親子関係

四枚目:ステラをたずねて三千里

 部屋に戻ると、すでに宴会えんかい準備の真っ最中だった。畳用じょうようのテーブルの上には、こひなさんが言った通り、今まで食べたこともない料理が次々と各席に合わせて並んでいる。サーモンの刺身から大きなお皿にきれいに盛り付けられた前菜盛り合わせと鶏肉のあぶり焼きまで、炊き立てご飯とお似合いの料理がほとんどだった。食べる順番を決めることすら難しく感じる。

 僕は、テープルの端っこに座ってレンジジュースを一口啜すすり、後ろの壁に腰をおろした。ちなみにステラは皆に囲まれて思う存分可愛がられいる。あの様子だと、僕がなくても、周りの人が面倒を見てくれるだろうと思い、先に食事を始めた。まず、みそ焼きのステーキ一点を自分の皿に運んだ。表面に薄っすら焼き色がつき、中は生の状態でジューシーな牛肉は口に入れるまでもなく美味しさが目で味わえた。特にソースはつけずに、わさびだけを乗せて肉を噛んだ瞬間、口の中で柔らかい肉質が粉々になった。美味しい。味の感想はそれで充分伝わる。僕は堪らない食欲を解放し、またステーキを自分でお代わりした。

 「パパ、ステラ痛い」

 次に食べる料理をサーモンと大トロの間で迷っている僕にステラが泣きながら抱きついた。僕は理由も知らずにステラの鼻から鼻水を拭いてあげた。

 「この匂いは……ステラ、もしかしてわさびが入った寿司を食べた?」

 辛いわさびの匂いが淡くステラの口の中から漂っている。流石にわさびはまだステラに早いと思いつつ、苦しみから解放させるためにオレンジジュースを飲ませた。

 「もう嫌だ。食べたくない」

 僕が食べようとしたサーモンの刺身をあげても、ステラは顔を横にそらした。わさびが入っていない寿司も、『あつものりてなますを吹く』の言葉のように、拒否して僕の懐に顔を埋めた。ステーキの方は舌だけで味わってまた口を閉じた。

 本当に、困ったものだ。

 「ねぇさん、急用があって今日の定期検査をリスケしたい、とさっき先生から電話がきた。どうする?」

 何かの報告を聞きならこひなさんが一升瓶いっしょうびんの日本酒を持ち込んで隣席に座り、『千光』のラベルがある黒い瓶を開け、ヒノキますの中に立った枝垂桜シダレザクラのグラスにお酒を注いだ。部屋の中にかぐわしいアルコールの香りが放たれ、いだだけで酔いかけた気分がした。落ち込んだステラも匂いに興味を持ち、好奇心が溢れる瞳でテープルの上に上がろうとした。

 「無理矢理に約束を取った方はウチだから来週でも問題ないと伝えておくね」と言い残して枡を天井に持ち上げた。「皆、席について乾杯しよ。今日はウチらの食事会に初めて来客が参加したからもっと楽しく食べよ——、乾杯!」 

 賑やかな雰囲気の中で僕は皿の上にあるサラダを一口食べた。また元気になったステラは謝りに来た姉さんたちに追われ、部屋の中を逃げ回っている。他はカラオケ機器の前に立って仲良く歌を歌っている。とても楽しそうで混沌のディナーパーティーだと、僕はジュースを飲みながら思った。

 「首は、まだ痛かったりする?」

 こひなさんが喋ると日本酒の移り香が仄かに匂わせた。目の半分は恍惚感こうこつかんに浸り、力が抜けた体をテーブルに寄せかけ、僕に向かって優しく微笑んでいる。彼女は、色白の頬が紅潮こうちょうになるまで、かなり酔いがまわっていた。この状態ではとまともな会話を交わすことは難しいと判断した僕は、氷を入れた水をこひなさんに渡した。

 「なァに、気を使ってくれるの?優しいィ——」

 こひなさんは冷たい水を一気に飲み干して、そのままテーブルの上に倒れた。やらかした、と僕は軽く彼女の肩を揺さぶったが、相手から反応がなかった。耳を傾くともう深い眠りに落ちて寝言を呟いる。

 「ねぇさんの体に軽々しく手を出さなしで」酔っ払っても怒った顔は変わらない奈緒美さんがいつの間にか同じテーブルの前に座っていた。「今、居眠りしているねぇさんを狙ったでしょ。このド変態野郎」

 酔っ払った人に真面目に説明してもまともに会話はできない。昔、会社の食事会で小泉さんがビールを飲み過ぎて酔っ払ったことがある。あの状態の小泉さんは悔しい顔で同じ内容の愚痴を一時間くらい繰り返して話した。未だにも小泉さんから聞いた元カレの名前は忘れられない。

