第3話 弟の確信

 セルーナは涙を拭って、ハイシアをまっすぐ見つめた。


「ここは多分だけど、精霊に連なる者が終わらせる世界だよね」

「そりゃあね。外の砂塵を見て見なよ。まるで黄土色の壁だ」

「そこに【流転】と、暫定【固定】を集めた」

「なぁ、セルーナ。コーヒー淹れよう」


 ハイシアは話を遮って、カウンターをのぞく。

 コーヒー豆をたっぷり入れた、英字ロゴの入ったキャニスターがカウンター裏に。サイフォンと電動のコーヒーミルは観賞用も兼ねてなのかカウンターに並ぶ。

 その後ろ、客から一番見えやすい背面にはブランドもので揃えられたカップとソーサーが礼儀正しくそろっている。

 手打ちのレジのすぐ隣にはレコード盤を保存する棚とラッパ型蓄音機があり、今はラヴェルの『水の戯れ』が流されていた。


「話がしたいんだ」

「話をしている時間がもったいないだろう。それとも、また役割を放棄するのか?」

「違う。役割を果たすために話をしないといけないんだ」


 セルーナは、涙を拭わずにハイシアを見る。

 ハイシアは観念したのだろう。「コーヒー3杯分までだ」と息を吐く。

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