3本目「開演! 春の新歓ランパ!!(前編)」

 そんなこんなで、いよいよ待ちに待った『乱パ』の当日がやってきた!




「ふふふ……準備はばっちりだぜ!」




 わずかな時間ではあったが、ばっちりと準備はしてきた。

 先輩たちは準備の必要もないし気楽に参加してくれていい、と言ってたけれど、ここでヤる気をアピールしておかなければ!

 でないと、折角の『乱パ』だというのに見学だけで終わってしまいかねない。


 『ヤリサー』に入会してから今日までの間、僕は一人暮らしの自宅に引きこもり勉強に集中していたのだ!

 映像資料AVの視聴はもちろんのこと、参考文献厚い本・薄い本を読み漁ったり、ネットの資料エロサイトを漁り知識を蓄えた。

 瞑想イメージトレーニングもばっちりだ!

 もちろん、寝不足や体調不良なんてもっての他だ。

 『乱パ』に備えて栄養補給亜鉛サプリもしていたし、睡眠時間もばっちり確保している。

 今日の僕は完璧と言ってもいいだろう。




「おう、来たな、新人」


「本多先輩!」




 で、伝えられた時間に伝えられた場所へとやってきた僕を出迎えたのは、角刈りマッチョの本多先輩。

 ……流石に今は服を着ているが、はちきれんばかりの筋肉は隠せていない。

 それはともかくとして……。




「ランパの準備は終わってるからな。お前は気楽に見学しててくれりゃいい」


「は、はぁ……」




 …………ただ、妙に違和感があるんだよなぁ……。


 違和感その1、場所はということ。

 違和感その2、時間がちょっと早い。

 現在時刻は15時……春先だし、当然まだまだ明るい時間だ。

 ……こんな時間から、大学の体育館で……? いや、『伝説のヤリサー』だし僕の想像の及ばない事情がある……?

 とここまでの違和感は飲み込んで来たけれど……。


 違和感その3。

 集まっている人たち――他大学の『ヤリサー』の面々だろう――が、皆して何やら釣り竿? のような長い、カバーに包まれたものを持っていることだ。

 『道具』にしちゃ長いし大きくね? どういう用途なのかさっぱり想像もつかない……。

 僕の知らない『道具』なのだろうか? 今までの映像資料ではみたことがないものだ。

 後は違和感その4――とまでは言えないかもしれないけど、集まっている人を見ると圧倒的に男が多い。

 …………違和感というか嫌な予感というか……。




「あら、童妙寺どうみょうじさん。ごきげんよう」


「! 姫先輩!!」




 と、僕の後ろから天使の声が!

 振り返るとそこには、颶風院姫燐先輩が当然いた。

 ……彼女も他の人が持っているのと同じ、謎の長物を持っているのにはちょっと驚いたけど……。




「……ほら、本多さん……童妙寺さんまで言っちゃったじゃないですか」


「ははは、『姫』は『姫』なのだから間違っていないだろう?」




 どうやら先輩は『姫』と呼ばれるのはお気に召さないようだ。

 天使でありヤリサーの姫でもある先輩なんだし、名前にも含まれている文字なんだからこれ以上ない呼び名だと思うんだけど……本人が嫌がるようなら辞めた方がいいのかな?




「新人、気にするな。姫は照れているだけだからな」


「は、はぁ……」


「んもう……わたくし、『姫』なんて呼ばれるような人間ではないのに……」




 ふくれっ面も可愛すぎる……!

 本人は気にしているようだけど、『颶風院先輩』と呼ぶよりも『姫先輩』の方がしっくりくるんだよな。

 姫先輩もそれ以上強く抗議するわけでもないので、とりあえずはこれからもそう呼び続けることにしよう。




「さて、本日の主役二人も来たことだし、俺たちも会場に行くか。そろそろ始まるだろう」




 姫先輩と僕 (新人)のことだろう。

 ……何か違和感はあるんだけど、僕たちはとにかく会場である我が校の体育館へと入って行った――







◆  ◆  ◆  ◆  ◆







「…………これは……」




 何の変哲もない我が校の体育館内に異物があった。

 『リング』だ。

 ボクシングとかのリングみたいなのがでん、と体育館中央に置かれていた。

 明らかに異物だ。

 ……え、なにこれ?

 あのリングがベッドの替わりとか?? お立ち台的な感じで?




「おう、準備は完了だな」


「「「うぃーっす」」」




 体育館の一画にはうちの『ヤリサー』のメンバーがいた。

 ……まぁ僕は姫先輩以外だと、本多先輩と植井先輩くらいしか名前は知らないんだけど。

 で、全員が揃って長物を手に持っていた。




スキンはちゃんと被せておけよー」


「「「うぃーっす」」」


「うふふ。それではわたくしも準備いたしますね。

 本多さんは今回は参加なさらないのですか?」


「おう。俺は今回は監督兼新人への解説係だな」




 そんな会話をしながら、姫先輩もカバーの中に入っていた長物を取り出す。







 …………それは、どう見ても『槍』だった。






「あのー……本多先輩?」


「おう、どうした?」


「その、ここって……『ヤリサー』ですよね?」


「『ヤリサー』だが?」


「……姫先輩たちが持ってるのって――『槍』ですよね?」


「うむ、『ヤリ』だが?」




 …………僕の勘違いであって欲しかった……。

 いや、ある意味僕が勘違いしてたのか……?







 (性的な意味で)ヤリサーじゃねぇ。

 槍サーだ、これ。

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