第15話 作詞の才能

美織学の中学生活に新たな挑戦が訪れた。学校の授業で「作詞に挑戦する」というプロジェクトが始まり、学は未知の領域に足を踏み入れることになった。彼は、自分の過去、特にミジンコだった頃の寂しさや孤独感をテーマにした歌詞を書くことを決意した。これまで絵を通じてしか表現したことのない深い感情を、言葉で表すのは容易ではなかったが、学は自分の内面と向き合いながら、一字一句心を込めて歌詞を紡いだ。


翌週、発表の日がやってきた。自分の番が来るまで、学は緊張で心臓が高鳴り続けた。しかし、いざ舞台に立つと、彼は恐る恐るとはいえ、自らの作詞した歌詞を堂々と読み上げた。読み終えると、教室は静まり返った後、暖かな拍手が彼を包み込んだ。


そして、驚くべきことに、作詞の先生が金賞を発表する際、美織学の名前を呼んだ。先生は学の歌詞に感動し、その深い感性と独自性を高く評価した。クラスメイトからも惜しみない拍手が送られ、学はその場の中心人物となった。


休み時間には、クラスメイトたちが学に集まり、歌詞のインスピレーションの源や書き方について質問攻めにした。学は、突然の注目に戸惑いつつも、照れくさそうに下を向いたまま質問に答えた。彼は、直接的には答えず、自分の経験や感情を抽象的に話したが、それが逆に彼らの興味をさらに引き寄せた。


この日、学は新たな才能を開花させただけでなく、クラスメイトとの間にも新しいつながりを築いた。彼の内に秘められた深い感情や過去の記憶が、意外な形で彼を新しい舞台へと導いていったのだった。

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