 「奈緒美さん、これは誤解です。あくまで倒れたこひなさんの様子を伺っただけです」

 「はァ?そんじゃ、誤解って言ったら、うちの胸を揉んだことがチャラになると思うんかい?」

 「声が大きいです。それと胸の件は奈緒美さんが別に謝らなくてもいいと言いました」

 「いいや、うちは言ってない。嘘までつくなんて、本当に悪い子だね。そうだ。土下座だ、土下座。今すぐ、うちに土下座しなさい。土下座で誠意を見せなさい」

 「分かりました。土下座しますのでどうか落ち着いてください」

 土下座を語り続けた奈緒美さんの声がだんだん曇って来て、涙を見せまいとするかの顔を切なく俯いた。

 「ナオミの胸は小さいから揉んでも感触がしない?」

 何も言ってない、と言い返す前に辞めた。そもそも、突き詰めて言えば、この部屋にいる皆が平気にお酒を飲んで、パーティーを楽しんでいる。ある意味では、見た目は子供でも、精神年齢はその年齢に相応しくじゅくした普通の大人として目に映った。でも、流石に瓶ごと飲む姿は、何回か見ても慣れない光景だ。

 「全部、キミのせいだよ」今度は、奈緒美さんからいきなり責められた。「キミがうちらの平凡な日々を壊した。何できた、何でうちらに君の世界を見せた?永遠に知らない方がよかったのに」

 僕の世界が、奈緒美さんの大切な日常を壊した。と言われて素直に納得がいかなかった。壊す理由も、壊した方法も覚えていない僕は、テーブルの上にあるおにぎりを一つ手で握った。中には鮭はらみが入っていた。

 「奈緒美ちゃん、嫉妬は程々にしな」

 こひなさんの声に驚いてご飯が喉に詰まった。寝落ちたと思ったこひなさんが、テーブルに伏せてぼんやりした横顔で奈緒美を睨める。酔っていた目は元通りに生き生きとして脳裏に深い印象を残した。

 「うえェェェェ、ねぇちゃんに嫌われた。悲しい、悲しくて死にたくなる——」奈緒美さんがせきを切ったように両手で顔をおおかくし、抑えきれない感情に号泣ごうきゅうした。

 今のは僕が聞いても、空しく、冷たく聞こえた。

 「泣かないで、泣かないで」

 序でに眠りから起きたステラも啜り泣き始める。それに狼狽うろたえ、僕はステラの背中を撫でて落ち着かせた。

 「うちもそれ欲しい」と僕の左手をおのれの頭に乗せて自ら撫でる真似をした。どうしようもない状況で隣にいたこひなさんは、無愛想に引き結んでいるが、まなざしにかすかな笑みを交じっていた。女たらしめが、というだ。

 結局、他の女の子たちが来て奈緒美さんをトイレまで連れ去り、ステラは二度寝に落ちた。これで、ようやく僕のテーブルに平和が訪れた。

 「悪くは思わないでくれる?」

 と、こひなさんが話を持ち出した。

 「皆は、今まで四角の部屋に置いてある四角の布団で寝たり起きたりして、目を覚ましたら四角の鏡に映る自分の顔を見ながら、慣れた小手先で昨日と同じ化粧のやり方で毎日を生きてきた。ところである日、四角ではなく、三角や丸の人生を持った炭咲くんとステラちゃんがウチらの世界に訪問した」彼女がジュースが入ったグラスの縁を人指し指でこすった。「その日、華奢きゃしゃな皆の世界は、否定され、壊れた」

 微弱な振動がグラスに伝わり、細い笛の音が鳴りつつ、ひびが入った。単純に指先でこすっただけでグラスが元の形を忘れた。

 「女の子は、認めたくない時に、主体になる存在それを憧れ、そのうち嫉妬する。奈緒美ちゃんを除いて、他の姉妹たちは、炭咲くんを歓迎はしても、あなたに名前は教えてあげない理由も、きっとそれが原因だと思う」

 話が終わってからのちも、相変わらずこひなさんはつくねんとテーブルの向こうを眺めていたし、僕は僕で、そんな彼女をなんとはなしに眺めた。目が合うと照れ隠しに笑い合ったりしたが、どこかが寂しく感じる気がした。

「難しいよね、女子っていう生物は」

僕は食べ切ったおにぎりを皿の上に降ろした。「全くです」

 けだるそうな口の利き方で話を終わらせたこひなの頬に苦笑いがかすめた。

 「こひなさんは強い女だと、思います」

 「ウチが強い?」こひなさんは疑問をていした。「カカシと戦った時のことを話している?」

 僕はしばらく沈黙して、それからとってつけたように咳払いをした。「こひなさんの話通りだと、僕は皆さんに対して気まずい相手です。同じノバナである他人ステラがパパと呼ぶ僕の存在は、相対的に『剥奪はくだつ』された感情を呼び起こすトリガーになると思います。それを、こひなさんは気にせずに僕と会話を続けています。もちろん、隠している本音はそうではないかも知りませんが、少なくても僕にはそう見えます」

 手に入れない憧れの対象は『夢』とは呼べない。眺めるだけで辛い思いをさせる『悪夢』である。奈緒美さんが抱いた苦情くじょうは感染しやすい風邪ウイルスと似ている。症状は同じでも治るタイミングは皆それぞれ違う。その中で、こひなさんは比較的よく耐える姿を見せている。今までの人生は知らないけれども、同じノバナとして尊敬できる心構えを持った人だ。

 「ウチ今、炭咲くんからすごく褒められた?な、なんか照れるなァ……、ありがとう」照れるこひなさんというのはとても珍しいが、小さくぼそぼそと次の話題に移った。「そうだ、炭咲くんもウチらと一緒に共通テストの準備をしない?週明けの月曜日か火曜日に予定が空いていればの話だけど。場所は新宿にある知り合いのカフェに連絡してお願いする。どう?来れる?」

 そう言えばこひなさんは、昨日ガーデンズ学園の受験生として参加していた。ガーデンズ学園の入学条件に歳と身分は制限がない、とは言え、新吉原の娘が共通テストに受けることは、社会的にぎりぎりと論外中の論外として扱われた。当時、花魁の登場がSNS上で盛り上がった理由も今まで裏社会の住民がガーデンズ学園に現れた実例がなかったからである。

 「一人で勉強したんですか?」

 「常連じょうれんさんの秘書にお願いして、色々手伝ってもらった。共通テストの対策用の参考書も買ってもらったり、白花シロバナを第一志望に決めて面接の練習もしたの。案外、テストの成績は他の受験生に比べて高い点数を貰えたと思う」久しぶりに話し相手を見つけたように、こひなさんはペラペラと僕が志望した花道ハナミチを聞き出した。

 「赤花アカバナです。実技試験がメインで行われる花道でシロバナよりハードルが低いです」

 「アカバナだったんだ。トゲの種類を訊いたら、失礼?」

 僕は自分の両腕を前に出して見せた。「特別なトゲではありません。ただの再生力がチートレベルで強い体を持っています。ただここには事情が——」

 ある、と言う直前に、大量の鼻血が畳に流れ落ちて話が途中で止まった。昨日、無理して体を動かしたせいで副反応が出始めた。テーブルにある紙ナプキンで応急処置し、携帯の連絡先から香月の名前を検索したが、突然、電波の受信状態が圏外けんがいと表示された。

 「よくある事ですので心配しないでください。血はすぐ止まります」と相手を安心させて小鼻をつまんで圧迫した。

 出血は中々収まらなかった。鼻に詰めた紙ナプキンが血で赤く染まり、その先からは、小さな血のしずくが畳の上にしたたり落ちた。

 「ここ、電話が使える場所はないですか?」と慌てるこひなさんに向けて訊いた。「こひなさん、外部と繋がる通信機器が必要です。ネットに繋がったパソコンでも大丈夫です」

 「内線はあるけど、新吉原の半径百メートル以内は通信妨害が掛けれているから、外との通信は繋がっていない」こひなさんはすぐ理性を取り戻して対案を出した。「でも、外部に繋がった通路はある。着いてきて」

 眠っているステラは部屋に置いて僕はこひなさんと一緒に廊下を走った。走る途中に止まらない鼻血が廊下を汚しても、気を使う暇はない。壁に囲まれた迷路の先にはブロンズ製の時計針式フロアインジケーターとエレベーターの扉があった。ガラス張りの外扉と蛇腹式の内扉で二重になった扉を手で開けて乗り込み、こひなさんが何も書いてないボタンを押してレバーハンドルを操作した。

 二人を乗せた古いエレベーターは孤高ここう節操せっそうを守り、錆びた機械音が下降した。扉の外は木造の壁になって下の階にあるモノは見れなかった。ついにこひなさんがレバーハンドルを下ろして黒い廊下がある階でエレベーターを停止させた。ここも上で見た廊下と構造的な差分はなかった。

 「さっき連絡しようとした人は、東京都内にいる?それとも関西の方?」

 僕は鼻を掴んで答えた。「花園大学医学部附属病院にいます」

 「名前は?」と問われて、「小児科の香月こうずきモネと言います」と言い返した。名前の情報を聞いたこひなさんは今度は後にある東京地図から病院がある文京区を指で押して再びレバーハンドルを上にあげた。

 「多少は震えるからしっかり捕まって」

 鉄がぶつかる音が耳を塞いでも奥まで差し込まれるように聴こえてくる。不安定そうな状態の中で、僕は片手は安全バーを握り、なるべく壁側に体を密着させた。体感的に五分ほど移動した後、完全にエレベーターが停止してから、外扉の向こうにもう一つの扉が現れた。どこかで見覚えがあるドアだった。僕は心してドアに軽くノックをした。

