第16話 記憶の神社
休日の朝、美織学はるんと待ち合わせていた。彼らの目的地は、るんが幼い頃に訪れたことのある神社。るんはその場所についての記憶がぼんやりとしかないものの、何か大切なことを感じさせる場所だったと言った。
「君が初めての友達だから、一緒に来てみたいと思ったんだ」とるんは学に話した。その言葉には、深い意味が込められていた。学はその言葉を胸に、るんと一緒に神社へと向かった。
神社に到着すると、二人は境内を静かに歩き始めた。秋風が木々を通り抜け、落ち葉が足元を彩る中、るんは子どもの頃の記憶を辿ろうとしていた。その間、学はただ静かに彼女の隣を歩き、時折彼女が立ち止まると、何も言わずに待った。
るんは、神社の隅々まで目を巡らせながら、昔訪れた時の感覚を取り戻そうとしていた。そして、本殿の前に立った時、るんは小さなため息をついた。「ここに来たら、何か思い出せるかなと思ったけど、やっぱり曖昧なままだね」と彼女は言った。しかし、その表情には、失望よりもむしろ穏やかな受け入れが浮かんでいた。
学は、るんが感じているであろう複雑な感情を察しながらも、彼女がこの場所を訪れた意味を理解していた。そして、二人は神社の境内で手を合わせ、静かに祈りを捧げた。その瞬間、るんの顔には安堵の表情が浮かんだ。
「ここに来てよかった」とるんは微笑みながら言った。「君と一緒だから、何かが変わる気がするんだ」。学は言葉を返さず、ただ彼女の手を軽く握った。この日の訪問は、るんにとって過去との再会でもあり、学との絆を深める機会でもあった。
夕暮れ時、二人は神社を後にした。帰り道、るんは「今日はありがとう」と学に感謝の言葉を述べた。学は「また一緒にどこかへ行こう」と返答した。その日の訪問は、二人にとって忘れられない記憶となり、彼らの友情に新たなページを加えた。
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