第17話 挑戦のキャンバス

新しい家族との生活は、美織学にとって多くの変化をもたらしていた。彼らは学を深い愛情で包み込み、彼の小さな変化にも敏感に反応し、その成長を見守っていた。学の中には、これまでの孤独が徐々に温かい光に包まれるような感覚が芽生えてきていた。


ある日、おじさんが家に帰ってきた時、彼は学に向けて一枚のチラシを手渡した。それは、地元で開催される絵のコンクールの応募用紙だった。「絵を描くことが好きな君に、ぴったりのチャンスだと思ってね。」おじさんの言葉は、学に新たな挑戦への勇気を与えた。


学は、おじさんの期待を胸に、コンクールに応募することを決意した。その決意と共に、彼は応募用の絵を描き始めた。この絵には、ただ単に景色や物を描く以上のものを込めようとした。学は、自分の内面に秘めた想い、ミジンコだった頃の記憶、そして新しい家族との温かい日々を表現することに挑戦した。


日々、絵を描く時間は学にとって特別なものとなり、彼は自分自身と向き合いながら、キャンバスに思いを重ねていった。完成した作品は、学がこれまでに描いたどの絵よりも深い感情が込められていた。彼の絵には、寂しさや不安だけでなく、希望や愛情のような温かい感情が織り交ぜられていた。


コンクールの応募日、学は緊張しながらも自信を持って絵を提出した。この挑戦は、彼にとってただのコンクール以上の意味を持っていた。それは、自分自身の成長を確かめ、新しい家族への感謝を表現する機会だったのだ。


提出後、学は何が起こるかわからない不安と期待でいっぱいだったが、彼の心には新しい家族との絆と、これからの挑戦への希望がしっかりと根付いていた。この絵のコンクールは、学にとって新たな人生の扉を開く一歩となった。

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