第6話二階堂陽菜②

二階堂陽菜の視点



やっべー、寝れなかった。何漫画のキャラ超えたって〜。絶対告白じゃん。


もう〜先輩告れし。私も褒められただけって、なんだよー。


やば、言葉使いが悪くなっちゃった。


私の事をもっと知って欲しい気持ちと、先輩にそれを知った時、驚かれないために、それを彼に伝えた。


口が悪くなった1番の原因は、小雪ちゃんの口の悪さが移ったからなんだけどね。


ふー、落ち着こう。学校の授業に集中と。


いや無理。先輩の事しか考えられない。


友達に授業終わったら、話聞いて貰おうと。


ふぅ〜顔が真っ赤になっちゃう。


あ〜もう〜くー。


あー、友達この学校誰もいないんだったー。

当たり前だよね、まだ入ったばかりなんだから。

 

まぁ小雪ちゃんがいるから、1人もいないって事はないのだけれど。


中3の頃毎日12時間は、勉強したなー。先輩と同じ高校に入りたくて…見事に合格。本当お疲れ様だよ、自分。



女子の誰か…話しかけてくれないかな? 駄目だ…そんな考えは。自分から行かなきゃ。


先輩に依存し過ぎて、あんまり興味が…先輩のせいにするな。でも…先輩以外いらない。


いや、そんな事ない。先輩に言えない事だってあるもん。


それに、先輩以外どうでも良いって考えの女の子…先輩が好きになるだろうか? 側にいて欲しいと思うだろうか? 私なら思わない。


でも考えたら、小雪ちゃんも大切だ。なら先輩だけって事はないよね?


ふぅ〜恋の力って怖いなぁ〜魔物だよ。そのおかげで高校入れたけど、好きな人にのめり込む自分が怖い。



…先輩…私だって普通の女の子だよ? 先輩に好きって言って欲しい。そしたらいっぱい先輩に好きって言えるのに。


怖さを感じるのは、先輩が私の事…何とも思ってないって分かるのが…悲しくて…辛くて。


うぅ、泣きそう。学校にいるから泣いちゃ駄目だ。


泣くって言えば……先輩にいつも笑顔を向けてた。


先輩との過去の回想。

先輩との出会い。


「どうしていつも愛想笑いなん? 辛い事あったんだろ? たまには泣いて良いんだよ。」


「えっ? 私が辛い目に遭ったって…どうして分かるんですか?」



「はは、二階堂さん色々感情隠してそうでさ、言葉は嘘ついてないけど、表情で嘘ついてるって言うかさ、そんな気がしてるだけなんだ。」


「そっか先輩には嘘ついた事ないけど、表情が勝手に嘘ついてたのかー。実は学校でまた頭悪〜ってテストの事で馬鹿にされて…うん、私本当馬鹿だよねーって笑顔で答えて。」



「本当は、悔しくて泣きたくて。見返してやりたいです。先輩勉強これからも教えて下さい。それと胸少し貸して貰えますか?」


「もちろん。勉強も胸も貸すよ。」

そう言って私は先輩の胸で泣きじゃくった。


「でも俺の意見だよ? その子は二階堂さんを馬鹿にしてるんじゃないと思う。二階堂さんを下げる様な事言って、自分が馬鹿じゃないって思いたいだけだと思う。


「結局人って自分しか興味なくて、他人には興味無いから。」


「でも見返すってのは俺も賛成。絶対二階堂さん、その子より勉強出来るように力貸すからね。」


先輩にそれから勉強の楽しさを教えて貰った。それと、先輩には隠し事出来ないって思った。

私が好きなのもその内気が付かれるかなって



先輩を心から好きだと思った昔のやり取り思い出すなぁ。

私の思い出が浮かんでくる。


「どうしてまた勝手に部費を使ったの! この泥棒!」   


私は部活の友達を叱った。


「勝手に使ったのは、悪いと思うけど、泥棒? ふざけないで! 泥棒じゃねーし。ちゃんと必要な物買ったし。」


彼女が開き直ってる様に見えた。それが私を更にイラつかせた。


「泥棒だよ、勝手にみんなのお金使ったんだよ?  

