第9話 3日目 道後温泉と坂の上の雲ミュージアム
道後温泉に来るのは2度目だ。
1度目は道後温泉駅から本館へ行き、同じルートで戻ってしまったため、公園方面からの景色は初めてになる。
左手にホテル街を見ながら本館方面へと向かう。
事前に調べて知っていたが、本館は改修中で入場不能。
外観を見ながら南側の坂道を登って、まずは最初の目的地である『空の散歩道』へと向かう。
きつい坂を登りきると、頂上は駐車場になっていた。
ここには道後温泉の守り神が鎮座する湯神社がある。
天災によって温泉の湧出が止まった際は、ここで祈祷をすると再び湯が出るという伝承が残っている、第十二代景行天皇の勅命により建てられた由緒正しき名社だ。
頂上の北側は散歩道になっていて、東屋とベンチ、そして足湯がある。
遊歩道からは道後の町並みを一望することができて、道後温泉本館も良く見える。
地上へと降り本館前に戻ってきたら、続いて『道後ハイカラ通り』へ。
土産屋、カフェ、レストランなど約60ものお店が軒を連ねるアーケード商店街は、観光客でごった返している。
入店したのは『道後ぷりん』
店の名前にもなっている、瓶の中にみかんが丸ごと1個入ったプリンが看板商品だ。
夜食用に一つ購入していく。
商店街をまっすぐ歩いていると、頭上からアーケードが消える。
かまわず直進して右手に飛鳥乃湯泉が見えた所で、ようやく道を間違えたことに気が付く。
ここはL字型のアーケード街であることをすっかり忘れていた。
知らない場所では周りをよく見て歩きましょうと反省。
アーケードへ戻り、じゃこ天を食べ歩きしながらぶらぶら進む。
駅前にある提灯ゲートでは、人力車の方が懸命に客引きをしているのが見えた。
これも道後温泉の名物の一つだろう。
からくり時計の前はやはり混雑。
時計を背に撮影する方々の中には、外国人も多い。
みな撮影の順番をきちんと守っており、ここで見る外国の方はみなマナーが良い。
松山という土地の空気がそうさせるのだろうか。
このままホテルに帰っても時間が余りそうなので、伊佐爾波神社まで足を伸ばす。
急勾配で手すりも無い135段の石段に少し怯えるが、何とか登りきる。
頂上から道後温泉駅の方面を見る景色は、なかなかのものだ。
社殿は鮮やかな朱色で、日本に3か所のみ現存している八幡造り。
参拝所の裏側は、社殿をぐるりと囲む回廊になっていて、前後二棟に葺き分けられた八幡造り独特の御屋根を見ることもできる。
また回廊には戦前に奉納された絵が飾られていて、中には旅順攻略戦について描かれたものものあり、当時の世相などを思い知ることができた。
道後温泉から路面電車で大街道へと戻る。
電車の中はいっぱいで、ガタガタ揺れる中を最後まで立たされた。
しかし前方の端っこから運転手と同じ視点で松山市内を眺めることができたのは、面白い経験でもあった。
大街道に戻るが夕飯には少し早いため、近くにある坂の上の雲ミュージアムに足を運ぶ。
施設は小高い場所にあって、入り口までは長めのスロープを歩いていく必要がある。
入館料は400円。
松山市内の観光地としては珍しくSuicaが使えるのがありがたい。
各展示フロアは三角形に配置されてスロープでつながっている。
見学をしながら「坂の上」へ登っていく感覚になれるとうわけだ。
数ある展示物の中でも圧巻されるのは、壁一面に貼られた司馬遼太郎が産経新聞に載せていた「坂の上の雲」の連載記事の切り抜きだろう。
学生時代にさんざん読み返した小説の原文を、こうして見られるのは実に感慨深い。
見学を終えたら夕食。
訪問した店は大街道にある『豚かつ専門 とんとん』
愛媛県のブランド豚、伊予いも豚を食べさせてくれる店だ。
案内されたカウンター席に座って伊予いも豚ロースかつ膳の210gを注文。
出来上がりまで15分かかると言われたが、先にキャベツを出してくれたので待ち時間は苦にならない。
特製のみかんドレッシングは酸味がいい感じで、キャベツをお代わりしてしまった。
本命のとんかつはとても厚みがあり、外はカリッと揚がり中はジューシィ。
肉汁たっぷりで食べた後は口が脂っこくなるが、出汁のきいた味噌汁がそれをサッパリ流してくれる。
味もお腹も満点、松山最後の夜を締めるにふさわしいお店でした。
後はホテルに帰るだけだが、その前に松山三越へと寄っていく。
そして入口すぐ左手にある『ジョアン 松山三越』でアップルパイとベーコンパンを購入。
初日に食い損ねたアップルパイのリベンジ買いである。
明日の朝ごはんにする予定だ。
ホテルに戻ったら風呂に入って身を清め、就寝までくつろぐ。
この旅行中、部屋でゆっくりするのは今日が初めてだ。
のんびり観光と決めていても、一人旅行だと結局はバタバタとあっちこっちへ動くことになってしまう。
まったく自分は旅が下手だと思う。
自己嫌悪しそうになった所で、道後温泉で買ってきた『道後ぷりん』をいただく。
瓶の中は2層になっていて、上はみかんを丸ごと1個使ったゼリーがギュッと詰まっている。
さっぱりとした甘さで、ほのかなみかんの酸味がいい感じだ。
下のプリンはとろとろで濃厚、口に入れた瞬間から甘みが広がって来る。
1つで2種の甘さを味わえるとは贅沢なプリンだ。
満足したところでベッドに横になるが、まだ就寝はせず動画を見てゴロゴロする。
明日の羽田行き飛行機は11時45分発、ホテルはゆっくり出ても楽に間に合う。
少しくらいは夜更かししてもかまわないだろう。
そう思いながら旅行最後の夜を過ごした。
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