36本目「全く! 小学生は最高だぜ!!(後編)」
「…………」
流れるような動作でスマホを取り出し電話を掛けようとするコッティ。
「っ!!」
キルヤ君たちを振りほどき、コッティの腕を取り押さえる。
「…………どこへ電話しようとしていた、コッティ?」
「……」
ふと画面を見ると、「11」まで見えた。危ねー!? 緊急通報ボタンだったら終わってたわ!!
「待て、君は大きな誤解をしている」
「……貞雄氏。まさか貴殿がそのようなことをするとは思っていなかったでござるよ……。
そこまで落ちぶれていたとは……」
「だから違うって!?」
絶対にコッティに変な誤解されてるよこれ!?
……いや、まぁ確かに誤解されてもおかしくはないけどね?
仮にコッティが両脇に小学生侍らせて歩いてたら、僕もきっと通報したはずだ。
「いくら貞雄氏が性欲の獣であろうとも、人としてやっていいことと悪いことの区別くらいはつくと思ってござった……っ!
貴殿を信じていたかった……っ!!」
いや信じろよ。
涙ながらに語るコッティ。
「Yesロリータ、Noタッチでござる!
それを貞雄氏は……Yesロリータ、Moreタッチしてしまったでござる!」
「いやしてな……してない、よ?」
いやしてたわ。めっちゃ身体にタッチしてたわ……ほとんどが向こうからタッチしてきているから、ほぼほぼ無罪と言っていいと思うんだけど?
……そうとも言えない世知辛い世の中よ。
ともかく、コッティに通報なんてされたら超困る。しかも、こいつネタじゃなくて本気で通報しかねないし……。
「そも、貞雄氏とその子らはどのような関係でござる? 貞雄氏の親戚ではござらんよな?」
眼鏡くいっしながら言ってくる。
くっ、コッティは高校の同級生だし、僕の家族構成も知ってるよなそりゃ……。
よくよく考えると、キルヤ君たちとの関係を他人に説明するのって難しいな?
「えーっと……ヤリサー関連の子供たちなんだよ!」
「えぇ~? ほんとにござるかぁ~?」
こいつ……僕のことを何だと思っていやがったんだ!?
と、ここで突然の乱入者にポカーンとしてた小学生ズが、再び僕の両腕に絡みついてくる。
「ねぇねぇ、貞雄兄ちゃん♥ 早くイこうよぉ~?」
「(ボソッ)……お腹空いた……早く……」
くぅ、こっちはこっちで僕の事情にお構いなしなのが……!
コッティは相変わらず疑わし気な視線を僕に送ってくるし……友情って儚いなぁ!
「君たち、この男に酷いことされていないでござるか?」
ドストレート!
「え~? 別にされてないよぉ~♥」
「(ボソッ)……私たちが来るのを知ってて、お菓子用意してなかった……」
そしてキリカちゃんは結構根に持ってるし。仕方ないじゃん、子供も食べれるようなおやつなんて常備してないよ……。
……酷いことって言えば、むしろ僕の方が酷いことされてるような気もするけどね。初対面の時とかフルボッコにされたし。
「これからね、貞雄兄ちゃんが好きなもの何でも買ってくれるんだってぇ~♥」
「…………」
「待て、コッティ。その手を下ろせ」
再度スマホに手を掛けようとするコッティを抑え込む。
そしてキルヤ君? さりげなく『何でも』とか要求を拡大させないでくれる?? 僕、そんなお金ないよ???
「誤解だ。僕は無実だ」
「……ヤっちまったヤツは、皆そう言うのでござるよ……」
んなことはないでしょ。冤罪かけられた人だったら絶対言うよ。
……いや確かにヤったやつも言うだろうけどさ。
「貞雄兄ちゃんのお友達? の人さぁ~、本当にボクたち仲良しだよ?」
「(ボソッ)……サダオは…………うん……嫌いじゃない、かも……」
小学生ズの優しさが心に染みる……!
そして、どうしてこんなに懐かれているのか、さっぱり僕には心当たりがないのが気になるところだけど。
コッティに僕の言葉は届かない――ならば、子供たちの声が届きさえすれば……っ!!
