第19話???

夜の部が始まろうとしているころに、電話がなった。

昼間あった件で取材したいとテレビ局からの取材交渉といった感じだろうか。

入店してラーメンを食べて一言撮影するという大まかな撮影の説明をされたあと、いい感じでよろしくと一方的に電話は切れた。

自分たちがこうやって放送するから、ちゃんと動けよ前もって伝えたからな的な電話だったのだろう。

まあ、テレビ取材というのは大体こういうものなのだ。

こちらもかまっている余裕はないしさっさと対応したほうが楽だ、

太郎のよい宣伝にもなるしと複雑な心境で中川店長はテレビの取材に対応したのだった。


テレビの生放送が終わったのだがレポーターは太郎にかぶりついていた。

以前のラーメンであれば、取材が終わったとたんに残してさっさと撤収していたのだが、彼女はテレビでは見せられないくらいの大口でマヨでデコレーションされた野菜を口の中へと詰め込んでいた。

「あけみちゃーんそろそろ撤収するよ」とスタッフが彼女に声をかけるも

「もう少しまってください、今いいところなんです!」と完食する気満々だった。

その様子を見ていた客がごくりと音を立てて喉をならし、あけみは野菜にたっぷりの背油とニンニクを絡ませ豪快に口の中へ入れるたびテレビに映してはいけない表情をするのだった。


中川店長も最初口に含んだ時にはそれほどおいしいと思えなかった。

けれど食べ進めながら、背油やニンニクを混ぜたりしていくうちに、もう自分では止められなくなっていた感覚を覚えている。

これは、すぐに全国展開しなければもったいないとお嬢様に講習会を開いてもらわなくてはと意気込んだ。


小鳥遊小鳥は悩んでいた。

あの恐怖のメッセージに反応がないからといって突然のコールでキモが冷えると思った。

自分が運営しているラーメン店に許嫁殿のご学友が考案したラーメンの試食会があると聞き、これは良い口実になると駆けつけたのは良いが、いつの間にかトラの尾を踏みつけていたのだから。


あの一店舗を犠牲にすれば、旦那様の好感度ボーナスが得られるのなら安いものだと思ったのだが、それで済むわけがなくいつの間にか全国展開しろという途轍もない外圧がかかってしまった。

自分の趣味のラーメン店であり、あのような暴力的なラーメンに屈するなどあってはならない。と小鳥自身はそう思いたいが現実的に不可能である。

しかも、中川店長も同じくやる気をだしているのだからもう簡単に止められるものではない。

いつの間にかコンサートスタジアムも押さえられて私の知らぬ間に準備まで進んでいることを知らされた。

私が知らない間に全国店舗に通達までされていてもおかしく無いだろう。

これは父上の仕業なのでしかたがない、例のあの人に逆らうのがそもそも無理だとわかっている。

私は旦那様へ太郎の講習会を開きたいのでご学友に協力してもらえるように頼んでんでもらえないかと送れば、旦那様は俺も参加していいのかな?ぜひ参加したんだけど。すごい食いつきようだった。

ああ、これは推すしかない!!小鳥お嬢様の悩みは一瞬で崩壊したのであった。


なんやかんやで講習会もうまくいった。

何店舗かの店長は反抗的だったので降格処分にした。

私の旦那様を怒らせるとは何事だ!

まあ、全国展開してオリジナルの太郎を各店舗1杯を3日後スナグラにアップするように通達。

もちろん各店舗がオリジナル太郎の写真を上げていた。

東は辛い物が多く、西はさっぱり系かこってり系のどちらかといった感じのものが多かった。

まあ、どうせ騒いでるのはこの辺で全国展開しても流行らないだろうと思いつつ、太郎の写真のコメントがかなり多くいいねやコメントされていることにはあまり気にも留めなかった、その写真は全部旦那様へ送られ、旦那様と長い会話ができるのだから、太郎とはとても素晴らしいものであると小鳥お嬢様は思ったのでした。


小鳥お嬢様の予想と反して、太郎は爆発的な人気になっていた。

ラーメン特集なるものが組まれたり、テレビで人番組お食事系バラエティーに取り上げられると、瞬く間に人気になり太郎旅なる全国の太郎をめぐるものまで現れた。

店では何故かスタンプラリー的なものが用意されており、多くのタロラーたちはスタンプコンプしたいという欲求につき動かされていくのである。


「まあ、こんなものでしょ」

ゆったりとした大きな椅子に腰かけながら資料をパラパラとめくる。

「さすがですお嬢様の手腕ですね。」

有能メイドではないメイドが手放しでほめていると

「婿殿がすごいのであって私は軽く後押ししたに過ぎないの、私はほとんど動いていないわ。わかる婿殿のすごさ、尋常じゃない。あのコンテンツを生み出す発想力まるで神ね。」

「そこまでなのですか!?」

「ふふふ、私の婿殿をみんなに自慢しないと。」

「すぐに、用意いたします。」

彼女は一仕事終えたように、一欠片ダークチョコをつまむと口の中でゆっくりと溶かしていた。


茶会それは優雅な響きだが、雰囲気はさながら戦場であると小鳥遊小鳥は胃薬片手にメッセージを虚ろな目をして見つめていた。

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。



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