第41話そのほろ苦さのとは・・・

テレビ報道の影響で早朝から行列ができていた。

「なんで今日はこんなに行列ができているんだろう。」

サードの正社員は疑問に思いつつも後で聞いてみればいいかと思い店に入っていった。

試験店が好調すぎて今までNo1を誇っていた駅前店であるがここ数日店内の客は少数という感じで売り上げがかなり下がっていた。

駅チカ大通りという立地だけで集客していたため今流行りのメニューをだす別店舗に客が流れているせいなのだ。

でも、今日は朝からの大行列であり何かイベントでもやっているのだろうかと店の状況を把握しきれていないようだった。


正社員やアルバイトは口々に今日はなにがあるんだろうと口にしていたが、SNSを見ても何もキャンペーンらしきものはしていなく店長待ちという状況だった。新しい店長は一番遅くに来て一番早く帰るやる気のない店長で今日も開店ぎりぎりになってやってきた。

「今日はお客さんが沢山並んでるから気合れてね!」

と店長は最近の業績が落ち込んでいて青い顔をしていたがさすがの行列にウキウキな様子だった。

店長が何かしたのかな?と店員たちは口々に行列を作った魔法を知りたくなったのだった。

開店すると客が雪崩れ込んでくるのだが、客がメニューをみて固まっていた。

「あのすいません、キャラメルマキアートください」とメニューに書いてない商品名を客が口にしてようやくこの行列がなんの行列であるか駅前店の店員たちは悟ったのだった。

店員たちはカウンターから出ると並んでるお客様に別店舗の案内をし始めた。

そりゃ、さんざん文句を言われた、同じ名前で紛らわしいとか

いや、同じ店なんだけどあちらは試験店なんですよなんて言えないテレビの影響で勘違いして駅前店に来てしまったようだ。

またしてもしょぼくれた顔をする店長と今日も一日閑古鳥決定という悲しい状況が続くのであった。


売り上げが過去最高を記録して笑いが止まらない状況とは裏腹に激務すぎて社員の疲労は増すばかりであった。

行列をさばくために事前にメニューを聞き30分開店を早めて営業し何とか警察のお世話にならないようにと行列をさばくのでいっぱいだった。

そんな試験店の売り上げがV字回復しているのを見てうっとりしている高原お嬢様である。

忙しすぎてドリンクメニューしかさばけていないがこれにフードメニューが乗っかってくるのだしばらくこの好機は継続するだろうという見込みで

タンブラーは大量発注している。

今の状況を逃せば在庫の山ができるに違いない。

季節の新作メニューの開発は進められているし宣伝方法も考えなくてはいけない。

それに全国展開も視野に入れたほうがいいのだろうか。

1か月たって好調なら大都市の系列店は同じ形式にしたほうがいいのか、

小鳥遊さんのように全店舗一斉に全国展開という賭けにでる度胸はない。

許嫁である山内様には悪いが心が佐々木様に移りつつある。

ピンチの時にさっそうと現れて救ってくれる王子様のような体験をしてしまったのだから―――。

しかし許嫁解消は難しいだろうから私と浮気してくれないかなぁって思ってしまう。

相変わらずの太郎は好調のようだが似たようなラーメン店が増えつつあるそうだ。

類似品により大量消費されると売れなくなってくるらしい。

そろそろ別なラーメンを考えたほうが良いだろう的なことを言っていた。

まだまだ売れそうなのに消極的な考え方だがこれが経営者として成功する考え方なのだろう。

小鳥遊さんとお話しすると勉強になるなと思う高原だった。


行列に並んで流行りのモノを食べるという体験はとても貴重なものだ。

自分が流行に乗れている確認もでき、さらに写真も映えるのだ。

友人からさっそくいいねがつけられているのは先ほど上げたスナグラの写真である。

並んで疲れたから甘いものが食べたいとチョコソースにチョコチップをプラスしたがかなり好みの味になったとフラペチーノを眺めていた。


「あのすいません!」と声をかけられたので振り返ってみればどうやら私のファンの様だ。

男性のファンなんて珍しいとはいえこれから用事があるので食事には誘えないのが残念。

「いま、プライベートなので」と断りをいれたのだが。

「え?いや、これ落としましたよ?」と渡されたのはこれから入る予定の劇場のチケットだった。

「ああ、どうも親切にありがとう」とチケットを受け取るがよく見てみると好みの顔であった。

「ねぇ、君私の番号知りたくない?」

「あ、そういうのいいっす」とそっけない返事が返ってきた。

これでも人気アイドルのセンターをやっている。

容姿には自信があるのだが、考える暇もないまま断られたことに衝撃をうけた。

「私は、東雲飛鳥よ聞いたことがあるでしょ?」と食い下がるも

「え?ああそうなんですね。では失礼します」とぺこりと頭をさげて青年は去っていった。

有名な音楽番組やニュースで報道されるほど知名度があると自負していたがこんなにも相手にされないとは・・・。

とても甘いフラペチーノがほろ苦く感じたのだった。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。







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