第10話 友好の印

 それは、突然の出来事だった。

 おでんの猫田に、アライグマがやって来たのだ。

「た、狸のフリしてアライグマが来たにゃ」

「何をしに来たにゃ?」


「随分な物言いだライ」と、荒井は言った。

「……」

「今日は友好の印として、ウサギの肉を差し入れに来たライ」

「ウサギ肉?」

「おでんにして食えば美味いぞ」と、荒井は言うと帰っていった。


「にゃんじろう、ウサギ肉だってよ」

「どんな味にゃ?」

「さぁ?」

「余った出汁で煮込んでみるかにゃ」


 そして、出来たウサギ肉のおでんは、

「美味いにゃあ」

「たまらんにゃ」

「さくらちゃん達が出勤する前に片付けるにゃあ」


 そして、店員のにゃんざぶろうが言った。

「オレたちも何か友好の印を送ったほうがよくにゃいか」

「うーん」

 ニャン太をやったらしい荒井に友好の印とは、これ如何ににゃ!


「そうにゃ!」

 にゃんじろうは思い出した。冷凍庫に荒井たちにやっても痛くも痒くも無い肉があることに。


「にゃんざぶろう、処分に困っている肉が冷凍庫にあるにゃん」

「まさか、あれを奴らに」

「そうにゃん」


 一体、冷凍庫にある肉とは?

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