 「午後は休診です」

 ドアを開け放すと、下着姿の香月さんがいる診察室が出た。新吉原から病院までの所要時間は分からなくても五分で来れる距離ではないことだけはよく知っている。なお、午後の休診日は火曜日だ。新吉原に泊まる間、外は三日が経っている。

 「突然の訪問に大変申し訳ありません。私、新吉原の花魁に勤めているこひなと申します。こちらの炭咲様のお体に異変が生じ、急に訪れることになりました」とこひなさんが丁寧な仕草で頭を下げてまで謝罪を申し込んだ。「お手数をおかけしますが、休診にも関わらず一度だけ診察をお願いしても宜しいでしょうか」

 「えッ、ハルくん?えッ、えェェ?ドアの鍵は閉めたのにどうやって開けた?」

 気まずい挨拶を交わして鼻の状態を遠くで見せてあげた。流石に状態の深刻さを見極めた香月さんは、ハンガーラックから白衣を取り出して机の前に座り、刺々しい顔つきで僕を叱る仕草を構えて待った。

 「怒られそうだね、元々の知り合い?」

 「僕の叔母おばさんです。世話になるのは好まないですが、今は仕様がないですね」

 「家族なのに何故そう言う?」

 しずかな口調で、ほとんど関心もないかのように淡々と言葉をつげた。「借りを作りたくないからです」

 こひなさんは一時間後に迎にくると言い残してドアを閉じた。人の気配が消え、ドアの小さいガラス窓から人々の影が 見え始めた。今更、自分が乗ってきたアレの正体が気になる。

 「何をぼーっとしている?速くここに来て座りなさい」

 厳しい言い方に恐れ、文句を言うまでもなく香月さんの言葉に従って患者さん用の丸い椅子に座った。香月さんはさっそく引き出しの中から鼻血ストッパーを取り出し、赤く膨らんだ鼻の穴に差し込み、小型の冷蔵庫から氷嚢こおりぶくろを出して首の後ろに乗せてくれた。続いて鼻血をサンプル容器に入れて机の上にある顕微鏡けんびきょうで観察をした。

 「あの火災事件はハルくんの仕業?」顕微鏡から目を離してペンライトで僕の眼球を右と左の順で確認した。「それとも偶然が重なった事故?」

 僕は鼻が詰まった声で言い返した。「信じないと思いますが、当日の朝、園内に怪しものが侵入しました。これはあの時の戦いに無理して出来た傷です」

 「つまりハルくんは無関係ってこと?」

 「……よく分からないです。最後に首が斬られて死んだので記憶がないです」

 「嘘ではなさそうだ。首の周りに新しく出来た木炭の傷口は七年前の時と似ている。私はてっきりハルくんがやらかした事件だと思った。あ、余分のお薬は左側の引き出しの二段目にあるから水と一緒に飲みなさい」

 ありがとうございます、とお礼を言って引き出しの中からお薬を探した。まだ販売はされていない試作品しさくひんをピルパックから二個だけ取り出し、お水と一緒に飲み込んだ。お薬の効果は胃袋の中で消化液に溶けるまでの五分後に出る。

 「成子なるこ先生、お疲れ様です。第七研究室に連絡入れて共有ラボのシートに予約が入っているか確認してもらえますか?時間は、今から一時間です。はい、ありますか?確認ありがとうございます。宜しければ、予約できますか?近々のうちに駅前のパン屋さんに新作のスイーツが発売されるようですから奢ります。いえいえ、それでは失礼します」と電話を切ってハンガーから私服のコートを僕の方に投げた。「それを大人しく着てついて来なさい。まだ、さっきのお姉ちゃんが来るまで時間は空いているでしょう?今日こそ精密検査をさせる」

 逃げ場はない、と僕は、受け取ったコートを着て顔はポケットの中にあったマスクで隠した。女性服で個人的には違和感を感じても、人の目には身長が小さい子供が姉さんのコートを着ているように見える。これで、正体が暴かれる恐れは無くなった。

 僕と香月さんは病院の廊下に出て、人の目に届かない道を選んで反対側にある研究棟に向かった。エスカレーターは控えて階段から二階にあるビルの連絡橋まで降りて行った。前回ここに来た時はまだ工事中で利用ができなかった連絡橋が、今日はセキュリテーカードを所持した関係者であれば自由に出入りができるように変わっていた。僕は同行人として訪問シートに名前を書いて一時的に使える出入りカードが発行された。

 「どこに向かってますか?ドクター香月」

 迫力ある声の持ち主が独特な呼び方で香月さんを呼び止めた。密かに後ろから二人がいるところまで歩いて来る人々の所在を把握した。

 「お久しぶりです、虎徹こてつ先生。後、龍崎りゅうざき先生もお疲れ様です」

 「ハロー、今日の午後は休診じゃないんだっけ。研究棟には何か用件でもある?」子供のような雰囲気で挨拶をする男は龍崎の名前で呼ばれた。「嗚呼ああ、分かった。樹の一族に関した研究会が今日だったよね?」

