朝焼け



『朝焼け』




 熱い眼差しが、うろんな私のひたいを射抜く


 微睡まどろむ街並みを、渇いた靴で走り抜けて

 

 あしたに媚びた偽物たちが


 芽吹いた今日に心を浮かす

 

 

 笑って、笑って、笑って


 笑って生きていこう


 

 本音も病も建前も


 全て抱えて今を


 

 東の空に希望が光り


 南の空に心が宿り


 西の空には未来を想う


 

 北のほうには厳しい寒さと


 傷だらけの〝昔〟があって


 ああやっぱり、私はきっと


 背中に孤独を感じている



 私の虚像が走っている


 手の届かない、ずっと向こうを


 追いかけて、手を伸ばす


 足元に咲いた花さえ踏みつけて



 これでよかったのだろうか


 これでよかったのだろう


 そうするしかなかったのか


 そうせざるを得なかったのだ


 

 笑うのだ


 嫌いな自分を罵るように


 嫌いな世界に溜飲を下げるように


 流れた涙を、決意の襟元でぬぐうように


 

 朝焼けが笑っている


 だから私も笑うのだ


 嘲笑も、嬌笑も、冷笑も


 失笑も、哄笑も、微笑みも


 おんなじくらいに笑って笑う


 

 たくさんの人を見つめるその眼差しが


 たったひとりの私を見つめるその眼差しが


 虚像を写して、影を落とすから


 

 朝焼けが、私を焦がす


 だから私は生きねばならない

 



▼――『朝焼け』――了

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