第9話 共食い

 すき焼き屋の荒井の奥では、店主の荒井が店員の猪熊と息をひそめていた。

「どうだ?」

「うめぇ~、これはイケます。“おでん”なんて久方ぶりですライ」

「毛が残っているのが問題じゃが、これは癖になるライ」

 そして、荒井が言った。

「これはアイツラにも食わせてやろうぜ、共食いってやつだ。ははは」


 共食い?

 なんのことだろう……


 その頃、にゃんじろうのおでん屋では。


「今日は定休日だ。たまには“すき焼き”とやらを食べてみるにゃん。皆も食べるにゃ」

 飲食店は、半年に一度、大掃除をする。

 それは、昆虫の駆除など法律で決まっているにゃ!


「にゃんじろうさん、この肉は牛肉じゃないにゃ」

「ふふふ、今流行りのジビエ肉だにゃ」

「うーん、スッキリとした赤肉だわにゃ」

「さくらちゃん達も気に入ってくれたにゃん」と、にゃんじろうは気を良くしていた。


 そして、「そうにゃ、奴らに共食いさせるにゃ」


 共食い?

 なんのことだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る