第47話 戦の後、動き出す世界
僕が意識を失っている間に、カルミネ率いる帝国軍は、指揮官であるカルミネ自身の負傷により、《
それを確認した後、アルバートとツァーシュは、それぞれの《
「完全──とは言わないが、長期間にわたって敵の侵攻を阻止することはできるだろう」
「それに、今回はしてやられたけど、同じミスを繰り返すのは
ツァーシュとピーノが大テーブルに紙を広げ、いろいろと書き込みながら、ああでもないこうでもないと言葉を交わしていた。
そんな中、ツァーシュは度々席を離れて、僕の傷を
「《星の
《むこうの世界》の彼奴、というところに引っかかったが、今は、それを聞き出す雰囲気ではない。
それはともかく、
「
そう珍しく頭を下げたのはシリルだった。
それは、僕を刺した子供──フルヴィオことだ。
《隠れ村》から
アルバートが切なげな表情を浮かべる。
「たぶん、あの小鳥を連絡役として使っていたのかもしれないな。
僕は自分の世話を手伝ってくれているトビアとビアンカが身体を強ばらせたのに気づいて、そっとふたりを抱き寄せた。
「その話はもういいよ。たぶん、フルヴィオにも何か事情があるんだと思う。《隠れ村》から逃げ続けている間、一緒に行動していたからわかる気がする」
フルヴィオは悪い子じゃない。
そう言い切る僕に、トビアとビアンカが抱きついてくる。
その二人の頭を撫でながら、僕はシリルやアルバートに笑ってみせた。
「……底知れないお人好しだな」
シリルがやれやれといった風に肩をすくめ、アルバートは明るい笑顔を浮かべる。
僕は言葉には出さなかったが、シリルたちは僕が言わんとすることを理解してくれた。
仲間同士で
○
──《
ちなみに《こちらの世界》の二つの月も、《むこうの世界》と同じように三十日単位で満ち欠けを繰り返しているようだ、とは、夜な夜な観測していたツァーシュの言である。
「キョウヤ兄ちゃん、早く行こう!」
湯の泉で
今日の昼は珍しく蒸し暑い一日だった。
外で作業をして汗だくになった僕にとって、《
「んっ、気持ちいい!」
両手を思いっきり伸ばして、ひんやりとした夜の空気を肺いっぱいに吸い込む。
──その後、《
帝国やテアネブリス
もちろん、帝国も、それに対応するために兵力を東西の前線に動員しようとしているとのことだった。
「
それは、僕が乱戦の中で片手を斬り落とした相手の名前。
とりあえず、命を落とすことなく、帝都まで帰還したという情報をシリルが持ち帰ってくれた。
「よかった……」
その
自らの手で他人を殺す、という行為に対して、まだ、僕は正面から受け止めることはできそうになかった。
もちろん、これからも戦は続く。戦場に出る以上、いずれは僕もその手で──《
──そんな思考に
「キョウヤ兄ちゃん、なんかヘンな音がする」
「音……?」
みんなと一緒に耳を澄ますと、上方から風に乗って、聞き慣れない音が響いてくるのに気がついた。
キーンという高い音に、ゴゴゴーッという低音が重なるこの音──聞き慣れない……いや、僕には聞き覚えがあった。《むこうの世界》で聞いたことのある音。
「あれ、あそこになにかとんでる」
ビアンカが空を指さした。
頭上に広がる
「飛行機……?」
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