2、旅の資金が足りない!

こうして私は勇者の代わりに姫(勇者)を連れ戻し、魔王を倒す旅に出ることになった。


「ではアイリーン姫よ、旅立ちの50Gを受け取り」


「50G? たったの?」


「そうは言っても最初は50Gと昔から決まって」


「では仕方がありません。私の私物を売ることにしましょう」


アイリーン は ひめのティアラ を うった!

アイリーン は 500000G を てにいれた!

なるほど。私にとってティアラは邪魔でしかなかったが、結構良い値段で売れるものだな。


「てか本当に売っちゃって良いんですかい? これ、姫様の証的なやつなんじゃ?」


不安そうにこちらを見ている道具屋に私は更に不要なドレスを押し付ける。


「問題ない。そもそも、私は姫という立場にこだわりはないんだ。ただ、王族として生まれた以上はその責任を果たしたいと思っただけのこと。魔王を倒したら何処かの田舎でのんびり暮らすのもありかもしれないな」


驚く道具屋に首を傾げると、道具屋は恐る恐ると言った風に口を開く。


「いや……姫様はもっとおっかない人だと思ってたんでさぁ。第一王女のアイリーン姫って言ったら公正無私で文武両道って噂だから、てっきり俺みたいな庶民とは目も合わせねぇような雲の上の人なんだとばかり……」


なるほど、私はそのように思われていたのか。確かに父上と比べればそうかもしれないが、それは父上が頼りないだけだと思うのだが。


「何、人並みに努力しただけのことだ。確かに私は責任ある立場だが、その前に君たちと何ら変わらない一人の人間であることを忘れたことはない。寧ろ上に立つ立場だからこそ、驕ることは許されないんだ」


そう言うと道具屋は長く息を吐き、代金に加えて薬草を一束渡してきた。


「おい、これは買っていないぞ」


「俺からの気持ちでさぁ。もう長いことこの仕事をやってますが、俺はあんたみたいなお人は見たことねぇ。どうかこの国をお願いします」


この『気持ち』は、突き返す方が無礼だな。

私は代金と共に薬草を受け取り、鞄に仕舞う。


「ありがとう。必ずや勇者と共に戻ってくると約束する」

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