第2話 再会

 歪んで用を為さなくなった扉をゆっくり押し開けて、ハイシアによく似た容姿のやつが入ってきた。


 途端、店内に入り込んでいた砂塵が止み、ゴウゴウとした音だけが外から響くようになる。


 こちらは青年だろうと判断できる。

 肩に届かないくらいの、晴れた日の空と同じ色の髪。天で輝くお日様をはめこんだような目。――セルーナだ。


 ハイシアが弾かれたように顔を上げる。


「精霊種への復帰、おめでとう。セルーナ」


 声変わり前の少年にも似た声は、分かる奴が聞けば弾んでいると知れる。


 遅れてきたセルーナの目に、泥のような後悔がにじんだ。


「今日は、貴重な時間を取っていただきありがとうございます」


「そんな他人行儀なのはいいからさ、コーヒー淹れよう。店長と交渉して器具は残してもらってあるんだ」


 言いながらハイシアはセルーナの手を取る。

 桜色の爪は一枚もかけていないし、喉から出る声もしゃがれてなんかいない。

 そのことに安心したのだろう。

 セルーナの目から涙がこぼれた。


「兄さん……兄さんごめん」


「今謝るのはなしだ。とりあえずの方策を考えよう。この世界も、すぐ旅立つことになるだろうから」


「そのこと、だけどさ。僕は、僕と兄さんがここに呼ばれたことに意味があると思ってる」


 ハイシアは無言で先を促す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る