20本目「閑話! 友はかく語りき!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
貞雄氏のことでござるか?
…………ふむ、拙者に貞雄氏について語れと申されるか……。
……個人情報保護法に反することは当然語れぬでござるが、まぁ貞雄氏のことでござるからなぁ……。
まぁ語れるところは語っていくでござるよ。
拙者と貞雄氏との出会いは、高校の2年の時でござる。
クラス替えで同じクラスになったのがきっかけでござるな。
当時、貞雄氏は
……聞き間違いではござらんよ? ナニと聞き間違えたのかは敢えて聞かぬでござるが……。ああ、貞雄氏関連ならば致し方なしやもしれぬ……。
そう、貞雄氏はテニス部だったでござるよ。同好会ではなく、部活でござる。
なにゆえテニス部なのか?
……実は貞雄氏に聞いたことがあるでござる。
彼曰く、
「テニス部ならモテるだろう!?
高校でダメでも、大学でテニサー入ればモテまくるに決まってる!」
とのことだったでござる。
……彼の純粋な瞳の前に、拙者は説得を諦めたでござるよ……。
このことからもわかる通り、貞雄氏の原動力は『モテること』――ぶっちゃけて言えば『性欲』でござる。
おっと、肝心なのはここからでござる。引かずにもう少し聞いて欲しいでござる。
貞雄氏がテニスをしていたのは『モテたい』という動機からでござったが――困ったことに、彼は
どういうことか?
…………貞雄氏、ああ見えて高校男子テニス・シングルスでインターハイ準優勝なのでござるよ。これは立派な実績でござろう?
先のことを話す前に、もう一つ貞雄氏について拙者の思うところを語らせて欲しいでござる。
気付いている方も多かろうが……貞雄氏、言葉を選ばずに率直に申せば――『バカ』なのでござる。ただ、決して悪い意味だけではござらん。
彼は『バカ』なので、時々
そう――高校のテニス部の時も、『モテたい』という本来の目的から逸れて、ひたすらにテニスに打ちこんでいたのでござる。
本人は『モテたい』ということを完全に忘れたわけではないのでござろうが、口では申していても
さて、先ほど拙者は貞雄氏のことを悪い意味ではなく『バカ』だと評したでござるが、その本質についても触れておくでござる。
要は……貞雄氏は驚異的な集中力を持っている、と言えるでござろう。
あまりに一個のことに集中してしまうが故に、元々の目的を忘れてしまうような『バカ』に見えるということ、と拙者は考えているでござる。
モテたいがためにテニスを始め、テニスを上達させるためにのめり込んで周囲を見ず、なぜかモテないと思って首を傾げている――
ははは!
ご理解いただけたでござるか?
その通り、貞雄氏はモテないわけではないのでござるよ。
彼はモテたいがために始めたテニスに集中する余り、女子のことが逆に目に入らなくなっていただけなのでござる――『モテたい』という願望が『テニス』とイコールで結ばれてしまったがために、他が目に入らなくなってしまったのでござる。
これを『バカ』と言わずにどう言えばいいのか……拙者には相応しい言葉が思い浮かばぬでござる。
はぁ……実際、彼のことを好ましく思う女子もいたはずなのに、事あるごとに『何で僕はモテないんだろう?』などと問われる身にもなって欲しいでござる……もう最後の方は拙者も含め、友は皆スルーしていたでござるよ……。
そして貞雄氏の『バカ』はその後も続くでござる。
高校からテニスを初めて、努力一本で実力をつけていた貞雄氏の成績……想像つくでござろう?
壊滅的だったでござる……幸い、進級できる程度の成績は維持できていたでござるが、進学は絶望的でござった……推薦という道もあったのござろうが……。
あまりにも酷かったため、拙者思わず言ってしまったでござる。
『ヤリ学には伝説のヤリサーがあるらしい』
と。
それから何が起こったかはもう理解いただけてるでござろう?
……貞雄氏、『伝説のヤリサー』に入るために今度は勉強に集中しだしたでござるよ。
その結果は――言うまでもござらんな。彼がヤリ学生となっていることが全てでござる。
『なんとかとバカは紙一重』と申しますな。
……ああ、貞雄氏に限っては、この言い方で合ってるでござるよ。
なんせ、基本的には『バカ』寄りでござるからなぁ……友に対して『バカ』とはなんだ、とお叱りを受けそうでござるがな。
けれども、ひとたび『スイッチ』が入ると――疑いようもなく『なんとか』の方に切り替わるのでござる。
敢えて『なんとか』と呼称しているのは、先のテニス部の時からわかる通り……集中していること以外には『バカ』になってしまうからでござる。
進級ギリギリ・赤点スレスレだった人間が、たった半年足らずで我が国の最高難易度の大学に一発入学……普通に出来ると思うでござるか?
――貞雄氏はそれがやれてしまうでござるよ。
ああ、貞雄氏について結局何が言いたいのか? でござるが……。
彼が集中しだすと物凄いですぞ、ということでござるな。
……類稀な能力を持っているが故に、本人が一番望む女子との接触ができないというのは不憫に思うでござるがなぁ……。
けれど――彼が集中するものに理解のある、ある意味では同じような『なんとか』な女子がいれば……。
おっと、拙者の語りはこの辺りでよろしいでござるか?
……ふむ、お疲れ様でござる。拙者も思いがけず熱く語れて楽しかったでござる。
貞雄氏は誤解されやすい御仁でござるからなぁ……友として理解してくれる方が増えてくれれば良いな、と常々思っていたでござるよ。
さて、貞雄氏について語るという任は果たしたので、拙者への報酬をいただきたく存じますぞ。
我がアニ研では人材が不足しているでござる。
なに、そのまま入会しろとまでは言わぬでござるよ。
ただ数日ほど、徹夜で手伝っていただければ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます