第27話 結婚式
結婚式。
それはあまりに早いものだった。
アーキルに久々に再開した次の日、その日が結婚式だったのだ。
ルキアから結婚式が明日だなんて一言も聞いていなかったから、あまりに突然のことに魂が抜けたかのようになっていた。
外の世界を見れて幸せを感じていたのに一気にどん底へと落とされた気分だ。
昨日あれから私は一睡も出来ずに朝を迎えた。
部屋にある鏡には目の下にクマを作った私が映っている。
部屋を抜け出したことはルキアにはバレていなかった。
目を腫らした私を見た兵士たちは驚いた顔をしていたものの何も言っては来なかった。
今私は黒い正装に包まれている。
ネクタイはルキアがつけ、私はただぼーっと彼に着替えをさせられていた。
「おい、今日はいつにも増して目が腫れてないか?」
私のネクタイを結びながらルキアは言った。
私の目が腫れているのはまたいつも見る夢のせいだと思っているらしい。
アーキルと出会ってることさえ知らない彼は元気のない私を心配してずっと瞳を覗き込んできた。
ユナ様だって今日が結婚だというのにルキアはやたら平然としている。
昨日彼女と話して何か覚悟でも決めたのだろうか。
『ルキアは…ユナ様が結婚するの悲しくないの?』
「悲しんでても仕方ないだろ、運命は変えられないからな」
まるで彼女への愛がないかのようにすらすらとそんなことを言うルキアに私は少しだけ違和感を感じた。
彼はまた私の頬へそっと手を添えると優しく微笑んで見つめた。
『…何?』
「いや?…なんか、嬉しくて」
『え?ユナ様が結婚するのに?ルキア大丈夫?』
「違う、お前がユナとのことを心配してきたから」
『そりゃ心配するよ、ユナ様あんなに泣いてたんだよ?』
「…ユナのことが心配なのか?」
『当たり前でしょ』
「…お前は、俺のことどう思ってるんだ?」
『え?』
ルキアがネクタイを結ぶとそのまま私の瞳を覗き込んで言ってきた。
なんだか少し話が噛み合っていないように思える。
ルキアはその宝石のような美しい瞳に私を映して動きを止めていた。
どう思ってる。
何故急にそんな質問をするのだろうか。
ルキアは時々孤独な子供のような態度を取る。
こうして私にどう思っているのかを聞くのは初めてではなかった。
前にも聞かれたことがある。
あの時はなんて言ったらいいのか分からずにただ大切な人だと答えた。
だって私にはルキアしかいなかったんだから。
けど今は大切な人がたくさん出来た。
ルキアも今だって大切だ。
『前もこれからだって、大切な人だよ』
「…それは、どういう意味の大切だ?」
『え?それは今まで育ててくれた恩とか…』
「…そうじゃない」
時々、ルキアの言うことが分からなかった。
彼は何かを求めるようにジッと見つめて来たが私はそんな彼からサッと視線を逸らした。
ルキアにはたくさんの恩がある。
それにずっと話し相手になってくれていた。
だから大切な人以外に言いようがないのだ。
『なんて言って欲しいの?』
「…言って欲しいことならあるが…それはユキ自身の口から言って欲しい。俺が言わせるんじゃなくて、お前自身から」
その内容を教えてくれなければ言いようがないのに、ルキアはそう言って小さく微笑んだ。
そうして私の髪を撫でるように梳かすとそのまま準備を終えいよいよユナ様とアーキルの結婚式へと向かった。
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