第31話 立ちはだかる少年将軍カルミネ
「んじゃ、サッサとやっちゃうね。抵抗してもイイよ、ムダなあがきってヤツ、僕の好物だから!」
その言葉と同時に、カルミネは
間合いの外だったけど、僕は《
絶対に衝撃波か何か、魔法的な攻撃が来る!
「うああああっっ!」
今まで出したことのない大声を張り上げ、剣の
瞬間、
──シャギシャギシャギッ!!
細かい光の
カルミネが嬉しそうな声を上げる。
「やっぱり、そうこなくっちゃ! どこまで耐えられるか試してみなよっ!」
そう言い放つと、僕が張った障壁に向かって、連続攻撃を繰り出すカルミネ。
素早く激しい動きに圧倒される一方で、華麗な舞いのようにも見える少年将軍の攻撃。
だが、僕はその動きを
「なかなかやるね──でも、いつまで
最初は余裕の表情だったカルミネも、無限に続くかと思われる僕の
僕は腹をくくった。
カルミネが攻撃をいったん中断して距離を取ったタイミングで、《
「思い出せ……
《むこうの世界》で何回も見てきた、
「あはっ、守ってるだけじゃ意味がないってこと、ようやくわかったんだ」
カルミネは剣を持つ手を後ろに下げると、反対の腕を前に突き出してきた。
「いいよ、その力みせてみなよ。僕の盾を破れるものならやってみろ!」
その声とともに、光り輝く障壁がカルミネの前面に展開する。
僕は静かに息を吸い込みつつ剣を振り上げ、
「はぁっ!!」
瞬間、僕は自分の目を疑った。
振り下ろされた《
──シャギイィィンン!!
金属同士がぶつかり合うような甲高い音が響く。
光の盾と
「なんだ、このちから……うぎゃぁっ!?」
カルミネの叫び声が悲鳴に変わる。
砕け散る光の盾。
身を
間に合わず、右眼のあたりから吹き出る真っ赤な血。
「うぐあぁぁぁ……」
カルミネは顔を押さえてうずくまる。
「──カルミネ様っ!!」
何人かの兵士が異変を察して、カルミネを守ろうと突入してくる。
だが、少年はそんな兵士たちへ怒声を放つ。
「よけいなことをするなぁぁぁぁっ!!」
カルミネはふらつきながらも立ち上がり、ゆっくりと僕へと向かって歩いてくる。
一方、僕は完全に気を呑まれたのか動くことができずにいた。
自分の放った攻撃が、相手の、しかも敵とはいえ幼い少年を傷つけてしまった。
相手の傷からは、まだ鮮やかな赤い血が流れ出し続けている。
「あ、あ……」
早く治療しないと大変なことになる、と、僕の頭の中で警告が響く。
敵の少年の足取りはおぼつかなく、いつ倒れてもおかしくない。でも、相手は敵だ。僕や子供たちの命をなんとも思ってないヤツなんだ──そんな思いが
完全にフリーズしてしまった僕に向かって、カルミネは何度か体制を崩しながらも、ついには剣を振り上げる。
「死ねぇぇぇっ!」
僕は反射的に目を閉じる。
だが、剣は振り下ろされてこなかった。
恐る恐る目を開けると、僕の前に小さい影が立ちはだかっていた。
肩に小鳥を乗せた子供──
「フルヴィオ!?」
「オマエェ、なんのつもりだ!?」
衝撃で吹き飛ばされるフルヴィオ。だが、口元から血を流しつつも、再びカルミネの前に立ちはだかる。
「──!?」
ここでようやく我に返った僕が、後ろからフルヴィオを抱きかかえる。
「キョウヤっ!!」
後ろからアルバートの叫び声が聞こえた。
だが、間に合わない。
カルミネの剣が振り下ろされる──と覚悟した瞬間。
「……オマエ、イイ度胸してるね」
怒りを
「イイよ、行きなよ。今は見逃してあげる」
その声に僕が顔を上げると、血に濡れた右眼のあたりを押さえ、怒りに歪んだ表情を浮かべた少年の姿があった。
「オマエらは絶対に許さない。今、オマエたちを逃がすのは、これからもっと大きな苦痛を与えてやるためだ。ジワジワといたぶってやる、アンタらを絶望のどん底へ叩き落としてやる……もちろん、わかってるよね……」
「──キョウヤ、ボーッとしてるんじゃねぇ!」
アルバートがその場に駆け込んできて、地面に手を当てる。
すると土砂が波打つようにして、カルミネたちの
「カルミネ様っ!」
兵士たちは馬車や僕たちを放置してカルミネを追う。
「いくぞっ!」
そのアルバートの声に押されて、僕はフルヴィオを抱えて馬車へと飛び乗る。
「やってくれ!」
アルバートの指示でキアーラとベルトルドが馬車を走らせた。
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