泥棒じゃん! 必要な物以外にお菓子買ってるじゃん!」


私の言ってる事は、間違ってない。先輩が勉強を教えてくれたから、知識が根底にある。

馬鹿にされた昔なら、何も言い返せなかったろう。


「何度も言いやがって、あんたなんかもう友達じゃない。」


彼女が、逃げる様に私の前から立ち去った。私はその光景を見て戸惑い、勉強を教わっている先輩に相談することにした。



「陽菜が言ってることは間違ってないけど、ちょっと言い方がキツイかなーと。」


図書館で頼りになる先輩が忠告する様に言う。



「先輩、強く言わなきゃ変わらないから言ったんです。優しく言うのは出来ますよ、私だって。でも、それじゃ彼女の為にならないから言ったんです。」


私は先輩にもう反論した。怒りで体が震える。


「それでも、何度も優しく言うべきだよ。何度も言って分からないなら、それは、教え方が悪いって事だから。」


先輩達観してるな。手で落ち着いてと合図をした。


「ほら〜先輩も教え方の問題って言ってるじゃないですか! だから今回強く言ったんです。教え方変えたんです。」


口を尖らせて不満を伝えた。


「それは変えたって言わない。ただ面倒くさがって、親が何度言ったら分かるのって、叱るのと一緒。ただヒステリックになってるだけ。」



「私がヒステリーになったって言うんですか? 先輩は、彼女の味方なんですか?」


声を震わせて尋ねる。そうだよと言われたら、今にも泣き出しそうだ。


「俺は陽菜の味方だから言ってる。」

 

真剣な眼差しを向けて先輩が言う。それを聞いて少し胸を撫で下ろした。


「私の味方なのに、私ばっかり責めてる。」


ペンを弄りながら、先輩の甘い言葉を待った。


「そう言う言い方だと友達失って行くから言ってるんだよ。」


「別に良いです、いなくなっても。先輩居れば問題なしです。」



「そうじゃなくて! 俺に依存して友達いなくて良いなんて、そう思ってほしくない。」


言葉に力を入れた先輩が首を捻り、手を頬に置いた。


「私だって思いたくないですよ! 友達失いたくないし。けど、そうなっても良いって事伝えてるんです。」


素直に先輩に謝れば、彼女に謝れば良いだけなのに…素直にそれが言えない。


それはきっと、先輩の事で嫉妬してるからだ。

私の為に言ってくれてる…けど…間違ってないのに、先輩に叱られてる。グスッ。


謝れないなら、先輩を説き伏せれば良いだけ。


「思いたくないなら、意地張ってないで言い過ぎたって謝れば良いじゃん。」


「先輩謝ればまたやるかもしれないじゃないですか。開き直れば許されるんだって。ちゃんと泥棒って言われた事、反省して向こうが謝れば、話は終わります。」



「またやるって、そんなに友達信用できないの?」

ため息混じりに先輩が言う。


「友達だからってすぐ信用するのも駄目ですよ。友達の行動みて信用しなくちゃ。私間違ったこと言ってます?」



「間違ってはいないよ。でもね、自分が悪いって思っても、自分を責めないようにするのが人間だよ。だからここは、陽菜が大人になって言い過ぎたって謝れば良い。」



「それが陽菜が負けたとかじゃないからね。そもそも本人だって悪いとは思ってるはず。陽菜が謝れば、私も悪いってお互いそう思うよ。」


「それがなかったら、友達じゃないから、陽菜が正しい事になるね。」



先輩! 議論強すぎる。感動して泣いちゃいそう。



「分かりました。それなら考えを改めます。」

そうとしか言えないじゃん。私より頭が良い先輩に勝てるはずがなかった。



でも…ちょっと調べたけど、部費勝手に使うのは、業務上横領に当たるみたい。私間違ってない…先輩に言い返してスッキリするべかな?



「先輩…でも部費を勝手に使うのは、業務上横領に当たる犯罪だと思います…なので私の泥棒って言う言葉は、間違ってないかと。」

恐る恐る私は言って、彼の反応を待った。


「なんども言うけど、陽菜の言ってる事は、間違いとは言ってないって。ただ、彼女を犯罪者として責めて、陽菜の気分が良くなれば良いってもんでもないじゃん?」



「全額盗んだなら、話しは分かりやすい。警察に行けば良い。でもそうじゃない訳だ。ならまずは、お互い落ち着いて話し合いすべきだよ。」


先輩は、優しく諭してくれた。こんなの好きになっちゃうよ。


「先輩はなんでそんなに、寛容で、賢くて…素敵なんですか? 教えて下さい。」


「全然買い被り過ぎだって。まぁ…強いて言うなら読書の経験かな。漫画とかも人間関係色々築ける。子供の頃めっちゃ本読んだからさ。」


「あとは、人と関わりまくってありがとうって言われると、なんだか人として成長したって感じる。お礼を言われる人間になったんだなぁって。」


ああ、先輩人として尊敬します、愛します。

涙を流していた…胸がドクンと高鳴り、恥ずかしさから、しばらく先輩をまともに見れなかった。



…こんな素敵すぎる先輩が一年合わなかったら、高校生になったら…どれくらい凄い人になっていたか。そう思っていたけれど、あんまり成長していなかった。

少しガッカリしてしまった自分がいる。


先輩は、すっかり鈍感な人になってた。高校で何かあったんだ、きっと。

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