第39話食パンを咥えてタックルするような衝撃

学校新聞とは、学校のゴシップネタを扱う非合法な組織ではない。

ただ単につまらない出来事例えば県大会出場者へのインタビューなどを取り上げて掲載している。

扱うネタが教職員か保護者くらいにしか読まれてなさそうな記事ばかりで生徒の興味関心はZERO!なのである。

だが、とある男子生徒の話題を載せたことにより興味ZEROオワコンといわれ続けていた学校新聞がバズってしまった。

「あぁ、この注目度たまらないぃぃぃぃ!!」

バズの快楽へ目覚めてしまった新聞部部長卜部さわ子はその記事を眺めながらにやにやしていた。

部員は二人しかいないので自動的に副部長はその人となる。

「ぶちょーまたその記事みてるんですか、飽きないですねぇ」

バズりに興味のない武田イマはあきれていた。

「だって!これ見てよ!!」

校内ポータル仮想掲示板の視聴ランキングが一位になったときのスクショである。

とある男子生徒が購買でどんなパンを買ったかというそれだけのくだらない内容だった。

小さな枠だったのだがそれだけでこんなにも注目されるのだからもう脳汁ドバドバなのだ。

おかげでこっぺ様とぷっちんシリーズは購買で一躍人気商品になるほどであり、いつも彼を出迎えてくれたこっぺ様の姿はもうないのであった。

男にあまり興味がない武田イマにとってはどうでもいい記事なのだが、かなり好評なので取材した甲斐があったもののそこまでほしい情報なのかと疑問がのこる。

そもそも、購買のコッペパンといえば不人気No1をほこるメニューであり購買戦争の敗戦者たちが仕方なく食べる敗北の味がする商品だったはず。


人気なパンといえば、トロトロクリーミーでアツアツマカロニが入っているグラタンコロッケパンや濃厚Wクリームパンである。

グラコロパンのためだけに購買前に電子レンジが置かれたくらいなのだから相当の人気をほこっていた。

それが、敗者の味であるコッペパンとその付属品であるぷちっとシリーズが爆売れしてしまい、次世代の敗者の味として選ばれたのがあんぱんである。

まあ、あんこがBBAくさいからとかそんなイメージだけで買われないというかわいそうな商品である。


「イマちゃん!もっと強烈なパンチのある記事書かなきゃ!私たちの記事はそういうのが望まれてるんだよ!」と部長の暴走気味の発言にため息をついた。

「ぶちょー男子の記事書くのはなしですよ。ただでさえ教師に目をつけられそうなのに、連続で男子のこと書いたら怒られるだけじゃすまないですからね。」

記事を掲載させることで男子が学校へ登校できなくなる環境を作ってしまえばクラス内リンチに会いかねない。

仮想掲示板という全校生徒がアクセス可能な場所で男子の情報を扱うのはグレーに近い。

「でも、でも、でも、でも!!こんなに注目浴びているんだよ!読者の期待に応えるのが新聞部の役目でしょうが!」

拳を握りしめ熱くいい感じの言葉をドヤっていたが

「ぶちょー、確かに男子のゴシップは注目を集めますが、それと同時に猛毒ですからね。いくら扱いを注意したからっていって自分たちがその毒に殺されかねない記事を書くなんて私は反対ですよ」と常識人イマちゃんの徹底的な反対により今まで通りの堅実な記事を書くということで落ち着いたのだった。

とある昼休みのことだ、ぼーっと歩いていたイマは廊下の角を曲がったときに誰かにぶつかってしまった。

堅い壁のようなものにぶつかったのだろうか私は「ぎゃぼっ」と声をあげ尻餅をついたのだった。

「大丈夫?」と手を伸ばされてその手をつかんでみれば噂の佐々木努であり、ぶつかった衝撃で昼食のアンパンが無残な姿になっていた。

「あ、ありがとうございます」とぺこりと頭をさげたが

「こっちこそ不注意だったよ、ごめんな」と軽く謝られて彼は去っていったのだが、イマはその場に残り続けていた。

昼休みも終わりのころである、急に送られてきたイマからのメッセージを受け取った。

さわ子は珍しいなと思いながらメッセージを開いてみたらものすごい長文だった。

この文章はあと数分で読める気がしないとさわ子はメッセージを読むことを諦めたのだった。

放課後になると頑なに記事を書くのを反対していたイマちゃんはおかしな目をして男子の記事を書きましょうと連呼するようになったのだが、いったい何かあったのだろうか。


とある保健室

「佐々木君のパン、車に引かれたみたいになってるよ」と鈴木君が僕の昼食であるあんぱんをみつめていた。

「ああ、廊下で女子にぶつかってさ」と何気ない会話だが、みんな男子が不快そうな表情をした。

「それはお気の毒に、あいつらちょっとガサツなんだよな。」加藤君がぼそりと呟くほどちょい重空気になったので

「普通は朝登校中に食パン咥えてぶつかってさ」って定番ネタを話したのだが

「なにそれ、朝から最悪な気分になるやつだよね」ってかえってきた。

ああ、そういうあるあるネタが通じないのかとすこししょんぼりした僕であった。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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