第4話二階堂陽菜
二階堂陽菜の視点
先輩は学級委員長で、色々な人に気配りしていた。
いじめられてた女子を救った。
孤立していた男子に声を何度も掛けていた。
風邪を引いて休んだ男子女子にお見舞いに行っていた。
誰かが困っていた時率先して、フォローしていた。
私が勉強できな過ぎて、バカにされた時私を庇って勉強を教えてくれた。
先生に指定されて、何も答えられなかった私に…生徒から揶揄いの言葉が私に向けられた。
「先生〜陽菜に聞いても分かる訳ないですよ〜」
そして笑いが起きた。
恥ずかしさと悔しさで、赤面しながら、心で泣いた。
めっちゃバカだよね。頭悪いよね…その悪口を私の同じクラスの生徒に聞いて、先輩がその生徒達を叱ってくれた。
勉強出来ないだけで、頭悪いとか、君たちのが頭悪いよ。それに二階堂さんは、勉強の仕方が分からないだけで、分かれば君たちより、勉強出来るかも知れない。
それから私は先輩に、勉強を教えて下さいと頼んで、それから勉強が楽しくなって、学力がどんどん上がっていった。
そんな先輩を私は尊敬していた。
先輩は気がついてない。中学の頃の先輩は、行動力が凄くて、みんなに慕われていた。もちろんそれに反感を抱いていた生徒もいたけれど、多くの生徒は、先輩が好きだった。
だから先輩に告白する女子は沢山いた。みんな振られていたらしい。私はただ先輩に一緒の学校に行きたい…そんな想いで勉強を頑張った。
振られた理由は、恋愛に興味ないから。それが私の耳にも届いた。
今もそうなのだろう。
「先輩は、その迷惑って言われた人のこと好きだった訳じゃないんですよね? 聞くまでもないですけど…だったら別に良くないですか?」
私は、先輩の反応を探りながら見つめた。
「お見舞いにその人は次回行かなければ。むしろありがとうって感謝された人の方が多いはずでよね?
その人達の存在無視しちゃ駄目です。」
先輩は、私の言葉に深く考え込むように、
「なので先輩が気に病む必要なしなし。まぁこれからは、先輩は自分の幸せ考えて下さい。ってな訳で、これからも私は、よろしくお願いしますよ?」
ピースサインを右手でして、先輩にウインクした。
完璧に決まったー。先輩もイチコロだね。
「これからもよろしくお願いしますよ? なんか言い方、セールスのおっさんじゃん!」
えっ…聞き間違いかな? おっさん…全然違う反応じゃーん。
「えーおっさん…先生に頼み事する保護者の真似ですけど。」
ちょっと、硬い言い方だったかなー。失敗失敗。
「そんな真似…ってか、その言い方じゃ変な頼み方じゃない?」
先輩が結構ツッコミしてくる。私のことが気になり過ぎだよ〜。
「普通ですよ? 先生うちの息子よろしくお願いしますよ。ほら〜全然違和感ないです。」
冷静かつ、穏やかに私は言った。
「…何をよろしくかって事が分からないだろ? その裏に潜む魂胆がドス黒そう。」
…確かに私は、ドス黒いところも…先輩に私の事後でしっかり教えよう。
「考え過ぎですよ、先輩。多分内申点を高くしてって事を伝えたのかも。」
「あ〜やっぱ贔屓にしてくれってことじゃん。それに…おっさんなのは変わりないし、保護者もおっさんだ。」
うぅ…おっさん…違う…断じて…ここはしっかりと否定しよう。
「おっさんじゃないです、私は。」
両手に手を当て、胸を張って伝えた。
「陽菜がおっさんとは言ってないだろ〜。言い方が…まぁ良いや。」
「良くはないです。陽菜は可愛いよーとか、頭良いな〜とか、上手くフォローしなきゃ駄目です。先輩分かります? 女の子はそう言う言葉を待ってるんです。」
先輩に言って欲しい事を、催促した。もちろん説教も忘れない。
「…陽菜は可愛いくて、頭良いよ。」
先輩が目を逸らして言った。待ってましたー先輩その言葉。
