第2話 魔石救世(アルシャードセイヴァー)
「聞いてくれ史思明!俺は高適に命を狙われた!」
李徴は史思明が住まう館に駆け込み、事情を説明する。
「落ち着け、李徴。君が虎に変身して野山を駆け巡っていることはわかっている。だが、官僚が道中で遭遇した虎を攻撃しても、何も罪には問われないのではないか?」
「確かに…」
「唐の官僚機構は優れたものだ。君が一人で立ち向かったところで、返り討ちに遭うのがオチだよ」
「クソッ…なら、どうすればいい!?」
「君は高適に復讐したい、だが彼は皇帝の忠臣だ。彼を倒すことは、今の君には無理だ」
「けどよ、また俺の命を狙ってきたら…」
「ふむ、そうだな…高適という男は、奈落の使徒(アポスル)なのかもしれない」
「奈落…?」
「唐の官僚組織の中には、奈落種子(アビスシード)を宿した魔術士の集団がいる。俺たち安史団のメンバーは何人も、彼らの餌食になった」
「高適は奈落の力を得た魔術士、ってことか」
「ああ、だから彼は魔法弾を撃つことができるんだ。そして奈落の使徒を倒すためには、君に変身能力を与えている魔石(シャード)の力を使いこなす必要がある」
「魔石…?」
「君の能力は、体内に潜んでいる魔石の力によるものだ。魔石は地母神(ガイア)によって、君に与えられたものだ」
「つまり高適を倒すためには、魔石の力を制御する必要があるんだな。けど、どうすれば使いこなせるんだ?」
「ここに一枚の紙がある。これに君の能力を書き出して整理するんだ」
そう言って、史思明は筆と紙を李徴に手渡す。
そして書棚から一冊の本を取り出し、机に置いて開く。
「君には虎に変身する能力がある。私の見立てでは、君は鬼(オウガ)だな」
「オウガ…?」
「そして圧倒的な力を振るい、敵を倒す。攻撃者(アタッカー)だ」
「つまり俺は攻撃に特化している、ってコトかよ」
「ああ。だから高適を倒すためには、支援役の魔術士が必要だ。範囲攻撃魔法で唐の雑兵を殲滅しないと、首魁である高適を倒すことは叶わない」
「史思明…アンタ魔術士だろ?俺の味方はしてくれないのか?」
「確かに俺も現状の唐に不満はある。だが高適一人倒したところで、唐は何も変わらない。お前が能力を使いこなして一人前になったら、俺達の仲間として認めよう」
「わかった。まずは俺の能力をこの紙に書いて整理して、その上で協力してくれる魔術士を探す」
「ああ、期待しているぞ。この本を読みながら能力を整理しろ」
史思明は手元の本を李徴へと手渡す。
表紙には『魔石救世(アルシャードセイヴァー)』と記されていた。
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