第3話 戦いはまるで明太子スパゲッティ
「おや? こんなところに何やら丸いものがあるでオークねぇ?」
「これは何でオークか?」
現れたオークは2体。緑色の肌に豚のような顔。二足歩行で歩き、親指のような体型をしているモンスターだ。見た目通り頭は悪く、パワーはCランクモンスターの中でもトップクラスである。
「クンクン……人間の匂いがするでオーク。もしかしたらこの丸いものは……」
「イワダヨー」
「なんだ、ただの岩だったでオークか」
裏声でオークを騙すことに成功したヒラタだったが、それが墓穴を掘ることになってしまった!
「ふいー、疲れたでオーク。ちょっとこの岩に座って休憩するでオーク」
そう言ってオークの1体がヒラタの背中に座った! オークの体重はなんと200kg! その全てがヒラタを襲う!
「ゴベルブルグ!?」
「ん? 何か言ったでオークか?」
「何も言ってないでオークよ。空耳じゃないでオークか?」
そう言いながら、立っている方のオークは持っていた木の棒を地面に下ろした。そしてそこにくくりつけられていたのは……。
「くそっ、これから私をどうするつもりだ! エロ同人みたいにするんだろ! くっ殺! くっ殺くっ殺!」
煌びやかな鎧を着た女騎士であった。金髪をポニテにして括ってあり、それが地面に触れて砂利と戯れる。異世界人らしく美形であった。
「……なんか言ってるでオークよ?」
「ほっとくでオーク。さっさと巣で解体するでオークよ。2日分の食料にはなるでオーク」
そう言いながらオークは女騎士から略奪した美しい剣を腰から抜いた。
「少し黙るでオークよ」
それを女騎士の顔に近づける。縛られている女騎士は抵抗できない! 南無三! だがその時、その様子を隠れて見ていた者が立ち上がった!
「とう!」
「な、何奴でオークか!?」
オークの尻の下から勇猛果敢に飛び上がった青少年、その名は――!
「お前らやめろーッ! それ以上オークの品位を汚すってんならこの俺が許さねぇぜッ!」
「いや私の心配をしろよッ!」
ヒラタは激怒した。オークは女騎士を犯す生物である。女騎士を犯さないオークはオークだろうか? 否。断じて否。
「お前らはオークなんかじゃない! オークから外れたオーク、
「そんな外道みたいに言われてもなんにも響かないでオークよ。貴様、何者でオーク? いったいどこから現れたでオークか?」
「俺の名前はヒラタ イヨウ! さすらいの冒険者だ! そして先ほどまで岩に擬態していた変装のスペシャリストでもある!」
「あれ変装のつもりだったの……? 丸まってただけじゃん……」
「バカな!? 岩に化けていたでオークか!?」
「お前らも騙されるなよ!」
オーク2体とヒラタの間には一触即発の空気が流れる。見事な変装を披露したヒラタに、オークは警戒心を強めた。
「しかし、わざわざ姿を現すとはいい度胸でオークね。3対1でオークよ?」
「囚われの私を数に含めるなよ」
「おのれオークめ。だがそれは違うぜ。3対1じゃなくて3対2だ!」
ヒラタはポケットからエンブレムを取り出した。
「来い! ペン太ァ!」
エンブレムからまばゆい光が迸る! そしてそこから現れたのは……!
「ペ~ンタッタッタッタッタ~、やっぱり王都のサーカス団のピエロは面白いでペンねぇ~! ……あれ? ここどこだペン?」
「ペン太! てめえまた人の金で遊んでやがったな!?」
「ちち、違うペンよ! こ、こ、これには深い事情が……!」
ヒラタに向かって両翼を振り、必死に弁明をするペン太。その背後にオークの魔の手が伸びる!
「ペン太! 躱せ!」
「為替(かわせ、英: Money order)は、為替手形や小切手、郵便為替、振込など、現金以外の方法によって、貨幣を決済する方法の総称である」
オークの拳がペン太を直撃! 毬玉のように数回バウンドして地面に伸びた。
「ぎぃやあああ! 痛いペンンンン!」
「バカヤロー! そんな使い古されたボケをかますからだ! お前のギャグには新規性がないんだよ!」
「いやそういうことじゃないだろ!」
オークは次にヒラタを殴ろうと近づいてきた。それに対し、ヒラタは木刀を構える。
「ペン太、こっちのオークは俺がやる。そっちはお前に任せたぞ!」
「面白いでオーク。人間ごときがどこまでやれるか、見てやろうではないかオーク!」
そうしてオークとヒラタの熱いバトルが始まった!
一方その頃。
「痛いペン……もう無理ぽ……」
「何やってんだお前! 動け! 動けよ! せめて私の縄を外せ! もうオークすぐそこまで来てるって!」
女騎士はペン太を激励するが、全然ダメ。ペン太は地面にへにゃへにゃ~となってしまっている。そこにやってきたオークはペン太を掴むと、思いっきり地面に叩きつけた。
「っ……!」
見ていられないという風に女騎士は目をつむる。だが……!
「甘いペン! それは残像だペンよ!」
「ナニィ!?」
オークの掴んだペン太は残像だった。ならば本物のペン太はどこに!?
「ペッペッぺ、こっちを見るペン!」
「……! おのれ、小癪でオークね」
ペン太は女騎士の首にクチバシを当て、人質にした!
「この女騎士の命が惜しくば、そこを動くなペン!」
「いや、別に命は惜しくないでオーク。肉さえあれば生きてても死んでても……」
「交渉決裂だペン。ごめんなさい女騎士さん……」
「ちょちょちょっと待てお前なにやってる!?」
流石の女騎士も命の危機を感じたのか暴れまわる。
「ちょ、暴れないでほしいペンよ」
「暴れないわけないだろ! なんでお前が私を殺そうとしてんだ! お前人間の召喚獣だろ! 倒すのはあっち! オーク!」
「ペンは召喚獣じゃないペンけど……」
仕方がないから渋々……といった顔でペン太はオークに向き合った。そして……。
「〈フリーズン〉」
クチバシから極寒の冷気を放った! それは空気中の水分を凝固させて氷に変え、オークに吹きつけられる。
「これを喰らって生きていたものは……」
「おお!」
「わりといるペン」
「……」
オークは冷気を腕で振り払う。分厚い皮膚を僅かに凍らせはしたが、それだけだった。
「ごめんペン。ペンじゃ勝てそうにないペン」
「や、役立たずだ……!」
オークは再びペン太に近づいて、今度はしっかりと右ストレートをぶちかました。ペン太は5メートルほどぶっ飛んで、目を回して戦闘不能になってしまった!
「……マジで?」
助けに来た奴らがなんか頼りない。女騎士はその事実に目を背けたかったが、ここまで丁寧に描写されては認めずにはいられなかった。
「せめて、私の剣さえあれば……」
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