クロのすごいまほう
家の探索だけど、おばけコンビが案内してくれたおかげでわりと早く終えることができた。ちなみに通訳はクロ。クロはおばけの言葉が分かるらしい。ばけぱけしか聞こえないのにね。
大広間の奥にあるのはキッチン。キッチンの奥は裏庭に繋がっていて、そこからの出入りも可能とのこと。
大広間の左側は小部屋になっていて、トイレとお風呂に繋がってる。どっちも一般的な家庭よりもずっと広い。お風呂なんか、銭湯の大浴場ほどの広さだ。
右側は書斎、だった部屋。今は何もない。これは階段の上の両隣も一緒で、何もない部屋が三部屋もある。
キッチンのドアの両隣にもドアがあるみたいだけど、そこは地下室に繋がっていて、物置とのことだった。見てみたけど、石か何かで囲まれた狭い部屋でひんやりとしてる。
なんというか……。
「大広間が広いだけでなんか変な家だね」
「ばけ」
おばけですらそう思うみたい。こんなに広い大広間だと、もっと長い廊下とかたくさんの部屋とかありそうなのにね。まあそんなにたくさんの部屋があっても管理しきれないだろうけど。
さて。それじゃあ、問題に目を向けよう。
「家具どうしようか。電気とか水道とか」
「まかせて」
「え?」
大広間に戻って考え始めたところで、クロがそう言って手を叩いた。直後に足下に幾何学的な光の模様が浮かび上がる。クロの魔法、その準備。
その魔法陣はテーブルを包み込むと、一瞬で修理してしまった。綺麗な円卓が大広間に設置されてる。さらに掃除もついでにしたかのように、床に散乱していたガラスとかも綺麗さっぱり消えていた。
「ばけー!」
「ぱけー!」
おばけとこばけも喜んでるみたいで、嬉しそうに大広間を飛び回ってる。
この家の認識阻害っぽい魔法の時から思ってたけど……。実はクロって、私が思ってる以上にとんでもないのでは?
「おねえちゃん。かたろぐ。ほしい」
「えっと……。何のカタログ?」
「かぐ。かでん。まほう。ふくせい」
「マジかよ」
「えっへん」
胸を張る妹がとてもかわいいすごくかわいいとりあえず抱きしめておこう。
「おねえちゃん。くるしい」
「もうちょっと」
「むう」
クロを抱きしめてなでなでして……。よし。満足。
「それじゃ、クロ。スマホで検索するから、それでもいい?」
「だいじょうぶ」
「それじゃあ……」
私がスマホで表示させた家電の情報にクロが手を触れる。それだけで家電家具が増えていく。洗濯機も最新式だし、冷蔵庫もすごく大きいものだ。お風呂もピカピカ、調理器具も一式。クロが万能すぎて怖い。
そんな感じで、人なんてまず住めないようなお化け屋敷は、その日の夜には快適な屋敷へと変貌していた。
「いやあ……。まさか、こんなに早く修繕が終わっちゃうなんてね……」
学校を卒業したらバイトでもなんでも働いて少しずつ整えていこうと思っていたのに、嬉しい誤算だ。
「がんばった。すごい? えらい?」
「クロすごい! びっくりした! えらい!」
「えへー」
普段は無表情な妹だけど、私が褒めて撫でてあげるとふんにゃりと笑顔になる。それがとってもかわいい。すごくかわいい。やっぱり私の妹は世界一かわいいと思う。間違いない。
さて……。あとは、ご飯とかの生活費だ。今までお小遣いやお年玉をこつこつ貯めて、私の手元にあるのは二十万ほど。かなり厳しいと思う。
アルバイトができるようになるまで、あと一年ほど。本当にどうしようかな。
「おねえちゃん?」
「あー……。なんでもないよ、クロ。それよりご飯にしよう。スーパーに行ってくるけど、何食べたい?」
「いっしょ。いく」
「そう? じゃあ、行こっか」
「うん」
クロと手を繋いで、家を出る。庭もクロの魔法でとても綺麗になってる。ゴミとかがなくなっただけだけど。
とりあえずご飯だ。私はクロの手を引いて門に向かう。
「ばけばけ」
「ぱけー」
そんな声に振り返ると、おばけとこばけが手を振っていた。これは、私でも分かる。いってらっしゃい、だね。本当に人なつっこいおばけたちだ。
「いや人なつっこいおばけってなんだよ」
「おねえちゃん?」
「おっと、なんでもないよ」
あまり考えない方がいいような気がする。改めておばけたちに手を振って、私たちはスーパーに向かった。
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