27本目「認定! ランク試験終了と貞雄が得た物!!」
採点が終わった後、僕たち受験生は一人ずつ別部屋で簡単な面談をした。
本当に簡単な面談で、『ヤリを始めてどれくらいか』『ヤリは楽しいか』とか……半ば自己紹介というか雑談というか、そんな感じだ。
面談をしたのは初対面のおじさん職員だったけど、質問内容もあって特に緊張せずに済んだ――流石にこの面談で合否に関わるとは思えないけど……。
「皆様、本日は本当にお疲れ様でした!
これにてランク試験は終了となります!」
全員の面談が終わり、一部屋に皆が集まったところで碧さんが晴れやかな笑顔でそう告げる。
「試験は全員合格です。おめでとうございます!」
やさしいせかい。
……まぁ何となくそんな気はしてたけどねー。
多分だけど、試験内容で配点が高いのは第三と第四の試験だったんだろうな……。
最初の長距離走なんて無茶苦茶だったし、的当てなんてランクFの試験にしてはハードルが高すぎだったと思う。
心配だった
「それでは合格者の皆様に『ランサー
名前を呼ばれた方はこちらへ来てください」
一人一人に『ランサー証』が配られる。
……今度はランサーなんだー……ほんと名称が安定しないなー……。
「
「あ、はい」
「おめでとうございます。
……今後も期待していますよ♪」
「は、はぁ……」
気のせいだろうか、妙に碧さんに気に入られているような気がする。
それはともかく――
受け取った『ランサー証』は、まぁ特に変なものではない。クレジットカードくらいの大きさで、デカデカと『F』が描かれている。
これがランクアップしたら変わるのかな? それとも新しいカードをもらえるのだろうか?
ま、それはいずれわかることか。
「一点、注意事項がございます」
全員にカードを配り終えた後、碧さんが少し声のトーンを落として言う。
「原則として『ランサー証』の再発行には別途料金がかかります。
ですので、紛失・盗難にはお気を付けください」
ふーん? まぁそりゃそうだよなって感じではある。
再受験とか言われなければそれでいいかな。
「『ランサー証』があれば、各地のギルド支部の施設を利用することが可能です」
あの謎酒場とかかー……。
他にも練習場とかも使えるようになるのかな? だとしたら、練習場所の確保が難しい人とかは助かるかもね。
僕らは……大学からこっちに来るのも面倒だし、ダメな時はダメで諦めるかもなー。
その他いくつかの注意事項や説明があったが、特筆すべき点はない。
「説明は以上となります。
皆さま、本当におめでとうございます!」
碧さんの再度の祝福を受け――僕の初めてのランク試験は無事終了したのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さーて、無事に合格したことだし……そっか、先輩たちに連絡しておくか」
スマホを取り出してグループチャットに送信。
すると、すぐに通話がやってきた。
相手は――姫先輩!?
「も、もしもし、姫先輩!?」
びっくりした……まさか姫先輩から直接連絡が来るとは思わなかった……!
『もしもし。
ふふ、合格おめでとうございます、貞雄さん』
「あ、ありがとうございます……!」
『それで――今どちらにおられますか?』
「え? まだギルド支部の中ですけど……?」
『……
では、このまま御茶ノ水駅へと向かっていただけますか?』
「へ?」
ちょっと予想外のことを言われて驚いてしまった。
御茶ノ水なら秋葉原の隣の駅だし、歩いて行ける距離ではあるけど……このビルからだとやっぱり秋葉原の方が近い。
一駅乗って行けばそれで済むし、なぜ姫先輩が御茶ノ水へと向かえと言っているのか意図が読めない。
――が。
「わかりました! 御茶ノ水駅行きますね!」
姫先輩の言葉を疑うなどという不敬は犯せない。
たとえここから新宿駅までだろうとも、姫先輩が歩けというのなら僕は歩いていってみせよう!
『よろしくおねがいしますね。
……貞雄さん、お気をつけて』
「はいっ!」
ここからだと……15分くらいかな? 道は知っているので大丈夫だ。
御茶ノ水駅に姫先輩が待ってくれているのかな?
とにかく向かうか。
「あ、貞雄兄ちゃん♥ 帰っちゃうの~?」
「キルヤ君たちか。
うん。サークルの皆が僕の合格祝いをしてくれるんだ。なんでか御茶ノ水駅に来てって言われたけど……」
「そうなの? ボクたちも行きたい! ねー、キリちゃん?」
「(ボソッ)タダ飯……悪くない……」
「えー……?」
大丈夫かなぁ……と思いつつ、再びグループチャットで訊ねてみると、すぐに『OK』が返ってきた。
ただし、『保護者に許可を取ること』と当然のことも書かれていた。
そのことを伝えると、キルヤ君たちは元気よく『おじいちゃんに聞いてくる!』と駆けだしていった。
……しょうがない。ちょっと待つか。
待つこと数分。
キルヤ君たちが戻って来た。
……が、なぜか会長と碧さんまでやって来た。
碧さんはともかく、会長とかめっちゃ緊張するんだけど……。
「童妙寺よ、孫たちを頼む。帰りには迎えをよこす」
「は、はい……」
良かった、流石に会長は着いてきたりはしないみたいだ。
キルヤ君たちは少なくとも姫先輩とは知り合いだし、もしかしたら本多先輩辺りも知ってるのかもね。
……子供たちを連れて行くってことは責任重大だ。気を引き締めていこう――特にキルヤ君は微妙にトラブルメーカーだしね……。
「童妙寺様!」
「? どうしました、碧さん?」
「あ……いえ」
「??」
ずっとにこやかだった碧さんだけど、何か言い淀んでいるような感じだ。
……ま、まさか僕に惚れたとか!?
…………自分で言ってて虚しくなってきた……。
「――これからもがんばってくださいね!」
「はいっ」
が、最後には笑顔でそう言ってくれたのだった。
「じゃ、キルヤ君とキリカちゃん。御茶ノ水駅までいくよ。
……あちこち歩き回ってはぐれないようにね。特にキルヤ君!」
「わかってるよ~」
「(ボソッ)お腹空いた……タダ飯……」
小学生二人を引き連れ、僕はボウケン者ギルド東東京支部を経つ。
……色々とあったけど、色々といい経験が積めたと思うし――何よりもランクが取れたのが嬉しい。
こうして、晴れ晴れとした気分で僕は姫先輩が待っているであろう御茶ノ水駅へと向かうのであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「フフフ、
「……申し訳ありません、会長」
「良い。余も、アレは見所があると思っておる。
フッ……危うく口を滑らすところだったわ」
「会長もですか……ええ、わたくしもです。
それにしても会長? お孫さんたちにも伝えなくてよろしかったのですか?」
「――
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