第6話 忘れたこと

「あんなに反対していたのに?」


 今度はセルーナの声が震えていた。手だけは、よどみなく動いてコーヒーミルに豆を入れる。


「眩しかったさ。

『死別の苦しみを生物から取り払いたい』……俺は生物にそこまで肩入れできない」


 ハイシアは豆を見つめて吐き捨てる。

 まるで、誰かと豆を重ねて見ているみたいだ。俯いて拳を震わせている。


「世界を救ったくせに」


 対するセルーナの声は固く、感情を削ぎ落したようだった。

 コーヒーミルのボタンに手を添えたまま、セルーナはハイシアを見つめている。

 ハイシアは俯いたままでもう一度言葉を落とした。


「世界は救えても、生き物たちは救えなかった」


「それはキャメルたちに失礼だよ」


「キャメル?」

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