 香月さんは揺れない声で僕を後ろに隠した。「いいえ、研究会は先週行いました。今日は別件で訪れる予定です」

 それを聞いた虎徹の名前を持った男は強く香月さんを壁に押し付けた。

 「誰ですか、この子は。またお金がない患者さんをた場合は、首になると警告したはずです。念のためにお聞きしますが、そのうちに忘れました?」

 威圧的な雰囲気にひるまず堂々と相手の顔に向かって顎を上げた。「研究の目的であれば、たとえ身元不明の患者でも特殊患者診療録SCCに登録して、診療する方針は今年の経営会議で審査まで終わった方針ですが、虎徹先生はそれを誰にも聞いてないようですね。それとも知った上にオレの邪魔をすると言うおつもりでしょうか?文句があればご自分で病院長に言ってください。許可は得ております」

 「そう言い返すと思いました。SCCはまだ小児科に限った方針であり、他の部署には許可が降りていない状態です。これについてはどう説明してくれますか?」

 「俺の部署は診察した患者のデータを研究目的で使用する条件で、上記と同じく病院長に合意を取っています。それとも他に何か別の理由で俺の邪魔をしています?」香月さんは自分より背が高い虎徹をしぼんだように、眼球周囲にしわを寄せてけた。「前にも同じ理由でお断りしましたが、虎徹先生。そんなに俺が好きなら正式に付き合ってあげますよ」

 「調子に乗るな、外道め。お前の家系はいつも出過ぎた真似をやらかして人を困らせる。上の香月は、結局のところ、犬死と同じ死に方で亡くなり、お前も近いうちに後を追うだろう。だけど、この病院に恥をかかせる真似は許せない。数年前にお前の姉が犯した犯罪でどれほどの同僚が同じ犯罪者扱いにされたか、もう一度思い出せるように忠告してあげようか?」

 香月さんは言った。「それ以上は口に出さない方がいいです」

 「はは、私に命令でもするつもりか?」

 「まさか。俺も虎徹さんは若死わかじにされても構わない主義です。でも、病院には迷惑かけたくないとの気持ちは同じです」そして、僕の頭に手を挙げて相手に忠告を告げた。「落ち着きなさい、ハルくん。ここで暴れたら今まで準備した復讐も台無しになる」

 血が頭に上がる感覚に身体が熱くなる。拳がくだけるほど、勝手に力が入った。僕はマスクを外して母親の元同僚の顔を目に刻んだ。ここは、かつてご両親が働いた病院であり、今回で二回目の訪問だった。先日は、他の病院から赴任ふにんされたばかりの時期に母親と一緒に病院内を散歩した覚えがある。目の前の男はその時にすれ違ったお爺さんと顔が似ている。鋭い目つきと油断を見せない鉄のような性格をメガネの裏側に隠した人物だ。

 「何だ、その目は。親から大人の会話には割り込まないようにとしつけされていないか?」

 世間では母親が起こした事件だと知らされているけど、事実上、別の人だと僕は推測している。証拠はない。あくまで被害者の僕に視点でそう思っている。それだけで犯人と決め付けはできないと思うが、心証的にはクロに傾く。

 「おや?君の顔、どこかでみた覚えがある」じっと二人を後ろで見届けいた龍崎と呼ばれる医者さんが口を挟んできた。「あ、思い出した。坊やは、緑埜みどりえさんとこの長男でしょ?前に緑埜家の人と偶然ミーティングした時に聞いたことがある。確かに名前が——」

 「初めまして、炭咲千春と言います。父親あいつからどんなお話を聞いたか知りませんが、六年前に家族としてのえんを切った状態で、最近まで顔を合わせたこともありません」

 「な…あるほど、教えてくれてありがとう。話は分かった。緑埜さんのところも色々、事情があるみたいだね。それにしても、苗字だけではなく、名前も元々千春ではなかったよね?僕の記憶では、亡くなった香月さんの下の名前が『千春』だったような気がする」

 黙って話を聞いていた虎徹が舌打ちをして言葉を漏らした。「未だにもエディプス症候群コンプレックスに囚われているのか。相変わらず、哀れな家族だ」

 「テメェ、今なんつった」

 後始末を考える前に足が先に動いた。自分より背が高い大人を相手に、軸足じくあしをスライドさせて、虎徹の腹に左横蹴りをぶちかました。すかさず、バランスを崩した体を僕の方に引きつけた。そして、腰に相手を乗せ、そこを支点として一気に一方のあしで虎徹を払い上げた。僕は、地面に投げられた虎徹の首をすねで押しながら拳を握った。一発を殴る寸前に一言、言わせてもらった。

