48本目「相談! 恋の悩みは(元)ギャルにおまかせ!?」
「はぁ~……どうすれば姫先輩と付き合えると思う?」
僕のその言葉に、テーブルの向こう側に座ってる女の子――真由美ちゃんは露骨に嫌そうに顔を歪めた。
「……そういう問いかけ、私にしますか? え? 喧嘩ですか? MK5なんですけど?」
あれ? 何か怒られてる?
僕、先輩やぞ? ――って、それは流石に傲慢がすぎるか。
「だってさー、こういうこと相談する相手って他にいないし……」
「……
「いや、そんなことはないけど……」
ない。ない、はず……?
「友達っていうか、サークルの先輩たちにはもう相談済みなんだよね」
実は少し前の飲み会の時、たまたま姫先輩が不参加だった。
その時に
そこでも色々とアドバイスはされたんだけど……。
「うーんと、サークル以外の友達とかは?」
「そっちは色々とあって望み薄いんだよね……」
大学って高校までと違って『同じクラスの友達』ってできにくいからね。同じ学科のヤツでも、必修科目以外はあんまり顔を合わせることもないし。
そう考えると、大学の友人って主にサークルになるのかな? 人によりけりだから、あくまで僕の場合は……だけど。
で、有人といえば
…………ちなみにだけど、コッティ。ああ見えて実は彼女がいる。クソがッッッ!!!!!
「……やっぱり先輩って友達がいないんじゃ……?」
やめろ、僕を憐れむな。
「とにかくさ、大学で相談できる人には相談しつくしたって感じなんだよ。
だから、後は真由美ちゃんしかいないんだよー」
自分でもちょっと情けないとは思うけどさ……。
真由美ちゃんは諦めたように深くため息を吐くと。
「はぁ~~~~~……まぁいいです。わかりましたよ。童妙寺先輩がモテないってのもよくわかりました」
……さりげにディスられてる……。
そういや、なんで真由美ちゃん、こんなに不機嫌なんだろ?
連絡した時にはすごいうっきうきだったのに……模試の結果がふるわなかったのかな??
「っていうか、受験生の貴重な時間を割いてあげてるんですからね!?」
「わ、わかってるよ……お詫びにここのお店は僕が持つから」
「当然じゃないですか」
僕たちが今いるのは、いつぞや真由美ちゃんと一緒に入った寂れた喫茶店だ。
日曜の午後、他にお客さんはいない……相変わらず経営が心配になるお店だけど。
「まぁ受験勉強の息抜きがてら付き合ってあげます」
「うん、ありがとう。助かるよ」
「…………はぁ」
まだちょっとご機嫌斜めっぽいけど、話は聞いてくれるみたいだ。
彼女が最後の砦なわけだし、相談ににのってくれないとちょっと困るしね……。
「それで? サークルの先輩たちはどうだったんですか?」
そこについて話さないとダメか、やっぱり。
「うん……結論としては『押せ!』だったね」
僕の期待していた『女を口説くテクニック』とかは一切なく、ただひたすらに『押せ!』の一点張りだった。色々と言い方は皆して違ったけどね。
とにかく、僕から姫先輩に告白すれば、それだけで問題ない! と口を揃えて言っていたけど……本当にぃ? って感じだ。
何せ今まで女の子からモテたことのない、ほぼ縁のなかった僕だ。
告白すること自体勇気がいるし、ぶっちゃけ同じサークルなだけの僕が姫先輩に告白するなんて無謀……そして彼女からしてみたら迷惑なんじゃないだろうかと不安に思えてくる。
「……んー……」
恥を忍んで僕の胸中を素直に話すと、真由美ちゃんは少し考え込む。
やがて考えが纏まったのか、一口コーヒーを飲んでから続けた。
「いやー、多分それで問題ないと思いますよ、私も」
「え? とにかく『押せ』ってこと?」
「はい。というか、それ以外にやれることって何かありますか?」
「……あ、アピール、とか……?」
「具体的には?」
呆れたように言ってくる真由美ちゃんに、僕は返せなかった。
た、確かに……? 言われてみれば具体的にアピールって何すればいいんだ……?
