それはそれとして、さっきの言葉は撤回して。イヌダシオンの意思は受け継がれたんだから」


「セルーナ、電源入ってないよ」


「うわ」


 ハイシアは微笑ましそうに笑った。

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