 「トウモロコシは好きか?」

 「千春!」と同時に香月さんが僕の名前をわめいた。「そこまでにしなさい。もう充分だ」

 怒りに震える右腕を下ろして虎徹から離れた。気がつけば、たくさんのやじ馬が周りに集まっていた。度が過ぎた振る舞いに冷静を取り戻し、倒れている虎徹を起こした。

 「怪我はしてなさそうで何よりです。弁償はいくらでもしますので私の宛てに請求してください。龍崎先生、申し訳ないですが、後のことはお任せします。よろしくお願いします」

 と言い残して香月さんは僕をその場から連れ去った。

 僕たちは、人の目が集まった場所から離れ、隣のビルディングに向かう連絡橋のゲートを通った。特に警備に通報された様子はなかった。共有ラボに着くまで僕と香月さんの間には気まずい空気が流れても、足音は引き続き廊下を埋めた。

 何かを言いかけたようでもあったが、結局は全ての検査が終わるまで口をつぐんだまま互いの沈黙を見守った。

 「最近、何かいいことでもあった?」カルテの内容を確認した香月さんからの質問だった。

 「特に何もないと思います」ふっとステラの顔が浮かび上がった。「三日前から、僕をパパだと思っているノバナの面倒を見ています」

 「ハルくんが子供を?今年で聞いた話の中で一番驚いた話だわ」

 「どうかしました?」

 香月さんはカルテを机の上に置いて、かけていたメガネを布で拭いた。

 「カルテに書いた結果はハルくんが見てどう思う?」

 「…去年よりは平均値に近い数値ですか?」

 「うん、見た通り、木炭化が進行した割合に体の成長もある程度進んでいる。血液の中に樹の一族を攻撃した白血球のかずも減って、むしろ去年よりは健康な状態だ」再びメガネをかけた香月さんがカルテをめくって話を続けた。

 「話が変わるけど、まだ、聖次郎せいじろうさんのことを恨んでいる?」と遠慮がちに香月さんが訊いてきた。

 「何でこのタイミングに、あいつの話が出るのですか?」

 聖次郎は父親が緑埜家の女と結婚し婿養子むこようしとなる前の旧性だ。僕の昔の苗字でもある。炭咲は僕が施設に入って一年が経った時に院長が勝手に付けてくれた苗字だ。火事から生き残った意味として付けてくれたらしい。名前だけは自分で決めたいと言って母の名前を戸籍に載せた。

 「はァ、あいつはママと華栄を殺した真犯人です。しかも実の息子を実験体として扱って、最後は見捨てた人間以下のやつです。まだ恨んでいるかと聞きましたよね。答えは、はい、まだ恨んでいます。一生は恨み続けると思います」もう一度あいつのことを想像すると血が沸いてきた。「あいつが何を企んでいるか知りませんが、最近は僕の携帯に電話をかけてきます。また、しょぼい研究の実績に僕が必要だからでしょう」

 「そう?」だけ言い残して香月さんは、長い間、何も喋らなくなった。何かほろ苦い気持ちで僕の顔をなにげなく眺めて頬を手で慰めてくれた。

 「私の診察室オフィスに戻流まで一緒に暮らしているノバナの話をしてくれる?」

 「ステラのことですか?特に研究にネタにはならないと思いますが」

 「ハルくん」と香月さんが僕の鼻を軽く掴んだ。「毎日つまらない報告書の山に潜られている社会人にも、たまに、気分転換したいと思う日がある。私は、今がちょうどその時だ」

 僕は、ラボから出て同じ建物の一階にあるカフェで、香月さんが奢ってくれたカフェラテをテイクアウトしてベンチに座った。久しぶりに香月さんと仕事以外の話ができて少しテンションが上がった僕だった。

 ステラを最初に遭遇した時から、カカシとの戦いで新吉原の花魁と出会えたことまで全て話した。香月さんは話の中でもカカシに関して特に興味を持った。具体的にどのような動きをして、心臓の代わりに懐中時計を原動力にした生物か機械であるかなどについても説明を求められた。論理的に説明ができない一部は、適当に話を誤魔化した。

 会話を交わしてからだいぶ時間が経った頃、院内にアナウンスが流れた。

 「コード名、ブルー。繰り返します。コード名、ブルー。コード名、ブルー」

 「炭咲くん!ターンサキくん!」

 二階の連絡橋から僕の名前を叫ぶ声が一階まで鳴り響く。顔を仰いでみると、二階で顔だけ出したこひなさんがいた。人形も着てない生身の姿で、何か急用があって訪ねてきたのかもしれない。