「この前も、皆でいっぱいアオカンしたんだよねぇ~♥」
「(ボソッ)……あんな激しくて長いアオカン……初めてだった……疲れた……」
…………どうやらダメみたいですね。
「貞雄氏――罪を償う時が来たようですな」
「だから違うって!?」
ヤリ用語のアオカンなんだよなぁ……。きっと、ランク試験後のトウ横キッズたちとの戦いのことを彼らは言ってるんだろうけど。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
……その後、必死に弁解をして何とかコッティの誤解は解けた――と思う。
少なくともスマホはポケットに戻してくれているし、大丈夫……だろう、多分。
「二人とも、夜ご飯もあるんだから買いすぎちゃだめだよー」
「わかってるよ~」
「(ボソッ)……お残ししたら、怒られる……」
僕たちはコッティと一緒にコンビニまでやって来た。
コッティ的には念のための監視……なんだろうけど。
僕としてはコッティにも彼らのおやつ代を払ってもらおうという心積もりではある。それと、時間があるようなら彼にも一緒に遊んでもらいたい……僕一人では色々と間が持たないし、コッティ的に僕が信じ切れないというなら『監視』してもらえばいいし。
きゃっきゃとしながらおやつとか飲み物を選ぶ二人を見送る。
……なんだかんだで、あの子たちもまだまだ子供だよなー、なんてほっこりするね。
で、そのまま買い物しつつ軽くコッティにキルヤ君たちのことを改めて説明する。
流石にキルヤ君が男の子だということには驚いていたみたいだけど。
それから、キルヤ君たちにも改めてコッティのことを紹介。
割とすぐに打ち解けることができ、無事に僕の思惑通りコッティも連れ込むことに成功。
4人で夕方くらいまでゲームしたりして遊んで、暗くなる前に彼らは帰って行った――もちろん、最寄りの駅までは僕たちが送って行ったけど。
「疲れた……」
「激しく同意でござる……」
二人が電車に乗って帰ったのを見届けてから、僕らは揃って息を吐く。
いやー、小学生舐めてたわ。これがそこまで距離感が近くない子なら互いに遠慮もあってそうでもないんだろうけどねー……キルヤ君たち、距離詰めるのめっちゃ早いからなー……。
……じいちゃんばあちゃんが孫が遊びに来て帰った後に、どっと疲れが出てくるというのがよくわかる。
子供は可愛いけど、これが毎日続くとなるとやっぱり大変だよね。親は本当に偉大だ。
「コッティも助かったよ。これ、僕一人だったら身体がもたなかったわ」
ゲームやってるだけなら、と言いたいところだけど、そのゲームも延々と続くしね……。
コッティが割とゲーム上手いおかげでより白熱しちゃった感はあったが、まぁキルヤ君たちも楽しんでくれたみたいだし良しとしよう。
「夜ご飯とかどうする?」
「あー……特に考えてなかったでござるが」
「じゃ、適当にどっか入って食べようか」
何気にコッティも僕の部屋の近くに住んでいるので、時々予定が合えば一緒にご飯を食べたりする仲なのだ。
今日付き合ってくれた礼でおごる、ということも頭の中にないわけではないが……いやそもそもコッティが僕のことを妙に疑わなければ『監視』する必要もなかったし、一緒に遊ぶのを拒否れたわけだし……。
……うん。友達である僕を疑った罰だ。おごりはなしだ。
コッティも否はないようで、適当に僕らは駅近くにある店で食べることとした。
「それにしても、貞雄氏がヤリサーに馴染んでいるようで何よりでござる」
「なんだよ、急に。
……まぁ思っていたのとは違かったけど、馴染んではいる……のかな?」
「うむ。高校の時のように楽しそうに見えるでござるよ」
「そっかぁ」
なんだかんだで部活とかに打ちこんでる時って楽しいもんね。
……輝いているとは思うんだけど、なぜかモテないんだよなぁ……。
「
「あー、まぁね……」
姫先輩、
キリカちゃんは――まぁ数に含んでいいかは微妙なところかな。本人に言ったら怒られそうだから黙っておくか。
「ただ、小学生はいかんでござるよ。Yesロリータ、Noタッチでござる!」
「わかってるよ! というかそんな趣味ないよ!?」
しかも片方は男の娘だし。
……
…………あ、でも。ふと気になったことがある。
「――ところでさ、男の娘でも童貞卒業ってしたことになるのかな?」
もちろん、実際にはやらないよ?
コッティはふっと軽く笑うと――
「ポリスメーーーーーン!!!!!」
「やめろ!? 冗談だって!!」
冗談だよ?
……ほんとだよ??
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