モーフィング

本条想子

第1話 変化に気付かない

 大統領は何処にいるのか、もういないのか。2008年4月までは、表舞台で見かけた。しかし、大統領が改革派なのが、保守派には受け入れがたい現実だった。保守派は大統領の任期後がチャンスと考えていた。その間、影武者が暗躍し、国内外に溶け込んでいた。

 そして、大統領に再選された時には、本物は登場せずに影武者ばかりが、保守派の意向に沿う動きをしてきた。今は黒幕の保守派が支配し、改革派は隠されたクーデターと共に消え去った。世界は、自国の大統領選にしか興味がない。地球は、どうなっていくのだろう。


 最初は似ていたが、年を重ねるごとに違いが出てきている。近くで見ていると、脳が変化を受け入れてしまうモーフィングのようになっていた。しかし、今まで見たこともない人間が、突然見ると受け入れがたい違いを発見してしまう。数年から十数年経過すると、似ても似つかない相違だ。AI技術も、比べる相手を間違えれば何にもならない。

 本物とすり替わった別人は、大統領として影武者を何人も従えている。それは別人には似ているが、本物の大統領とは似ていない。本物が登場したら、そんな顔ではないだろう。


 国民に格差を強いて、戦争の駒として使っている。人口増加や移民、戦闘地域からの子供連れ去りも戦争の要員に駆り出されている。人口の増加は、経済を成長させるものだけではなく、格差を拡げるものになっている。日本でも少子化というなら、6人に1人の子供が貧困というような事実を解消できないのはおかしい。安い海外労働者の受け入れも、老人の労働領域を狭めているばかりか、若者たちの職場も奪っている。ただし、2012年以降、新基準により2021年には、9人に1人の子供が貧困というように改善されているように見せかけられている。

 被災発生直後と同様に、他県からの個人ボランティアの増加は、自己完結型の活動が難しく、食糧や水、寝床などのインフラ使用で迷惑をかけてしまうことがある。海外労働者も同様に、自己完結者でもなく日本に暮らす人であるので、いずれ帰国させる非常用の労働者と考えるのはおかしな話だ。


 政治の世界では5000年の歴史で、王国が誕生し権威を記憶させ、帝国まで行き着いた。そこからというもの、軍隊を使い国民を奴隷化し、軍国主義や覇権主義、変貌した共産主義、変貌した民主主義で、一部の特権階級のみの格差社会が成立している。しかし、国民の脳は帝国に慣らされている。


 市民の抵抗は、国力よりも強いことを歴史が物語っている。そこで、共産国家などは覇権主義の強化をしてきた。また、保守派は民主化を装って選挙を有名無実化し、市民の結集を削ぐ事に力を入れている。その結果、民主主義国家といえども、抵抗する気力がなえている。本来は、選挙権がものをいうはずが、投票率が下がっている。政治に無関心ではいられるが、無関係ではいられないことを忘れている。それゆえ、国民以上の国家は得られない。

 世界は、悪事であってもモーフィングのように、気付くことなく習慣化されている。


 今のままの経済至上主義では、国民は報われない。GDPではなく一人当たりGDPを競うべきで、格差があってもお構いなしではやり切れない。いつも、弱者が見過ごされている社会で、悲劇は続いている。

 地球人は、独裁者により思想までも知らず知らずのうちにモーフィングのように、どんどん変質しているのにも気付かないままに誘導されている。草の根活動のように思い込まされ、少数派を育てることをはばみ、思考停止を生んでいるのだった。


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