 「ステラが、黒いスーツの人々に攫われたされた。今、一階に向かっているから、絶対に捕まえなさい!」

 話を聞いてから注意深く一階にいる一人一人に目を配った。車椅子に乗った患者さんと後ろで押してくれる保護者や看護師、または休憩に入ったスタッフがそれぞれの位置に立っている。怪しそうな人物は未だに見当たらないと思う頃、黒いスーツを着た大人たちが人群れに身を隠して僕がいるフロアに現れた。僕はまだ半分くらい残っているカフェラテを手にして先方に歩いている男性に声をかけた。

 「こんにちは、カラスが昼間から病院に何の要件ですか?」

 僕の挨拶にカラスたちは動揺した。やはり僕の顔を知っている。となると誰かに指図されて僕がいる病院まで来きたか、あるいは偶然すれ違った可能性もゼロではない。何よりもステラを拉致らっちした根拠がない状況で下手に手を出せなかった。もう少し時間稼ぎをしつつ、情報を得る必要があった。

 「パパ!ステラ、ここにいる」と呼びかけるステラの声と同時に、とある老人が尋常じんじょうではない動きで影から大きい袋を取り出した。

 「炭咲くん、その叔父さんが犯人だ」と確信を得た時点では、影がステラの体を完全に呑み込んだ後だった。

 目的を達成したカラスは地面に手をついて徐々に影の中へ沈んだ。僕は邪魔をするカラスたちを倒してお犯人の首筋を掴まえた。

 「大人しくステラを陰から吐き出せ。そうすれば灰にならずに済ませてあげる」

 微動だにすら許せない言い方で相手を見下ろした。首やそのあらわとなった肌が、焼けて紅く染まってゆく。しかし、いかにカラスが震えようとも、両腕、両脚とも、微動びどうだにすらさせなかった。

 「う、うわさの通り、敵と認識した相手には容赦なく攻撃するぼっちゃんだぬ」と言い終わった老人は、体を砂のように変えて影の中に溶け込んだ。

 カラスは、僕のことを認知していて、更にステラを優先した。すなわち、僕の存在を知った依頼主がステラを攫い出した話になる。凡そ誰の指示で来たか把握できた僕は、入口の回転ドアに向かって一枚板のベンチを投げ出した。

 普通は物割れの音に恐怖を感じ、怖そうなふりをして体をすくめる。現在、その場に立ったまま、僕の動きに警戒している人々は全員合わせて、八人がいる。混乱の中で冷静さを保てる一人が、残り七人を先頭に立たせて、僕を取り囲もうとした。あの人がこのグループのリーダーだ。

 「相手は独りだ。油断せずに一気に取り囲めろ」

 リーダーの指示に合わせて、七人のカラスが各自のトゲを出して、僕へ攻め入った。

 「上等だ。テメェら全員、灰にしてやる」と告げ知らせて、全員の攻撃を体で受け取った。

 千切れた傷口から血が流れ、木炭に火種が上がる。体の破壊と修復が再度繰り返し、やはて大きな炎が両腕に宿った。

 「一人、本拠地を言いなさい。そいつだけは生かしてあげる」

 接近系のトゲは僕の手のひらに触れてから、一分も経たない間に焼かれて焼けた灰になった。遠距離の方は腕から爆発を起こして距離を縮み、武器となるトゲを焼き尽くした。トゲは灰になり、トゲに触れた体の一部は焦げた傷跡を負った。一人ずっつトゲが壊れる場面を後ろで見届けるカラスは、灰になる仲間たちの悲鳴に怯えながらも、自ら前に出て参戦はしなかった。

 僕はそれを見て、地面に散らかれた出来立ての灰を一握り掴み、手のひらに乗せた。

 「死にたくない奴は体をうずくまりなさい」とて大きい声で警告をした僕は、リーダーと思われるカラスに向けて手を叩いた。

 火の種と可燃性の灰が外部の衝撃でスパークを起こして、重い轟音ごうおんが巻きあがり、点火した途端に爆発を起こした。爆発の衝撃に、僕は病院の外まで放り出され、アスファルトの地面に落ちてから二回ほど転んだ。

 耳元から金属音の耳鳴りが段々と車のクラクションに変わって聞こえた。ぼろぼろになった口の中は、血まみれの歯が何本か転がっている。

 生きていれば問題ない、と病院の入口までの階段をおもむろに上がった。階段に一歩を踏み出す際に、胸から腹まで見えた胸骨に赤い肉が一筋ずっつ付いた。最後に顎の骨が元の場所に戻って自由に口を閉じれるようになった。

 僕は壊れた回転ドアを通って病院のロビーに立ち入った。そして、真っ先にカラスのリーダーを探した。気絶した人々の中で、

一人の男性が目に入った。男性は下半身を地面に引き摺って、背一杯肘ひじを足代わりにして動いていた。僕は下に落ちた灰は素足で踏みにじって、その男が動けないように左脚をつま先で止めた。