「先輩素直〜。それでハグしてくれればパーフェクトです。」
手を広げて、さぁこいと先輩を誘惑する。
「いや、ハグしたらお巡りさんに捕まると思うよ。陽菜が。」
「先輩は捕ま…私かい!」
あはは。先輩が笑うと、私も笑顔で答えた。なんか…幸せって感じがする。
「先輩…捕まっても良いんでハグしても良いですか?」
真剣な表情で質問した。やっぱり…私から行かないと駄目ね。まったくこの…危ない、思ったら、口から出ちゃうから、我慢。
「あの…その…なんと言うか…付き合ってもない男女がそういうのは、良くないと思う、うん。」
「それって誰が決めたんですか? 先輩は、私にハグされるの嫌なんですか? ならはっきり言って下さい…いや、やっぱりはっきり言わないで下さい。」
「嫌とかそう言うんじゃなくて。」
「嫌じゃないなら、証明して下さい。今回は私、先輩に一歩も引きません。でも私からするのは、先輩の事無視する様で出来ません。」
先輩の真面目な性格が…普通じゃないよね? 先輩は。それとも私に好かれるのを、遠回しに拒否している?
「どうしたんだよ? 急にハグして欲しいとか?
嫌な事あった?」
「違います、そうじゃないです。先輩早くハグしてくれないと、泣いちゃうかもです。」
首を左右に振り、子供の様に駄々をこねた。
「分かったよ。」
そう言って先輩は、私を抱き寄せた。
嬉しい…先輩は、私の事拒否してた訳じゃない。
「なんだよ〜泣いてんじゃないか。男にでも振られたのか?」
「先輩ありがとうございます。半分当たってる…けど、私一途なんで、振られたと言うより、気持ちが伝わらなくて。」
あなたに伝わらないんです。むかついてくるほどにね?
「そうかー。伝わると良いな。応援するよ。」
はい? 先輩他人事…優しい言い方だけど、違うそうじゃな…い。
「む〜、これは相当な…超鈍感な人なんで、ほんと! 伝わると良いです!」
「告白とかは、しないの? 陽菜なら振られることはないと思うな〜。」
「告白して気まずくなるのが恐ろしいんですよ。こんなにアプローチしてるのに…気が付かない恐ろしい方がいるって信じられます?」
先輩の事ですけどね! 百発百中のアプローチなのに、避けれるって、どんなスキル使ってるのかな?
「ん…あれ? アプローチしてるのに? なんか見に覚えがある様な? ちょっと待って…頭が混乱する。」
手に顎を当て、先輩が考え込んだ。
ふぅ〜疲れました。もう少しかな?
「…先輩…見に覚えあるに決まってますよね? こうしてハグしてくれてると、落ち着きます。」
本当に、このまま時が止まれば良いのに。
「もしかして…誰かに頼まれたの? 俺を揶揄ってあげなとか?」
「そんな訳ないじゃないですか。しばらくこうしていたいです。」
「それは…そうか。」
「はい。」
「それでなんでハグしてると落ち着くの?」
「先輩なんでだと思いますか?」
「また逆質問? 逆質問のオンパレードだね。」
「だってぇ〜先輩が反則級の質問するから〜。」
先輩に甘え攻撃をした。
「ちょっと…やば…いから。」
先輩が頬を赤らめていた。
「何がやばいんですか? 先輩照れてます?」
ここは、追撃。上目遣いで先輩を見つめる。
「あーもう。陽菜が可愛いのは分かったから、もう離れて。照れてるのも認めるから。」
「えー離れたくなーい。」
「駄目だ。ふぅ〜もう今日は終わり。また明日な。」
先輩が両手で肩を押す。
「先輩ごめんなさい。甘え過ぎました。」
ちょっとアプローチし過ぎかな? し過ぎて嫌われたら…嫌だ。
私は、反省して、先輩に頭を下げた。
「そんな深刻な顔で謝んなくても良いよ。今日は色々びっくりしたからさ。」
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