第10話 役者がそろった日

 ハイシアと同じさざなみ色が、かすかな木漏れ日を反射して鈍く輝く。


 夏の陽光に深くよどむ低木の影には、たしかに、うすい水色の弱った命があった。期待に輝く目に、ハイシアは喉をつまらせる。


「親を探そう。集落に入れるにも、みんなの意見を聞かなくちゃならないし――」


「ケガしてるんだから今助けないと死んじゃうよ」


 弟が低木に走る。


 暗緑色の衣装が小枝でほつれる。


 セルーナの意識から弾かれた籠が重力に従う。素早く伸ばしたハイシアの腕が、無理な姿勢と重量に鋭く痺れた。


「よしよし、こわーい奴らからは僕が守ってあげるからね」


「……精霊たるもの。手を差し伸べたなら責任を果たさなきゃいけない。クラッカと母さんにはセルーナが説明するんだぞ」


「分かってるよ。『命を慈しみ、守り抜いてこそわれらが天青イヌダシオンの本懐なり』ってね」


「導かなくても……俺たちの役目は浄化と隔離だけのはずだ」


 ハイシアが頭上を覆う枝葉へと、素早く視線を巡らせる。そうこうしているうちに、セルーナはネズミの子を椀の形にした手へと乗せた。


「仕方ないよ。ほかのところは滅んじゃったんだしさ」

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