 「本拠地を、言いなさい」と一言を告げるる。

 「分かった。お、おれがぜんぶ話すから命はた——」

 不安そうに形が触れた男性は煙に変わり、後ろから僕を狙う殺意を感じた。反射的に体を横に動かして背中からの刃物を避けようとしたが、一歩手間で気絶している看護師をみて、素直に攻撃を受け止めた。痛みは瞬時に終わり、おびただしい血が背筋伝せすじづたいに流れ、青く鋭い刀を濡らした血は赤黒く固まった。

 「大量虐殺を起こした素町人すちょうにんの分際で、一抹の良心は残して何が変わる」

 爆発から生き残ったカラスは忙しく息をついて目角めかどを立てている。額に大きな傷を負った衝撃で刀の柄を握った手が微弱に震えている。どんな種類のトゲ使いであるかはまだ把握しきれていない条件でも、僕が有利な立場であることは変わりなかった。

 わずか一瞬のタイムロスも、攫われたステラに致命的ちめいてきになりうる。早めにこの戦いを終わらせて、ステラがいる場所を出来る限り特定しなければならない。身体も限界に近い。事の決着をつけるには、その場でカラスを半殺しの目に遭わせる必要が求められる。

 「カラスにだけは、人聞きの悪いことを言ってもらいたくねえな。それを言うならお互い様じゃないか?僕だって、仕事でカラスのせいで散々な目に遭った」

 「たとえ、同じ目的で動いているとしても、人殺しのバケモノと私たちまで同様に扱われることは論外だ」

 「論外?僕が体で刀を防ごうとしなかったら看護師さんは代わりにやられたと思うけど、これはどう説明しますか?」

 「君に詳細まで教える義理も義務もない」

 と言い切ったカラスが呼吸を整え、身を低く構えて突撃の姿勢に移った。相手は刃物を持ったプロだ。距離を置いても長いリーチとトゲの活用範囲が僕には不利に働く。

 一か八かやってみるしかない、と僕はカラスの懐に潜り込んでかかってくる攻撃を左肩で止めた。そのわずかな透き間から武器を乗っ取り、襟首えりくびむずと引っ掴み、全力を尽くて体と体を密着させた。もはや焼かれる痛みを生肌で感じたカラスは、力が及ぶ限り僕から離れようと体を引っ掻き回した。それこそ本当の狂人きちがいのように身を必死に藻掻もがきながら絶叫し続けた。

 「子供をどこに連れて行ったか教えてください」

 「…分かった、分かったから放してくれ」

 「本拠地は、どこにありますか?」

 「と、虎ノ門だ。とらの——」

 微かな声で駅名だけを言い残して、カラスは気を完全に失った。虎ノ門にはバベル直下の機関を踏めて、あいつが勤めている緑埜家の本社も位置している。疑いを明確にする目的で倒れたカラスの上着から業務用で使われている携帯を探した。

 画面ロックを解除し、連絡用のアプリを開いてメッセージの全文をざっと読み下した。マネージャー以上のグループチャットから現状の報告を求める連絡が届いていた。僕は倒れたカラスの『高橋』に代わって、「始末しました。本社に戻ります」と返答した。

 電源を切って深くため息をく。突然の本社からのお出ましに複雑な気分に惑わされた。僕がたてた計画に今日、このタイミングで父親あいつと対面することは描いていなかった。ましてその人が僕の計画を見通した可能性は低くない。が、ステラと僕の関係を疑うほど人との関係より目に見える結果を重視するタイプだった。

 僕は目を瞑って頭の中で今までの出来事をまとめた。メッセージの内容を見る限り、虎ノ門の本社からカラスを病院に派遣されるまでは約一時間がかかった。ステラは病院に来るまで新吉原にいて、僕が病院にいることを知った後に追いかけて来た。冷静に考えれば考えるほど、ステラが発見されて、また攫われるまでの間が短すぎる。

 何一つ辻褄が合わない状況だ、と妙な感心をしたくなる。僕は七年前にあいつから見捨てられた時と同じような、気弱さと冷たい無力感に襲われた。しかしそもそも論をいくら語ったとして、答えは出ないままだ。

 院内は、意識を取り戻した人々がきぬを切り裂くような声で助けを求める一方、通報を聞いて惨劇さんげき饗宴きょうえんに出動した関係者たちで、一階のロビーは大変混雑した。

 僕は誰にも目立たない内に倒れたカラスからスーツを脱ぎ出して肩にかけた。少し大きい部分は折り畳んで内側に入れて着る。靴も必要そうで、適当に床に転がるスリッパを取って穿いた。

 「炭咲くん?」

 こひなさんが人群れの中で僕の名前を呼びかけた。新吉原には後でまた忘れ物を取りに行く予定だ。その際、こひなさんに今までの事情を話して謝ると勝手に決めて、聴こえてくる声を勝手に無視して病院から抜け出した。

 垂れる鼻血を汚れたスーツの袖で噴きながら、僕は一番近くにある駅に着くまで、決して後ろは振り向かなかった。

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