第2話 団体競技
分校はM川の上流にあり、村営のマイクロバスが運行していた。車道が抜けるまでは全くの陸の孤島で、本校に用事があれば、何時間もかけて山を登り降りし出てきた。
バスで半時間ほどに短縮されはしたが、本校と分校の交流は、ほとんどなかった。本校生には、分校の存在さえ知らない者が多かった。
隆も例外ではなかった。ある日、見慣れない男子生徒がいた。事情通が、その子が分校生であることを教えてくれた。小学校の卒業式か、あるいはほかの用事で本校に立ち寄ったものか定かでない。
隆が気づいた時には、分校生はソフトボールに興じていた。
分校生が打席に立った。何球か見逃した後、分校生の振ったバットは見事に外野に球を運んだ。
拍手が起きた。友情の証だった。
「走れ! 走れ!」
チームメイトの声援を受け、打者は3塁に向かって全力疾走した。
ルールを知らなかったのである。
分校では多い年でも生徒数は10人あまり。チームは組めず、ソフトボールなど経験がなかったのだろう。
案の定、右打席に入っていた分校生が守備につき、右手にグローブをはめていた。捕球した後、いったんグローブを外してから投げる格好は、いかにもぎこちなかった。
スポーツと言えば、隆は足には自信があった。50メートルを6秒台で駆けた。正確に言えば「50メートルまでは6秒台」だったことを、高校に入って思い知らされた。
進学先は、都会のマンモス高校だった。体育の時間に100メートル走があった。隆はスタートダッシュをかけた。
級友と大きく差を広げたが、50メートルを過ぎたあたりから、足がもつれ始めた。山の学校では、とても直線で100メートルのコースは取れなかったのである
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます