2本目「登場! ヤリサーの姫!!(後編)」
『美人』『美少女』――なんと陳腐な言葉なのか。
言葉で語り尽くせぬほどの美しい人が、そこにいた。
今までも『クラスで一番可愛い子』とか、『学年で一番可愛い子』とかはいたし僕も実際にそう思うような子たちだったけど、この辺は好みもあるだろうし満場一致でそうと決まるわけではない。
でも、彼女は違う。
きっと、誰もが――疑問の余地もなく、『彼女が一番』と即答するであろう確信があった。
「――このサークル、入会します!!!!!」
迷うことなく、僕は彼女に向かって宣言した。
「まぁ、入会していただけるのですか? 嬉しいです」
おっとりとした喋り方で、ぽん、と手を合わせる仕草も美しい……。
「おう、入会か。なら一応書類を書かないとな。
「うぇい? PCん中じゃね? 印刷しないとだけど……とりま名前と住所抑えとけばいいっしょ」
男たちがなんやかんやしている声は耳に入らなかった。
僕の目も耳も鼻も、意識全てが彼女に向けられていた。
「わたくしは
「あ、ぼ、僕は、童妙寺貞雄です!」
「童妙寺さんですね。これからよろしくお願いいたします」
と、深々と丁寧に頭を下げる。
慌てて僕も頭を下げた。
――これが、僕と『ヤリサーの姫』こと颶風院姫燐との出会いだった。
この出会いは運命だ――彼女との出会いによって、僕の灰色だった
……そう思えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「歓迎するぞ、新人!」
「あ、はい……」
颶風院先輩は部室に置いておいた荷物を取りに来ただけだったらしく、すぐに去って行ってしまった。
残されたのは僕と角刈りマッチョとウェーイ系売れないホストの3人。
……颶風院先輩がいないんじゃここにいたってしょうがないけど、出て行くタイミングを完全に見誤ってしまった形だ……。
「俺は3年の本多だ。一応、このサークルの会長をやっている」
「あ、はい。どうも……」
角刈りマッチョはそう名乗る。
「俺は同じく3年の植井。よろ~」
ウェーイ系売れないホストも同じく名乗る。
そうか……どちらも3年生か。
――ってことは、約1年間の付き合いか。
あの天使……颶風院先輩は何年生なんだろう?
先輩って勝手に思ってるけど、もしかして1年生だったりするのか? ……いやそれは流石にないか?
「しかしいいタイミングで入会したな、新人!」
「いいタイミング、ですか?」
「おう。今週末、早速『ランパ』があるからな! 予定空けとけよ!」
ランパ…………乱パ!? いきなり!?
すげぇ……流石大学のヤリサーだぜ……!!
「そ、それって、颶風院先輩も参加するんですか……?」
ぶっちゃけ、彼女がいないんじゃ参加する意味ないし。
と思いつつ聞いてみると、
「おう、当然『姫』も参加するぞ! むしろ主役だからな」
期待通りの答えが返って来た。
『姫』――姫燐だから姫か。
……あるいは、彼女が唯一の女性会員で皆から『姫』として扱われているからという可能性もあるが――いやヤリサーだしその可能性は考えたくないな……。
「期待するといい。姫は世界レベルのヤリマンだからな!」
「世界レベル!」
あ、あの
……正直、
「僕が準備しなきゃいけないことってありますか?」
手ぶら参加でいいのだろうか?
後は会費とか?
……まさか
「おう? 新人だしなぁ……『道具』とかも何も持ってないだろうしな」
『道具』!
あ、これAVで見たやつだ知ってる!!
確かに何も持ってないけど。
「貸せるほどの備品もないしなぁ」
「ま、今回のランパは新入生にヤリサーの活動を見てもらうって感じだから、見学でいいんじゃね?」
「おう、そうだな。経験者なら即参加というのもありなんだが」
くっ、僕は未経験者だ……!
イメトレは欠かさずしているけど……!
ここで嘘をつくというのもちらっと考えたけど、こういう時の嘘は後々大きな問題になるというのはわかる。
指を咥えて見ているしかないのか……!?
「やる気があるのは結構なことだな」
うっす! ヤる気満々っす!!
「本多っちー、思い出したけど、春の新歓ランパって時間が余れば新人の体験会やらなかったっけ?」
「おう、そういやそうだったな。まぁ今年は他の大学の参加も多いようだし、微妙かもしれながなぁ」
他の大学のヤリサーもいっぱい来るのか!
……これはとんでもないことになりそうだぞ……!
「体験会はやるかやらないかわからんが、新人が特に準備するものはないからそのまま参加すればいいぞ。
それに、見るだけでも十分楽しめることは俺が保証する」
見るだけで楽しめるのか!
いや、よく考えたらAVも見るだけだな!!
……悲しい。
「特に『姫』のランコウは凄いぞ」
「乱交!」
「おう。お手本のような素晴らしく激しいランコウだ。俺も学ばせてもらっている」
……男が?
一瞬、この
っていうか、この人いつまで裸でいるんだろう……そもそもなぜ裸? 答え怖くて突っ込む気にはなれない。
「とにかく、気楽に参加してくれればいい」
「は、はい!」
見た目はヤバそうだけど、悪い人たちではなさそうだ。まだ会ったばかりだけど。
……何はともあれ、僕は念願の『伝説のヤリサー』に入会することができたのだ。
そして、すぐに乱パ……。
…………流石大学だ、僕の想像を軽く超えてくる……!
期待を胸に、僕は週末の乱パを待つのであった。
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