4本目「開演! 春の新歓ランパ!!(中編)」

 『ヤリサー』だと思ってたら『槍サー』だった。

 何を言ってるかわからねーと思うが……いやいいや。何言ってるかはわかってるし……。




「本多先輩! 話が違いますよ!?」


「おう? なにがだ?」




 …………あれ? よく考えたら、本多先輩は特に嘘ついてないな?




「えーっと…………『乱パ』じゃないんですか!?」




 そうだ、まずそこからだ。

 ここから始まるのは、どう考えても僕の期待する乱パ――ぶっちゃけちゃうと乱交パーティーではないだろう。ここから始まったら逆にびっくりする。

 僕の問い詰めに本多先輩は全く動じず。




「おう、ランパだぞ?」


「乱パって、一体何をするものかわかってるんですか?」


「おう? 当然だろう」




 ぬぅぅぅ、この微妙に話がかみ合わない感よ……!

 いや、質問を変えよう。




「先輩――『乱パ』とは何の略かわかりますか?」


「? の略に決まっているだろう?」




 ――Oh……。近いけど違う……。




「そうか、説明が足りなかったか。

 ランパは俺たちヤリサーの面々の交流会――いわばランス社交場パーティーのことだな。

 まぁ実際にやるのは、いわゆる『試合』みたいなもんだが」




 じゃ普通に試合って言えよ!!




「では、姫先輩の『乱交がすごい』というのは……?」


「ランス攻撃のことだが?」




 中途半端に日本語と英語を混ぜんなよ!! しかも攻撃だけ日本語にする意味わかんねーし!!

 そういう言語ごった煮にしたワードが通じるの、日本だけだからな!?

 しかも先輩たちが持っている槍の形状――長い柄の先っちょに穂先がついてるタイプだと『スピア』の方が妥当じゃないかな!?




「……姫先輩が『ヤリマン』だというのは?」


槍人ヤリマンだからだが?」




 なんで今度は普通に日本語で『槍』なんだよ!!

 そしてやっぱりごった煮ワードじゃねーか!! せめて『やりんちゅ』とかにしておけよ!!! ……いやそれもそれでどうなんだってのはあるけどさ。

 ……なんてこった。僕は頭を抱えてしまう。

 もう疑う余地もない。

 ここは『槍サー』だ。断じて『ヤリサー』ではない。

 つまりは、ここにいたところで僕の童貞卒業は叶わないということだ……。




「お、早速姫の出番だな」




 このサークル辞めます。

 その一言を告げる前に……というか僕がうだうだと悩んでいる間にも状況は進み続けていた。

 試合ランパに出場する各選手の準備が整い、試合順も決まったのだろう。

 リングの上へと姫先輩がいつの間にか上がっていた。




「! 姫先輩、防具とかつけてないけど大丈夫なんですか!?」




 僕が驚いたのはそこだ。

 手に槍を持っていることを除けば、普段着を来たままの先輩がリング上に立っていた。

 剣道とかなら防具をつけるだろうし、槍も同じかと思っていたんだけど……胴着にすら着替えずに普段着のままだとは思ってもいなかった。




「おう。ジュニアルールでは防具の着用が必要なんだが、シニアルールでは必要ないからな。

 なーに、穂先にスキン被らせているし、そこまで痛くはないぞ」




 ……なんて本多先輩は笑いながら言ってるけど、それでも顔面に当たったりしたら痛いんじゃないだろうか……。

 スポーツチャンバラとかでも、確か防具というか保護具みたいなのがあったはずだし。

 …………いや、もう辞めるつもりのサークルメンバーのことを心配してどうするんだ。

 そう思うのが普通なんだけど……。




「……」


「…………綺麗だ……」




 リングの上に一人悠然とたたずむ姫先輩を見て、僕は正直な想いを口にしていた。

 槍が異物だというのに、そうは思えないほど自然体で彼女は立っている。

 それがあまりにも似合いすぎていて――僕は思わず見惚れてしまっていた。




「よく見ておけよ、新人。

 世界レベルのヤリマンのランコウを」




 …………ワードは色々とおかしいけど、確かにここまで来てしまったんだ。

 姫先輩の試合を見もしないというのはもったいない、そう思う。

 サークルを辞めるのはそれからでも遅くない――なんて決断をしてしまうのだった。

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