続 村の少年探偵・隆 その11 上には上

山谷麻也

第1話 山の学校の今昔

 隆たちの通った学校は、I街道沿い、I川とM川との合流地点にあった。狭い校地だった。ただ、あの辺りで学校建設地を探すとなると、ほかに候補地は見つからない。選択の余地はなかったのだろう。


 まず中心部に小学校が建てられ、運動場はその手前に整地されたものと思われる。次に奥の山を削って中学校が建てられ、運動場の隅を幼稚園舎に充てた。

 途中、小学校には分校も開設されるなど、戦前・戦中・戦後の学校教育史が凝縮されたような「山の学び舎」だった。


 隆は第1次ベビーブームに少し遅れて生まれた。それでも教室はギューギュー詰めだった。隆が中学に入った頃、生徒数では都会の学校にかなわなかったものの、人口密度は県内有数であったことは容易に想像できた。


 隆盛を誇った「10年一貫教育」の「総合学園」も、就学人口の減少により、1970年に中学校は統合され、82年に分校は廃校、2012年に幼稚園が廃園、翌13年に小学校は廃校となった。

 まるで、逆送りされる映像を観ている感じだ。


 今、中学校のあった場所は更地になり、わずかに残った小学校の建物の一部で、移住者が飲食・宿泊業を営んでいる。園舎の面影を留めるものは何もない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る