第3部「激闘! ランク試験!!」
21本目「挑戦! いざボウケン者ギルドへ!!(前編)」
「そろそろランク取得をしてみるか?」
本多先輩のその言葉に、僕は少し躊躇ったものの頷いた――
姫先輩からヤリマン狩りの元凶と思われる
ついに僕のランクについての話がやって来た。
ここまでの間、そんなに長い期間があったわけではないけど決して短い期間でもない。
僕は自分の槍を手に、先輩たちの指導の下、槍の練習に励んでいた。
それなりに基礎は学んだし、基礎体力もついてきているとは思う――高校時代、部活を引退してから半年以上のブランクがあったので元に戻ったかはまだ微妙だけど。
……でもなぁ。流石に姫先輩は当然のこととして、本多先輩や他の先輩に勝てる気がしない。
そんなのは当然のことなのはわかっているけど、ヤリマン狩りという脅威が迫ってきている以上悠長にしていられないと気も逸っている。
おそらく本多先輩は僕のそんな気持ちを察していたのだろう。
「今の貞雄なら、ランク試験も突破できるだろう」
「そ、そうですかね……?」
「うふふ♪ わたくしも太鼓判を押しますわ。自信をお持ちになって、貞雄さん」
ひ、姫先輩にまで言われたらなぁ……。
どっちにしてもヤリサーを続けるならランクは取っておきたいのは確かだ。履歴書はまぁどうでもいいけど……。
「ランク試験ってどんなことするんですか?」
「貞雄さんの場合は最初のランクですから……確か筆記試験と簡単な実技だけですね。
実技と言ってもまだランパ形式ではなく、ヤリの基礎動作を確認するくらいですが」
なるほど。
同じ受験者同士で
……この先ヤリマン狩りとの戦いで立派な戦力になりたいと思っている以上、自信がないからで対人戦を避け続けるわけにはいかないのはわかっているけど。
「筆記試験も簡単だからな。
部室に過去問もあるし、軽く勉強していけば問題ないだろう。
むしろ問題は――金だな」
「お金ですか? やっぱりかかるんですね」
「そりゃあな。まぁおまえの受けるランクだったら……確か今は受験料5000円と登録料1000円だったな」
計6000円かぁ……マイ槍と合わせてやっぱりそこそこ痛い出費だなぁ……。
「登録料自体は最初の一回だけだが、ランクを上げるごとに受験料はかかるからな。まぁ急いでランクを上げずとも良いから、最初のランクだけ受かれば良いだろう」
「はぁ……」
「それでは、これからは貞雄さんの試験対策ですね♪」
「よ、よろしくおねがいします……」
SランクとSSSランクがいれば、試験対策はばっちりだろう。多分。
むしろ不安なのは筆記試験の方かなぁ……槍界隈の常識はぶっ飛んでるからなぁ……。
そんなこんなで、サークル活動は僕のランク試験に向けての対策が中心となったのだった。
……姫先輩と本多先輩はともかく、他の先輩はそれでいいのか……?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時間はあっという間にすぎてゆき、ついにランク試験当日となった。
事前に申し込みは完了している。
後は会場へと向かって試験をし、合格したらお金を払って終わりだ。
試験対策は……まぁ大丈夫だろうと思う。
腐っても最難関大学に合格したばかりだ。いっちゃなんだけど、最低ランクの筆記試験くらいなら暗記だけでどうにでもなるレベルだったと思う。
実技の方も、姫先輩たち槍の『達人』の指導のおかげで自信がついた。
「えーっと、何も皆で見送りに来ないでも良かったのでは……?」
昼12時。会場に向かうため電車に乗ろうとしていたのだが、そこにサークルメンバーが勢ぞろいしたのだ。
そ、そんな仰々しい見送り……逆に不安になってくるのだけど……。
「まぁまぁ、折角だしいいじゃないか。
それより貞雄、忘れ物はないな?」
「あ、はい。大丈夫です! 本多先輩に言われた通り、マイ槍も持ってきてますし」
槍のランク試験も昨今の電子化の波に乗っているのか、スマホで申し込み→電子受験票という流れになっているので、スマホさえ忘れなければ問題ない。
念のため筆記用具も鞄に入れているし、財布の中身も補充済みだ。
そして、マイ槍も持ってきている――人にぶつけないように気を付けないとね。
後は持っていかなきゃならないものは……特にないかな? 多分。
「でも槍は持っていかなくてもよかったんじゃないですかね? 試験のサイトでは会場で貸し出すってありましたけど」
ちょっと解せないのはマイ槍の件だ。
受験申込の時にサイトを見ていて、試験に使う槍は会場で用意するとあった。
なのに本多先輩はマイ槍を持っていけと僕に言った……先輩の言うことだし、と素直に持ってきたけど。
「……あー、まぁ自分のヤリを使ってはいけないという規則でもないし、早く慣れるためにも……な」
「……何か隠してません?」
どーも怪しいんだよなぁ……。
珍しく本多先輩の言葉もキレがないような気がするし。
「あ、そろそろ僕の乗る電車が来ますね。
皆さん、見送りありがとうございました! ランク試験、絶対受かってきます!」
僕の乗る電車が間もなく到着する、というアナウンスが聞こえて来た。
そろそろホームに移動しないと拙い。時間には余裕をもってるけど、電車遅れとか発生したら嫌だしね。
「貞雄さん! ランク試験が終わったら――」
「姫!」
姫先輩が何か言おうとしたのを、本多先輩が鋭い言葉で止める。
……え、マジで何か隠してるようにしか思えないですけど……?
「……ランク試験が終わったら、連絡してくださいね」
「お、おう。そうだな。ちょうど夕方くらいになるだろうから、祝いの席を設けよう!」
「は、はぁ……えっと、それじゃ行ってきますね」
何か微妙に納得いかないような気もするけど……とにかく電車が来てしまうので、僕は皆と別れてホームへと向かって行った。
まぁ、お祝いしてくれるっていうのは素直に嬉しいかな。
――後は僕がちゃんと受かることだけだ。
よし、がんばろう!
僕は気持ちを切り替えて試験会場へと向かうのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうした、姫?
「そう……でしょうか?」
「おう、いつもの姫ならもっとスパルタじゃないか」
「そ、そんなことは……ないですよ?」
「そんなことあるさ。姫、さっき
……ふっ、どうやら俺が思っている以上に姫は貞雄のことが気に入っているようだな」
「…………」
「ははは、そう膨れるな。俺としては喜ばしいことだと思っているぞ。
なーに、心配無用だ。貞雄なら乗り越えるさ、今回の『試練』をな」
「そうですね……貞雄さんを信じましょう」
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