春風に吹かれて
ほしのしずく
第1話 春風に吹かれて
窓から流れ込む春風
開けなれた扉の前
ドクンドクンと脈打つ心臓
期待、緊張、寂しさ
過去から
重ねてきた
積み重ねてきた
大事で、甘くて酸っぱくて
苦くて、辛くて
呑み込むには、難しい思い出も
桜の香りがするこの季節には
何故か少し
ほんの少しだけ
柔らかくなり、優しい色へと色付く
そんな日々をどれだけ繰り返そうと
過去を美化してしまうのは
きっと桜のせい
四季にさまざま姿へと変える桜
まるで、
どうしても、その姿に魅入ってしまう
だから、そう、きっと桜のせい
息も絶え絶えになる暑い季節は、色鮮やかな葉を広げて
木枯らしが吹く季節は、茶色へと色付いた葉を落として
手足が痛くなるような寒い季節は、咲き誇る花を蕾を変えて耐え忍び
また、春風が吹く季節になれば、満開になる
その姿に魅入ってしまう
全力で咲き誇る桜のせい
でも、これが
この季節が一番好き
これが桜のせいであろうと
なかろうとも
やっぱり繰り返す
重ねて
そして、鼓動を高鳴らせて
新しい出会いが待っている
目の前の扉に手をかけて
小さくて
大きい一歩を踏み出す
何度だって
何度だって
自分という桜が咲き誇り
舞い散るまで
この胸を高鳴らせて
春風に吹かれて ほしのしずく @hosinosizuku0723
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