第25話川で脂ののった魚が釣れるってよ

「俺の麺は加水率23%!!最強適切水分量で弾力ともに最高の歯ざわりを実現!

 さらにふすまを多く入れることで小麦の香ばしさを強めた麺だぁ!!」

「おぉ~」鈴木君が野口君の説明を聞いて感嘆の声を漏らした。

「さらに!ゲンコツとニンニクとネギだけで煮込んだこの荒々しいスープは、若干の臭みを残しつつもしっかりとした極太麺を抱擁するがごとく濃厚な味!この最強の布陣にかなうわけがない!」

「なるほど、やるねぇ!」と山内くんがつぶやいた。

どうだと言わんばかりのどや顔を決めた野口君である。

頭に手拭いを巻き両腕を組むラーメン屋スタイルとはやるな。


え?これやらなきゃダメなのと中川店長と顔を見合わせる。

「私の麺はいつも通りのお店の麺だからおいしいはずよ。」

あっさりとした説明に鈴木君は不満そうな表情を浮かべていた。

二人の視線が僕に期待の眼差しを向けてくる。

ま、眩しい、やめろぉそんな期待したってなにも出てこないぞ。

「僕のスープのこだわりはなんといっても魚介類。七輪でじっくりと熱を通しさらに酒で香りをつけたハマグリ、香ばしく焼いたエビの風味がまた絶妙。まあ、濃厚エビオイルを好みで追加してさらにエビの風味を引き立てると味変もできていい感じかと。まあ、僕の最強スープに中川店長の麺が合わさるんだから負けるわけないでしょ。」と言ってみる。

「うひょーたまんねぇー」

鈴木くんは叫んでいた。

「ぶらぼー」

手を叩きながら大げさに喜びを表現する山内君のギャラリー組であった。


そんな茶番を繰り広げている太郎調理チーム

一方そのころ魚を釣るといいながら女性を釣っていたパリピ王率いる加藤組はというと。

「やっべ、加藤君ここ全然釣れないよー」

加藤君の友人Aこと中島君は川の洗礼を受けていた。

「こっちもだめだわーもう腹減ったしよくね?」

と友人Bこと渡辺君もギブアップ寸前だった。

「ここで諦めるわけにはいかない!」と頑張る加藤君だったが結局一匹もつれなくて焦っていたところ。


「おーい、みんな魚買ってきたよ!」

と女性集団が魚を手に帰ってきた。

ビニールに入ってる魚はどう見ても海の魚だ、

そもそも川魚なんて売ってないしね!

「ってそれ秋刀魚じゃん!海にいる魚だよ!」

「え、まじで?大丈夫だって食べたらおいしいんだから」

そうあっけらかんと話すのは水沢ハナ

「ほら、やっぱりお刺身のほうがよかったじゃん」

彩音サクラはマグロの刺身がたべたかったのだ。

「それはちょっとちがうかも」

天宮飴は小首を傾げた

女性陣はあまりにも釣れない姿をみてかわいそうなので居てもたまらず魚を近くのスーパーまで買いに行っていた。

なんとしてもこういうイベントで落としてハーレム入りしたいと意気込む仕事仲間と単純に釣りを楽しみたかった男たちとの若干の目的の違いはあれど、とりあえず魚を仕入れたし時間もだいぶかかっているのでこれ以上は粘れないと判断した加藤君は秋刀魚を手にため息をついた。


「はぁ、新しい竿に変えたのに全くつれなかったよ」

「ドンマイ。今日はあまり釣れない日だったんだよ。また今度一緒に行こうね!」

天宮飴の一押し仕事仲間加藤君にさりげないアピである。

不自然なほどの話しかけるたびにボディータッチは加藤君は慣れてしまった。

もう、いつもと同じなので気にしていても仕方がないのだ。

「これどう言い訳しようか」

男三人は秋刀魚が入った袋を眺めて何かいい知恵はないかと無い知恵をだしあった。

三人寄ってもなんじゃもんじゃなので、いい案すら浮かばないのだから観念して

秋刀魚を差し出すしかないとボーズ組はがっくり肩を落とした。


調理組と合流するとうなだれている野口君の姿がそこにあった。

「どうしたんだい野口君?」

「あっ!加藤君だ!とりあえずこれ食べてみてよ。」

レンゲに2本の麺とスープが入ったミニラーメンを渡された加藤君は何もわからないままにとりあえずミニラーメンを食べてみる。

うん、太郎はおいしいけどちょっとくどい味がするなと思うと次のレンゲを差し出された。

もうひとつ目のミニラーメンは魚介の風味とエビの香ばしさ薫新感覚太郎だった。

「最後のやつおいしい!なにこれ新商品なの!」

という声をきいて心にヘビーブローを受けた野口君はその場で倒れ伏してしまった。

加藤君が連れてきた女子たちはみんなかわいい。

さすが芸能人である。

そんなパリピ王が魚の入ったビニール袋を僕に差し出してきた。

うん、これ海の魚だな。どこまで釣りに行ってきたんだよ!って思ったが黙って受け取った。

うーんさんまかぁ。秋刀魚をぶつ切りにして塩と砂糖水につけて数分放置したあと片栗粉をつけて秋刀魚をじっくりと揚げた。

その間に、甘じょっぱいたれを作成するラーメンは全体的にしょっぱいので

秋刀魚の唐揚げのタレは粘度の高い甘めの甘じょっぱい系のタレにしようと閃いた僕は天才かな。

骨まで食べられるようにゆっくりじっくり油であげる。

それにしてもいろいろ道具もってきたものだなぁ・・・。

僕は大量の秋刀魚を唐揚げにしながらそろそろ昼食の時間だと空を見上げていた。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

※サイレントアプデ済み






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