第61話とある記者Aの体験
狐の置物に出迎えられて引き戸を開ければそこには狐面を身に着けた女性たち。
恰好は少し特殊で草履をはくなどとにかく制服が変わっているが特徴といえば
出迎えの挨拶だろう。
「いらっしゃいませココンがコーン」
そう、これがその店の正式な挨拶なのだから。
初めは何を言っているのかわからなかった。
古今が今?一体何?暗号か?と考えたがよく考えればわかることだ、それは狐の鳴き声なのである。
鉄板が真ん中にあり周囲の枠がテーブルとかなりスペースを取るので席数は少ない。
お一人様用ではなくある程度人数で行く店のようであり、お好み焼き屋という少し変わったものだった。
席に案内されると神社でよく見る木製の六角家のおみくじ箱を手渡された。
「あなたの今日の運勢は!なんだろうな!こん!」というコールをされお御籤を引いた。
木の棒には小吉とかかれている。
「おめでとうございます!油揚げのパリパリ焼の割引券です!」
とサイドメニューの割引券を渡された。
これはちょっとばかり嬉しいかもしれない。
あのラーメンチェーンで有名な小鳥遊が仕掛けるお好み焼き屋は、入店直後から度肝を抜かされるばかりなことからメニューにも期待をしたのだが、とてもつまらないメニューばかりが並ぶ。
豚玉が基本メニューでトッピングによるカスタマイズとシンプルだ。
豚玉に、サイズをフルかハーフか選び、自分好みにカスタマズして注文
なんとも味気ないメニューに新進気鋭の小鳥遊とはいかないだろうとガッカリしながらメニューをめくり最後のページには広島風太郎焼という奇抜なメニューがあった。
太郎というのは今世間を賑わせているあの太郎のことなのだろうか。
説明にはあの有名店の太郎とコラボしたオリジナル商品。
極太麺にふわふわキャベツがマッチした食べ応えのある一品!
どうぞご賞味あれ!
オープン前なのにコラボ商品をだしているのは珍しいと広島風太郎焼を注文しようと思ったが追加サービスでお狐様のもっとおいしくなる魔法の呪文サービスと書かれている。
なるほど、追加サービスかなら試してみなければならないだろう。
周囲も同じ注文だった。
皆広島風太郎焼を注文しており一体感が生まれつつある空気を感じた。
ドリンクのメニュー表を手にこれから記事を書かなければならないのでアルコールは控えよと思ったがミニゲームでお狐様と対決!勝てばサイズアップと書かれているとこれは注文しなければならないだろう
他に一品料理のところで割引券もあるし軽そうな油揚げのパリパリ焼というものを注文した、これまた店員の口調というか話し方がおかしい、語尾にコンという言葉を必ずつけている。
確かに狐の面をかぶり挨拶もコンだったが話し方までコンとはその徹底ぶりに恐れ言っているところにミニゲームの説明が行われた。
どうやら負けるとドリンクをもう一つ頼まなくてはいけないようだ。
ギャンブルとはリスクがあると燃えるもので、その勝負受けて立つと私が選んだのは丁だったが、目の前で茶碗に振られたサイコロは半を示していた。
しまった!そんなはずでは!と悔しくてもう一回挑戦したいが、ドリンク3杯はいくら何でも飛ばしすぎかと思いとどまり同じものを私は注文したのだ。
やはり勝負事は自分の都合がよくことが進まないのものだ。
この店の店員はネームプレートがないのでどの狐か判断できないのが悪い点だとおもう、店員が粗相したとき誰が粗相したかをクレームできないのはどうなのかという話だったかがよく見れば狐面の模様や色が違う。
まあ、少しわかりづらい店員の区別はつくようになっているがそれでも減点といったところだろう。
注文した広島風太郎焼が運ばれてきたがここは自分でそれを作らなければいけないスタイルなのだが作り方がよくわからない。
確かに自分で作る楽しみというのもあるかもしれないが、広島風はただでさえ見慣れないものなのでたとえ作り方を知っていても作りたいとは思えないだろう。
「すいません、作り方がわからないのですが」と話しかければ。「私にお任せくだされですこん!」と手際よく広島風太郎焼を作ってくれた。
プロのような手さばきに私は感心していると、「これからおいしくなる魔法の呪文を唱えるこん!」というのでもう完成していようだった。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ、ここんがこーん!」といいながらマヨネーズでハートを描いた。
確かに可愛らしい狐面の女性がハートを描きながらおいしくなーれと気持ちを込めたのだ、おいしくならないはずがない。
「追加サービスでツーショット撮影をやっておりますがいかがなさいますかこん?」といわれ、有料でなぜツーショットと疑問に思えば
でかでかと撮影禁止の張り紙がしてある。
つまりこの可愛らしくお絵描きされた広島風太郎焼を写真に残すには有料サービスを受けなければならないようだ。
広島風太郎焼に愛情込めた狐面さんとツーショットし、広島風太郎も画角に収めたが、これはこれでいい思い出になっている。
肝心なのはコラボされたお好み焼きのほうだ。
確かに上にかけられたソースが合うのはよく蒸されているキャベツだろう。
食べやすいサイズにカットされた太郎焼を崩すことなく大口を開けて一口で食べると麺の強烈なニンニクとネギの香りに甘くこってりとしたアブラのうまみそしてもちもちとしてうまい麺が食べ応えがある。だが惜しいことに上のキャベツはソースに合うのだが下の麺と相性がちょっと悪いのが残念だった。
ところが注文したアルコール飲料をぐびっとすると不思議とよく合う。
これはアルコールのお供に考えられたのだろうか、先ほどまで違和感があったのにすっと消えてなくなりむしろ調和している。
油揚げのパリパリ焼は鉄板の上に油揚げを焼いて焦げ目がつけばおかかにネギと醤油をかけるというシンプルなものだった。
パリパリとした触感が癖になる。
かなりのボリュームがありアルコール飲料2杯あけてもまだ残っていた。
私は追加で飲み物を頼み、またミニゲームに挑戦したのだが――。
再びの失態に同じドリンクを注文するという敗北終わってしまった。
今日は勝負に負け続けてなんて最低な日なんだと思いながら4杯も飲めばさすがに酔いが回ってしまう。
アルコールが切れるころにちょうど完食することができた。
今日の招待客は私のような記者のほかに名だたる企業の社長がおおい。
いま昇竜の勢いでコーヒーチェーン業界を賑わせているあの有名な社長など小鳥遊令嬢の人脈はすごいのだろう。
酔いが回ってこれ以上取材を継続することが難しくなったが、あの入り口にいる男の子は私のタイプだ!
グルメ記者Aはギャンブルとアルコールにおぼれてしまったのだった・・・・。
その後酔いがさめたグルメ記者が大絶賛の記事を書くのでした。
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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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