第3話 ぼっ…孤高の存在なんだね…
りんどうさんの事をじぃーっと観察して分かったことは、彼女がぼっ…孤高の存在だということだった。
「……」
休み時間、りんどうさんは誰ともつるむことなく、一人でただ机に突っ伏し過ごしていた。
別クラスからも彼女を訪ねて来る様子の者はいなかった。
もしかしたら、噂のせいかもしれなかった。実は『暴走族』『裏仕事』『円光』などと中々物騒なワードが飛び交う噂が挙げたら切りがないほどに校内で蔓延している。それでなんとなく怖くて、誰も近づきたがらないとか。
「そういえば…」
実際、今の今まで僕の頭からは抜け落ちていたが、昨夜彼女もあのホテル街にいたのだ。
”円光”というワードが一瞬頭によぎるが、所詮は噂だ。きっと何かの間違いだろう。
僕は生成されていきそうだったイメージを慌てて頭をぶんぶんする事によって振り払った。
「まあ、でも…」
他にも、彼女が孤高になる理由は事欠かない。例えば、その目を見張る容姿。決して不良だからという悪い意味だけではない。
そのセンター分けのホワイトブロンドの髪、メイクの効果も相まって、切れ長の瞳に、スッと通った鼻筋、形の整った薄い唇がより輝きが燈り、そこにさらにスタイルの良さも加わり、まるで芸能人みたいに綺麗すぎるのだ。
アイドル顔負けの甘いマスクを持っている朱里ちゃんと比べても決して見劣りしない。このクラスでも上位を誇る美人さんだった。
ただ朱里ちゃんとは異なり、りんどうさんは決して口数が多そうなタイプではない。
それを周囲は近づき難いと捉えて、遠巻きに見て満足しまっているのかもしれない。
「ふぁぁ……」
そんな当の本人は我関せずを貫き、授業中あくびをして眠そうにしていた。
だが、退屈そうに窓の外を見つめている、なんてことはなく、意外にも潤んだ瞳を擦りつつ真面目に板書された事を淡々とノートに書き記していた。
見た目や雰囲気のせいもあって本当に猫みたいな人だった。その様子は彼女がごく普通の等身大の女子高生だという事を思わせた。
僕自身さっきのキーホルダーの件もあって、そんなに怖い人には見えなかった。
・
「ぬっ」
「うおっ、りんどう!?」
「こわ…あんま目合わせないようにしよ…」
一限~三限目のそれぞれの授業の担当教師たちは教室内にあるりんどうさんの姿に驚いていた。それはなんだかTVなどによくあるドッキリに遭う被害者を想起させられて面白かった。
ただ、同時にそのような異物や腫物を扱うような露骨な態度は、決して教師として生徒にしていい反応ではないとも思い、僕は思わず口元をムッとさせてしまう。
そんな姿を朱里ちゃんに見られて、ジェスチャーで「ほっぺた膨らませてどうしたの?」と問いかけられて、誤魔化すのに必死だった。
このような些事で朱里ちゃんの手を煩わせてはいけない。僕は「なんでもないよ」と同じくジェスチャーで慌ただしく頭や手を使って返答した。
一応朝葵くんとした会話の内容を黙って怒られた件もある。お昼休みに呼び出された時、ついでにこの件の事も正直に報告して、黙っていた事を叱ってもらおう。僕はどこまでも愚かだから、朱里ちゃんに怒られないと学習できない。
それからの時間は朱里ちゃんにこれ以上迷惑を掛けないように!とキリッとした表情を心掛けて授業を受けた。
しかし途中で教師から「宮沢、変顔するなー」と注意を受け、クラスメイトからはクスクス笑われた。
なんで?
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