第9話 天青

 七つ丘を越えて東に半年。


 道なき森を抜けた先にある天青イヌダシオンは生物種や物種の浄化・隔離を行う施設である。



 集落は森の途切れる坂にあり、坂を下りきった場所には崖と、崖を降りる一本道が ある。畑は2つ。季節の野菜を育てる畑を衣服の材料になる綿を育てる畑がある。


 森は恵み豊かで、春には野イチゴやビワ。夏にはマンゴーや桃。秋には林檎や栗。冬にはミカンや柿やゆずがる。



 海ではきれいな砂に住む貝たちや小魚を採ることができた。


 四季の恵みに頼れば、集落の全員が食べていく分には困らなかった。


 けれど食料事情はいつもカツカツだった。


 食べなくても死なない精霊種や人形族を含む物種の食事が用意できないこともあった。


「見て、ヒメコマネズミの赤ちゃんだ。ケガしてる!」

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