第8話 この気持ちはなんだろう…
あの時、屋上でリンドウさん対してに感じたあれは何だったんだろう…と僕はモヤモヤを抱えながら午後を迎えた。お陰で授業には全然集中できなかった。
だけど、放課後になる頃には「きっとあれは気のせいだったんだ」と自分の心を整理する事に成功し、モヤモヤは薄れていた。
僕は凝り固まった肩を回し、グッと上に腕を伸ばす。
「んーっ」
「いおりん、おさきー!」
「あ、うん、またね。」
僕はバイトへ赴く葵くんを見送る。
最近の葵くんは推し活にハマっているらしい。ネットで活動し始めたアイドルさんが今旬だと熱弁されたのでよく覚えている。
葵くんは頑張っている人を応援したいと詳しくは知らないけど投げ銭?する為にバイトしているらしい。僕はそんな葵くんを偉いと思うし普通に尊敬する。
「宮沢さん、さようなら。」
「いおりくん、バイバ〜イ。」
「うん、二人とも部活頑張ってね。」
礼香さんは水泳部に所属し、紬さんは料理部と手芸部を兼部している。
前者は立派に部内エースを務めて大会で新記録を打ち立てるなど偉業を果たしており、後者も部内の皆から「もし男子だったら付き合いたかった!」と絶賛の嵐を贈られるくらい、フルに己の家庭力を発揮して、活躍していた。
僕はアルバイトを禁止されていて、高校では部活動にも所属していないから、何か打ち込めるものがある人というのはすごく眩しく映る。
でも僕には朱里ちゃんという素敵な恋人がいる。こういう青春の形もきっと悪くないはずだ。
「いおり。」
「あ、朱里ちゃんっ。」
噂をすればなんとやらだ。彼女の席へトコトコ近づいていく。
「……」
今のは飼い主に喜んで駆け寄るワンちゃんみたいで、恥ずべき行為だったかもしれない。朱里ちゃんの彼氏としてもっと自らの行動には気を付けないと。そう思ったところで、僕って本当に朱里ちゃんの事が好きなんだなと実感する。
「今夜私の家に来い。いいな?」
「っ、うんっ、わかりました…」
朱里ちゃんのドスの効いた声が耳朶を打つ。”呼び出し”の約束だった。
元々はお昼休みのはずだったが、予想外に遅くなってしまった。朱里ちゃんは怒っているだろうか。
今夜は果たして僕の身は持つのか、朱里ちゃんを満足させてあげられるのか心配だ。
ズキッ
あれ…?
「じゃあいおり、また後で。」
「う、うんっ、朱里ちゃん。生徒会頑張ってね!」
去り際、朱里ちゃんに頭をポンポンされる。
僕は朱里ちゃんの姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り続け、見送った。
「……」
僕は朱里ちゃんに撫でてもらった己の髪に触れる。
なんでだろう。
さっきから朱里ちゃんと話せて、触れてもらえて嬉しい、はずなのに…
「うーん?」
今一瞬感じた胸の痛みは何だったんだろう。
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【★あとがき★】
いつも応援ありがとうございます!
久しぶりに書いてこんな伸びるとは思ってなかった(嬉)(泣)
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