0007_AI芸術家への危惧に対する所感

■シン

最近は、人工知能だとかAIだとかが、クオリティの高い小説を書いたり絵を描いたりできるらしいですね。




■アマネ

へえ。




■シン

へえ、って……。

知らないんですか?




■アマネ

聞いた事はあるが、余り興味がない。

凄いなとは思うが、いかんせん具体的なものに興味がないものでな。

いや、哲学的に気になるところは勿論あるのだけど……なんか根本的に、特に興味ない。




■シン

相変わらずですね……とにかくそんな訳で、芸術活動もAIができるようになった為に、いよいよ人間の立つ瀬がない、と云う事が問題になっているらしいんですけど、どう思います?




■アマネ

ふぬ?

なんで?




■シン

僕も良くは知らないんですが、例えばAIに指示を出せば、優れた絵や小説を描いてくれるから、芸術に於いてさえ人間が敵わなくなってしまう訳ですよ。

それでは、芸術家と云う仕事もなくなっちゃうでしょう。




■アマネ

んー……。

どう思うか、と云う問だったかな?

哲学的にと云うか、私の個人的所感なら述べられると思うが。




■シン

哲学的にでなく、アマネさん的に?




■アマネ

私は別に哲学の代表ではないし、哲学者の中でも最下等の存在だから、大した事など云えんのだ、情けない事に。

だから友人同士のお喋りとしてなら、無責任な所感を口にするくらいなら構わんが、どうかね。




■シン

はあ、じゃあアマネさん的にはどう思いますか?




■アマネ

そうだなあ、つらつら思うに……。




■アマネ

まず芸術活動は、自分がやりたくてやるものであるから、今後も芸術家は別に絶滅する事はないであろう。




■アマネ

そして、作家活動に関しては、

自分が手を動かすと云うよりも、システム開発に於ける上流工程のような作業が主内容となり、

後はAIと云う名の高技術を持った職人に開発を依頼する、と云う事になるのかもしれないと思う。

これはシステム開発等に於いては昔から行っているもので今更のものでもない。

作品と云うなら、テレビゲーム作品もそうであろう。




■アマネ

だからその意味では、特に目新しい動きになる訳ではないのではないか、と思う。




■シン

はあ、成程……。




■アマネ

芸術作品の制作には、その意味内容に対する感性即ち主観と、それを具現化する技術即ち客観の両観点があるだろうと思う。




■アマネ

技術の方については、高技術を持った者に委託すると云うのは、既に昔から行われている。

漫画作品であれば、原作者とは別に作画担当が就くような形だ。

或いは個人作成のPCノベルゲームでも、絵が描けない作者が、フリー素材などを利用して何とか作品を構築する、と云う事も良く行われている。




■アマネ

だから音楽であろうと絵画であろうと、

芸術家と云うのは企画立案や、できあがった製品に対して自身の感性から良し悪しを判定する監督業のようなものが活動内容になり、その具現化は、高技術を有した職人たるAIが担当する、と云う事になるかもしれない。




■アマネ

だがそれは昔から行われている事で、不思議でも目新しくもなく、危惧でもないであろう、と思うのだ。

まあそれは、私が芸術活動を行っていない故の無責任な見解かもしれないが、

飽く迄、その作品に触れるユーザ側の視点としては、そんなように思うのだ。




■シン

はあ、ユーザー側の視点ですか。




■アマネ

また、AIが優秀過ぎて人間が太刀打ちできないと云う点に関しても、

より優秀な人間に敵わないと云うのも昔から起きている仕方のない事であるので、

やはり目新しさはない。




■アマネ

要するに、具体部で多少の差異はあろうが、

制作の実動の担当者が異なるだけで、

最終的に良し悪しを判定すると云う部分は変わらず、芸術家個人の感性に依存するのだろうから、

本質的には何も変わらないのではないか、

と思うのだ。




■シン

ふむふむ。




■アマネ

その判定自体もAIが行うようになるとしても、

それは、AIと云う人種の人間がやった、と云うようなもので、

優秀な一個人が担当した、と云うのと何も変わらない。




■シン

じゃあ、優れたAIによる優れた作品が作られると云うのは……。




■アマネ

優秀な名監督の新作映画、と云うように、

AI監督の新作映画、と云うだけの事だ。




■アマネ

余りにAIが優秀で、人間の作った作品が相手されなくなるとしても、

有名作家がいるせいで他の作家の作品が売れないのだ、と云って、有名作家を排斥するなんて事はしないであろう。




■シン

成程……。




■アマネ

それに、ユーザもユーザで各人固有の感性を持っているのだから、

たとえ稚拙であろうが不人気であろうが、この作品が好きだ、と云う事は可能だ。




■シン

ああ、確かに。

僕も、いかにも手作りだなっていうものとか、不格好だとしても結構好きなんですよね。




■アマネ

だから、

主観的な観点に於いては、主観は多様であるから何も問題はなく、

客観的な観点に於いては、AIと無関係に、優秀な者に劣等な者が敵わないと云う当然の自然法則が昔通り成立するだけで、

つまり何も変わることはないであろう。




■アマネ

と云うのがまず、私の素朴の所感だな。

但し、AIの発達に対する危惧について私がちゃんと捉えていないものがあるだろうので、余り気にしないでほしい。




■シン

ふーん……。




■アマネ

まあ何にせよ、問題なのは技術ではなく、その運用だ。

包丁だって、人に向ければ傷付けるが、調理に使うなら便利なものだ。

AI技術は幾らでも発展して良く、乱用の方に注意すれば良いのだよ。

科学は事実でしかなく、人間がどうにかできるものではないのだからな。




■シン

良いも悪いも、リモコン次第なんですね。



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