「え、えーっと……プレゼント贈る、とか?」
「何の理由もなく渡されてもキモいだけですよ」
確かに。
めっちゃ冷めた目で真由美ちゃんは見てくる。
「ほ、褒めるとか?」
「まー、褒められて悪い気はしないでしょうけど……脈絡もなく言われると、それはそれでキモいですよ」
「じゃあ……頭ポンポンするとか?」
「最悪の対応ですね」
これはわかる。たとえイケメンであろうとも、普通に嫌だろうね。
「わかりましたか? 行動する以外に選択肢はないんですよ」
「うぅ……やっぱりそうなるのか……」
まー、自分でも薄々わかってはいたけどさ……。
コツコツ好感度上げてから……っていうのも間違ってはいないんだろうけど、やっぱり最後の決め手は『行動』あるのみなんだよね、結局。
たとえ好感度がカンストしたとしても、行動しなきゃ先へは進まないわけだし……姫先輩の方から来てくれることを期待して待つってのもね……。
「あくまで私目線での話ですけど、よっぽど嫌いじゃない相手であれば素直に告白してくれれば嬉しいですよ? ちょっと考えるかもしれませんけど。
逆に『この人、私のこと好きなんだろうな』と思える程度の相手でも、いつまでたっても告白してこないのであれば……まぁ放置ですかね? 私側の方がよっぽど好きだったら……告白するかもしれませんけどねぇ」
真由美ちゃんの場合だったらの話だけど、姫先輩に全く当てはまらないとは思えない。
「……要するに、僕がよっぽど姫先輩に嫌われていない限り、告白した方がいいってこと……だよね?」
「最初からそう言ってますよ。
うーん……少なくとも、童妙寺先輩はリン先輩から話しかけられるのも嫌、ってくらい嫌われてるなんてことはないと思いますし、一度でダメなら二度三度ですよ! ま、多少は期間開けた方がいいと思いますけど」
そ、そうなのかな……?
そうなのかも……?
「……ま、振られたら振られたで仕方ないじゃないですか。その時は私が慰めてあげますよ♪」
「真由美ちゃん……」
ちょっとだけ笑って真由美ちゃんはそう言った。
……まぁ振られたくはないし、受験生の時間を僕の泣き言に使わせるのも悪いからアレだけど――それ言い出したら今日の呼び出し自体がアレだな。
それにしても、流石真由美ちゃんだなぁ。説得力がある。
……結論としてはサークルの先輩と同じなんだけど、同じ女性からの言葉だしね。
さて、後輩にここまで付き合ってもらって踏ん切りがつきませんでした、じゃいくらなんでも恰好がつかないよね。
「――真由美ちゃん、ありがとう! 踏ん切りがついたよ!」
「お、やる気でましたか? ……それはそれで複雑なんですけど……」
ん? ちょこっと小声で何か言ったかな?
「じゃあ、今すぐやりましょうそうしましょう」
「え!? 今すぐ!?」
そ、それは心の準備が……。
と僕がまたもじもじしだすのを見て、再び呆れたため息を。
すると、彼女は自分のスマホを取り出して――
「あ、颶風院先輩、おつです~。
えっとですねぇ、ちょっとお話したいことがあってぇ、駅前の喫茶店に今いるんですけどぉ」
止める間もなく姫先輩へと電話をかけてしまった!!
「結構近いところにいますね。では、すみませんが来ていただけると……はい、はい。ありがとうございます! それではお待ちしていますねぇ。
…………はい、これでもう逃げられませーん。これで逃げたら、童妙寺先輩はチキンですー」
ま、マジで電話してたのか……脅しじゃない、よね……?
「じゃ、私は先輩の告白を間近で見るつもりはないので離れてますねー。がんばってくださいねー」
棒読み気味の台詞を残し、真由美ちゃんは宣言通り喫茶店の外へと姿を消してしまう……。
どうしよう、どうしよう!?
え、マジでこれから姫先輩が来るの!?
……と僕が混乱し時間を浪費していると――
「あら? 真由美さんがいらっしゃいませんね?
……貞雄さん?」
「ひ、姫先輩……」
マジで姫先輩がやってきたのだった……!
「ひ、ひ、姫先輩!
す、す、す、好きですッ!!!」
……テンパった僕は、色々なことをすっ飛ばして――気が付いたらそんなことを店に響く大声で叫んだのであった……。
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