第2話 気候変動

 100億年の寿命の星では、知的生命体の命が絶えようとしている。太陽のエネルギーが異常に増して、二酸化炭素が減少し植物が生育できなくなっている。しかし、ここまでは高度な技術で生存を可能にしてきた。だが、このままだと膨張した赤色巨星に10万年後には、太陽の近くの惑星から順次、飲み込まれる運命だった。


「我々の子孫が生存できる星が見つかったので、受精卵を搭載した宇宙船を着陸させます。地球は、少なくとも3億年は持ちます。長ければ6億年は持つでしょう」


「受精卵人工胎盤を起動させ、育児と学習ロボットを作動して3年で教育し、母星と地球との間での量子もつれを利用したテレポーテーションで必要機器を送ります。8年もしたら、十分な星間通信ができるでしょう。母星からは、成人は送れないので、受精卵に託すしかないのです」


「地下に基地を築き、18年もしたら地上に出て、地球人と入れ替わります」


「資金は株式市場から捻出します。設備等を販売することはできません。1万年は我々の方が進んでいるからです」


「食糧も母星から送り、地上に土地や建物を建設したら、それからは自給自足で問題はないと思います。とにかくは、その星に溶け込み、怪しまれないように生活基盤を確立することです」


「問題は、地球という星に氷期というものが訪れるということです。地球にも知的生命体が住んでいて、研究は進んでいますが、対処は何もされていません。それも、10万年間という長期間というのに絶望的です」


「地球の危機は、政治不信と共に温暖化から氷河期へと移っています。戦争の手段でしか解決できない地球人は、簡単にモーフィングで入れ替わることができるでしょう。地球人は利害で動きます。そんな社会に慣らされた地球人は、厳しい10万年の氷期を生き延びることはできないでしょう」


「我々は、10万年後の地球ではなく、氷期に突入しても地上での生活が出来ます。今から地底で準備をすることにしましょう。傷付いた地球を再建し、地上に自然豊かな世界を創造するのです。

 地球は、海と陸の割合が7対3で居住地は少ないです。それに、火山活動が活発なので危険地区も多いです。また、山や斜面も多く危険です。人口爆発は、絶対に避けなければなりません。

 機械は、テレポーテーションで母星から送るので容易にできます」


「いつ氷期が訪れるかは、まだ分かりません。しかし、仕組みは分かってきました。地球温暖化は、偏西風の蛇行を引き起こし、猛暑や寒波、洪水、干ばつ、台風などを巨大化させ異常気象を引き起こしているのです。しかし、異常気象がモーフィングのように、温暖化から寒冷化へと変化する予兆ということを気付かぬまま進行しているようです。

 温暖化は、氷河を融解させます。氷河の移動や融解は、地上の重みがなくなることにより地殻を隆起させます。また、地下にあるマントルは過熱され上方へ向かい対流が起こります。地殻への影響は、異常な人口爆発により工場用水や農業用水の汲み上げによっても、質量配分の変化を引き起こしています。


 このようなことは、コマのように地球内部の重心を重い方向へ傾けさせ、地軸までも変化させ、地球の軌道はより楕円になっています。太陽から地球が遠ざかる際、寒冷化が強まり氷河期へと向かうことが考えられます」


「地球の異常気象は、最終氷期の12万年前から1万年前に起こったダンスガード・オシュガーイベントといわれる気候変動に特徴が似ているかもしれません。約2000年に1度、20回以上も起こったもので、数十年間で最大10℃の急激な温暖化と急激な寒冷化を繰り返した気候イベントでした。

 また、ヤンガードリアス期の1万2800年前からおよそ1000年間続いた寒冷化も、間氷期の初期でのイベントであり、“寒の戻り”というものが起きていました。

 そしてこれらが、78万年前のチバニアン初期でも起きているのです。それは、初期の、数メートルの海水準変動を伴う氷床の拡大と縮小を500年から2000年間隔で繰り返す激しい気候変化が明らかになっています。この気候変動の一部には、北大西洋の大量の氷山流出が関係している証拠も見つけられています」


「その他にも、地磁気逆転も起こるでしょう、高度技術が使われている地球には厄介な事でしょう。しかし、地磁気逆転には、数千年から1万年ぐらいはかかるようで、我々の高性能機器には影響がないと思います」


「地球では、ここまで進んだ技術を平和利用できませんでした。それは、経済至上主義が横行したからにほかならないのです」


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