第62話小江戸堀

許嫁の旦那様と楽しくお話をしていたのだが、一枚の画像が気になった。

そうこれはどう見てもお好み焼きなのだ。

ちょうどお好み焼き屋をオープンさせるつもりでいたがタイミングよく

真新しいお好み焼きをそれも太郎大好き旦那様からそんな画像が送られてくるなんてと思ってみればなんて言うこともない。

これはお好み焼きではなく広島風太郎焼という新ジャンルだと熱く語るほど旦那様と大量にメッセージを交わした。


旦那様曰く、この太郎麺が本体だそうだ。

確かに普通の広島風なら薄切りの豚肉が上部に乗っているだろう。

だが、広島風太郎焼にはそれがなく代わりに角切りチャーシューがコロコロと乗っかっている。

細かく切ったチャーシューとアブラが野菜の方にも混ざっているので、野菜の甘味、油の甘味と肉やイカのうま味がそれぞれ複雑に絡み合い素晴らしい味のハーモニーを奏でていると語っていた。

これは使えそうね。

私は旦那様の話を聞きながらこれは新しい店に利用できそうだと考えたのだった。


即あの男を捕らえるべく校門で張っていれば簡単に捕獲できた。

私にしては多少斬新なアイディアの店を作ったのは、太郎に刺激を受けたからであろう。

入り口で固まるあの男をみてこれはちょっと斬新にし過ぎたかとおもった。

はやく例のお好み焼きを作れと催促しているのにいつまでもモタモタするドンくさい男にイライラしつつなんとか旦那様絶賛のお好み焼きを口にすることができたが相変わらず油っぽすぎて口に合わなかった。

私が一生懸命一片を食べているというのに、切り分けられた一片にチーズをドバドバ載せているのだから呆れるばかりである。

素で重いのにチーズなんて載せたら重量オーバーにもほどがある。

一口食べたがさらに口当たりが重くなっていて、こんなのが本当に売れるのか?と思ってしまうが、悲しいことにこんな男にも実績があるのだ。

そう邪険にできないだろう。


まあこの男のアイディアは使えるので、参考程度に私の店について聞いてみたのだが

調子にのったのか妙な言葉を口走っていた。

私は呆れながらも従業員を一人呼び出すと、あの男が言っていた通りのことを一通り説明して軽く練習したあとデモすることになった。


実際の行動をみてみないとわからないというものだが、旦那様以外の男にラブなんていわれても嬉しくないんだからね!と若干迂闊にもときめいてしまったものの、狐面の異様な格好なので語尾にこんが付こうがまあ違和感がなかった。

ドリンクオーダーゲームは面白い、ドリンクがサイズアップしようがそんな損失にならないが、ワンドリンク注文を獲得できるのは大きい。

しかもアルコールということは、それだけ財布のひもが緩くなる可能性もあがるというものだ。

それにしてもあの男がやたらと興奮している。

男というものはああいう格好にもしかして弱いのだろうか?

ツーショット撮影をサービスにとか何を考えているのかと思ったが、SNSで店内の画像や動画が出回れば新鮮さが薄くなる。

ということで店内撮影禁止にしたほうがいい等あの男のアイディアを取り入れたら余計へんてこな店になった感がいなめない。

不慮な問題が発生する責任をとらせるためにあの男にもプレオープンに居てもらおうと強制的に参加させた。


プレオープンでやはり入口の挨拶で招待客の度肝を抜くことに成功した。

更にお御籤だが招待客の中には凶を引く方もおりちょっと興奮しているなどお御籤も成功している

あの男のアイディアがこうもうまくいくなんてとおもいつつ、私は食事テーブルに挨拶周りをした。

するとメニューが平凡だとか、あの斬新奇抜なラーメンを販売した手腕とは思えないという声が聞こえるくらい不評だった。

そう、あの男の頭おかしいお好み焼きを除いて・・・。

平凡なメニューだと思っていれば最後のページにいきなりコラボ商品をぶっこんできているのだ。

コラボというのは通常勢いが落ちた時に相乗効果をえるために期間限で使用し、多店舗も宣伝出来てメリットがある方式だが常設コラボという異様なメニュー。

これが目を引き広島風太郎焼一色になってしまった。

広島風お好み焼きは素人が鉄板で作るには難しすぎるために従業員が各テーブルで作る忙しい事態になってしまったが追加サービスの魔法の言葉にツーショットをみんな頼んでいるのでたった一枚お好み焼きを頼んだだけでもかなりの売り上げになりそうだった。

お酒を飲める大人はミニゲームを頼み楽しそうに従業員と遊んでいる姿をうらやましそうに眺めているのだから、これは通常ドリンクにもつけるべきなのだろうか。

友人の高原さんはお友達をつれていた。

一人は電子コミックの社長、もう一人はアパレル企業の社長で全国チェーンでうどんを展開する社長と麺類だが別のジャンルなので一応ライバル店ではないだろう。

「小鳥遊さん!お願いがあるんだけど、さっき入口に佐々木君いたよね!ぜひ佐々木君に作ってほしいんだけど」と強い友達の要望にあの男も暇だろうからつくらせることにした。

あの男呼ばわりされている佐々木君は必死に厨房でお仕事しているのに暇だと思われ呼び出されるかわいそうな佐々木君である。


私の初期の方針ではただの奇抜なつまらない店で終わっていた可能性が高いそれをあの男に救われてしまった。

なんだかんだ忙しそうにしている佐々木君に差し入れに作ってもらった豚玉で力が出るようにもちも入れてもらったのを食べさせようとしたが妙に恥ずかしくて無理やり口に突っ込んでしまった。

熱々のお好み焼を突っ込まれて苦しむ姿にすこしいいと感じてしまう危ない傾向が見え隠れしていた小鳥遊ご令嬢である。

今日はヘルプスタッフとして例のあの人から派遣された従業員も仮面をして参加している。

昨晩突然の電話でスタッフ派遣を捻じ込まれた。

臨時のお忍びスタッフにネームプレートを付けるわけにもいかずネームプレートもなしとなった。

佐々木君がらみだろうが、それにしてもあの従業員すれ違いざまにお尻をひともみしたりと目に余る行動をとっているが例のあの人絡みなため止めることができないが自分の企業の株を下げることはやめてほしい。

プレオープンの評価はかなり良かったがメニューをどうするか悩んでしまう。

メニューを見た時のガッカリした表情を思い出すだけで表情が渋くなっていく。

そうだ、佐々木君を使えばいいのだ。

太郎のように新しいメニューを作ってくれるはずだ。

きらりと獲物を狩る目で見られている佐々木君は寒気を覚えみぶるいするのであった。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


ごん、お前だったのか。お好み焼き屋で尻を撫でていたのは・・・

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