夕涼み
『夕涼み』
沈む夕日に、私の影が遠くへ伸びていく
いっそどこかへ行ってくれやしないかと
思う私を、私が笑った
私が言った
――私はどこへ行くのでしょう
私が答えた
――どこかへ行くほど私は歩んでもいないでしょう
私が言った
――私は何を成すのでしょう
私が答えた
――まだ私は自分のことさえ知らないでしょう
私が言った
――なぜ世界は私に強いるのでしょう
私が答えた
――私が私に強いるからでしょう
私が言った
――私は家族が嫌いです
私が言った
――あなたがあなたを嫌うからでしょう
私が言った
――人を嫌うのはいけないことですか
私が答えた
――人を嫌えるほどあなたは自分が好きではないでしょう
私が言った
――私は私が嫌いです
私が答えた
――私は私を愛しています
夕暮れ
風が吹いた
私が言った
――夕日はなぜ沈むのでしょう
私が答えた
――あなたを涼ませてやりたいからです
▼――『夕涼み』――了
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