第33話 弱り目に祟り目
だが、心身両面から追い詰められていく中、
そして、そんな子供たちの中にビアンカもいた。
「ビアンカ……しっかり……」
僕はその隣に膝をつくと、そっとビアンカの前髪を払って額に触れる。
「……熱い」
それは想像以上の高熱だった。
僕は後ろにいるアルバートとピーノへと振り返る。
アルバートは赤毛をグシャグシャと搔き回しながら考え込んだ。
「しかたない、医者を連れてこよう。食糧はともかく薬がない」
「それに、やっぱり《こちらの世界》の病気はボクたちの知識では判断できない。危険はあるけど、専門家に助けてもらう方が確実だと思う」
ピーノも
アルバートが立ち上がり、声を上げる。
「ベルトルド、悪いけど近くの村から医者を連れてきてもらいたいんだ」
ベルトルドは、隠れ村から逃げ出した二台の馬車のうちの一台の
しかし、アルバートの声に応じて姿を見せたのはキアーラだった。
「その……ベルトルドの姿が見えなくて、それで、荷物の中からお金もなくなってて……」
その返事に、アルバートは慌てて建物を飛び出した。
少し遅れて僕たちも続く。
「……ふぅ、馬は残ってたか。ベルトルドも多少は気を
アルバートは僕たちへ振り返って笑ってみせた。
「どうやら、ベルトルドには逃げられたみたいだな。お金は
「でも、危険になったことは変わりない」
そうピーノが指摘した。
ベルトルドがここから逃げた以上、敵に居場所が漏れる危険性が高くなった。彼の良心を信じたいところだったが、《
アルバートが馬を一頭引き出して身軽に跨がった。
「医者はおれが連れてくる。ビアンカを医者に
○
アルバートが近くの街から半ば
いつでも出発できるよう、ビアンカ以外の子供たちは外の
今、建物の中にいるのは僕とアルバート、ピーノの三人とキアーラ、苦しそうに
「……どうだ? 治療できそうか?」
アルバートが医者の隣にしゃがみ込んで問いかけるが、彼は小さい眼鏡を押し上げながら頭を横に振る。
「これは《
その言葉に周りにいた僕たちは息を呑んでしまう。
アルバートが医者の肩を掴む。
「なんとかならないのか! あんた医者だろ!? 薬とか何かで助けられないのかよ!」
「無理です」
医者は無慈悲に吐き捨てるとアルバートの手を強く払った。
僕は真剣な面持ちで医者に頭を下げた。
「頼みます、あなたしか頼れる人はいないんです。僕はこの子の父親と約束したんです、無事に家に送り届けると……」
その言葉と態度に、医者は何かを感じたようだったが、それでも答えは変わらなかった。
「無理です、熱冷ましの薬草を使えば多少は苦しみを和らげることができるでしょうが、最悪の結末は変えられません。例え、今、あなたたちにこの場で殺すと脅されたとしても、この子を救うことは不可能です」
「そんな……」
僕は
トビアが必死に訴えるような視線を向けてくるが、
「ビアンカ……ごめん、僕がふがいないせいで……」
そう呟きながら、僕は再びビアンカの額に触れる──
その時だった。
急にビアンカの全身が
「なんだよ、これ!?」
「知りません、わかりません!」
アルバートが医者の
僕が慌てて手を握ろうとした瞬間、ふわりとビアンカの身体が宙に浮き上がった。
「──《星の聖戦士》たちよ、《
その言葉がビアンカの口から放たれたのと同時に、頭の中に青銀色の光を放つ大樹のイメージが映し出された──
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